犯罪被害者支援 「弁護士に頼れる制度」開始急げ
先の通常国会で成立した改正総合法律支援法で、犯罪被害者やその家族が事件直後から弁護士に頼れる「犯罪被害者等支援弁護士制度」が創設された。
スタートは2年後と定められているが、法務省は早期開始をめざし、来年度予算概算要求で約5億円の事業費を計上した。改正法の国会審議でも急ぐよう求められ、法務省は衆院で「最大限努力したい」と答弁していた。万全の準備で期待に応える必要がある。
殺人や傷害、性犯罪の被害者や家族は、精神的ショックを受け体調を崩すこともある。しかし、捜査協力や刑事裁判での証言、損害賠償の話し合いなどに関わらざるを得ず、嫌な思いをし、多大な時間も失う。また、医療費負担や、働けなくなれば経済的困窮に直面し、さらに、周囲の好奇の目にもさらされる。
「なぜこのような目に遭うのか」との被害者の思いに応えるのが支援の姿勢である。公明党が主導した1981年施行の犯罪被害者給付金支給法から始まり、その後、捜査や裁判で被害者に「配慮」する制度が整備された。
そして、2005年施行の犯罪被害者等基本法によって、犯罪被害者への「配慮」は「権利保障」のための支援となり、一気に国際標準に達した。その後も支援策が拡充され、今では、事件発生の直後から警察や検察の支援要員が犯罪被害者に寄り添ってくれる。
犯罪被害者は加害者を裁く刑事裁判や、損害賠償を求める民事裁判などで法律問題に直面する。それに対しては現在、法テラスが相談先の案内や弁護士の紹介などをしている。
これに対し、今回創設された「犯罪被害者等支援弁護士制度」は、今の限定的な支援から考え方を変え「包括的に寄り添ってケアする」(小泉龍司法相)ことになる。事件直後から、被害届や告訴状の作成、示談交渉、警察や裁判所への同行、報道機関への対応などの支援が期待される。
早期開始に向け、犯罪被害者本位の制度になるよう準備を進めてほしい。