フリーランス働きやすく 取引の適正化へ新法が1日施行
■契約巡る“泣き寝入り”防ぐ
人々の働き方が多様化する中、フリーランスの人は増加傾向にある。政府の2020年の試算では、国内に約462万人で就業者全体の約7%を占めている。都内でフリーランスの公認会計士として働く渡邉拓己さん(39)は「働く時間を自分で決められ、やりたい仕事をやりたい人とできる」と、その働き方の魅力を話す。
ただ、フリーランスは発注事業者に対し、立場が弱いことが多い。公正取引委員会(公取委)などが今年5~6月に行った実態調査では、十分協議せず報酬額が決められる「買いたたき」の経験があるフリーランスは67・1%に上った。受注側に責任がないにもかかわらず、報酬を減額されたとの回答は28・1%だった。
こうした取引が横行する背景には、下請法などの既存ルールが対応しきれていない状況がある。同法などでは、資本金1000万円を超える発注事業者が規制対象だが、フリーランスに発注する事業者の約4割は資本金1000万円以下で対象外だ。
このため新法では、フリーランスに業務委託する際、発注事業者に課される義務を明記【図参照】。その内容は、発注事業者が満たす要件に応じて異なる。全発注事業者に共通して義務付けられるのは、発注の際に、業務内容や報酬額などの取引条件を書面やメールなどで直ちに明示することだ。発注書のない口約束などによる契約トラブルで“泣き寝入り”する事態の防止が期待される。
■発注者への義務や罰則設ける
これも含めて、新法では大きく七つの義務項目が定められ、発注事業者が違反した場合、公取委などによる指導や是正勧告が行われる。勧告に従わない場合は、命令・公表することができ、命令違反には50万円以下の罰金が科される。
渡邉さんは「発注者側の契約書を、よく確認せずサインしたが故にトラブルになった事例を多数聞いている。一案として受注者側が契約書を作成し、口頭などで確認を促すと問題は起こりにくいだろう」と、フリーランス側の契約に対する意識の重要性を指摘していた。
■公明、制定を一貫して推進
公明党は、現場の声を踏まえ、フリーランスを取り巻く環境の改善に一貫して取り組み、党の訴えを反映した新法の制定も強力に推進してきた。
17年の政府への提言では、フリーランスで働く人の実態把握を要請。国会質疑などでも訴えた。
その結果、政府は20年に全国調査を実施し、弁護士による無料相談窓口「フリーランス・トラブル110番」(0120・532・110)が開設された。21年には法令順守の指針も策定された。
■トラブルの抑止力に/プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事 平田麻莉氏
新法の施行は、契約トラブルをなくしていく第一歩だ。資本金に関係なく、業務委託する全ての発注事業者に適用される意義は大きく、フリーランスで働く人を守る“盾”となる法律だ。
これまで泣き寝入りしていたケースでも、新法を根拠に発注者側と交渉や相談が可能になる。直接言いづらい場合は、フリーランス・トラブル110番などの相談窓口もある。新法がトラブルの抑止力になることが重要で、発注者側への周知・広報を進めるべきだ。
当会には、セカンドキャリアとしてフリーランスになった50~60代の会員が増えている。フリーランスは雇用保険に入れないなど社会保障の内容は手薄い。公明党には、人生100年時代の働き方に中立な社会保障の構築に向けて、議論を加速してもらいたい。