「闇バイト」事件 実態解明と首謀者摘発を急げ
日本の治安を脅かす重大な事態だ。新たな被害者、加害者を生まないために政府や警察は対策に万全を期す必要がある。
犯罪実行者をSNSなどを通じて募る「闇バイト」による強盗や特殊詐欺などの事件が首都圏を中心に相次いでいる。警視庁など4都県警は先月、合同捜査本部を立ち上げ、30人以上が逮捕された。
横浜市では住人が手足を縛られ全身を殴られて殺害される事件が発生。千葉県市川市では住人が連れ去られて監禁された。凶悪化による不安が広がっており、警察は総力を挙げて捜査に当たってもらいたい。
闇バイトは、SNSなどの「高額報酬」といった勧誘情報につられて若者らが応募するケースが目立つ。応募後、闇バイトと気付き若者らが断ろうとしても、事前に提供した個人情報を基に本人や家族に危害を加えると脅され、犯行に及ぶケースも多いという。
警察庁は、闇バイトに応募してしまった人に警察への相談を呼び掛ける動画をSNSに投稿して対象者を保護しているほか、闇バイト募集に関する投稿に人工知能(AI)を活用した警告を行っており、取り組みをさらに強化したい。
一方で、実行役が事件の度に入れ替わる同種の凶悪事件は後を絶たず、実態解明と首謀者の摘発に向けた取り組みが急務だ。北海道や山口県でも類似の事件が起きるなど広域化への懸念も高まっている。政府は、取り締まりに当たる警察官の増員を検討すべきだ。
併せて、防犯ボランティアによるパトロールや防犯カメラの設置といった、犯罪を抑止する環境整備に向けた自治体への財政的な支援拡充が必要だろう。
犯罪から若者を守る手だても重要だ。疑わしい求人には不用意に申し込まないことが第一だが、警察は若者からの相談に柔軟に応じる対応を心掛けてほしい。
SNSで怪しい求人を見かけた経験があると答えた高校生の割合は4割超に上るとの民間調査もある。教育現場での注意喚起や対処法の徹底も欠かせない。
公明新聞2024/11/06 2面転載