冬場に増える、お風呂の事故に注意 8割が命の危険がある重症以上
東京消防庁が公開している「救急搬送データから見る日常生活事故の実態(令和5年)」によれば、浴槽や海、河川などでの溺れる事故で救急搬送された人は530人いました。
年齢別の内訳では、65歳以上の高齢者が460人で全体の約87%を占めています。高齢者の発生場所は95%が自宅などの浴槽です。また、同庁が発行している冊子「STOP!高齢者の事故」によると、溺れる事故に遭った人のうち、約80%の人が命の危険がある重症以上となっていて、お風呂での溺れる事故は命に関わります。
特に寒くなって湯船に漬かる機会の増える12~2月は溺れる事故が多く、年間の発生件数の約半数が集中します。
同庁管内で起きた90代高齢者の死亡事例になります。入浴中に家族が一度声を掛けた際は返答がありましたが、2回目に応答がなくなりました。様子を見に行くと浴槽内で水没していました。
■寒暖差で血圧が変動し意識失う
お風呂で溺れる事故には寒暖差による血圧変動が深く関わっているとされていて、「ヒートショック」ともいわれています。高齢になるにつれ血圧を正常に保つ機能は低下する傾向にあり、急激な血圧変動により脳内の血流量が減ることで、意識を失うことがあります。
居間などの暖かい場所から、脱衣所や浴室などの寒い場所に移動することで、血管が収縮し血圧は上昇します。浴槽に漬かると温められた血管は拡張し血圧は低下します。この急激な血圧変化が原因でめまいや立ちくらみ、意識障害を引き起こし、浴室内での転倒や、運が悪く浴槽にいれば溺れてしまいます。
■入浴前に浴室を暖めておく
まず、入浴前には脱衣所や浴室を暖めておきましょう。
暖房がない場合は、お風呂のお湯をかき混ぜたり、浴槽にシャワーから給湯をすることで湯気が立ち、浴室内の温度が上がります。
また、入浴前にお酒を飲むのはやめましょう。食後や睡眠薬などの服用後も入浴は控えるようにしてください。
熱いお湯や長時間の入浴を控え、設定温度は41度以下にし、お湯に漬かるのは10分以内にしましょう。
冬の時期は寒くなる前の夕方の時間帯に入浴を済ませることも選択肢の一つです。
お風呂から出る際は、急に立ち上がると滑ったりすることもあります。手すりなどにつかまりながら、ゆっくりと立ちましょう。
■入浴時には家族に知らせ、小まめに声掛けをする
持病や前兆がない場合でも事故は起こる可能性があるので注意が必要です。入浴の際には家族や周囲の人が注意することで、何かあった場合でもすぐに駆け付けることができます。
もしも、①いつもよりも入浴時間が長い②浴室から音がしない③突然大きな音がした――といった異変を感じたら、すぐに浴室に駆け付け、声掛けをしてください。入浴時には家族に知らせ、家族は小まめに声を掛けましょう。