五輪SNS中傷 選手追い詰める言動許されぬ
第33回夏季オリンピック・パリ大会は11日、17日間の日程を終えて閉幕した。409選手が登録した日本選手団は、金20個を含む45個のメダルを獲得。金メダル数と総数は、いずれも海外開催の五輪では最多記録を更新した。
自らの限界に挑戦するアスリートの姿は、多くの人々に感動を与えたに違いない。全ての選手に最大限の賛辞を贈りたい。
一方で、極めて残念だったのは、SNS上で選手らへの誹謗中傷が後を絶たなかったことだ。
日本の選手に対しても、陸上競歩の選手がリレー種目に専念するため個人種目への出場を辞退したことに「身勝手だ」などと批判する投稿が選手のSNSに寄せられた。このほかの競技でも、敗れた選手や対戦相手に対して汚い言葉で罵るケースが相次いだ。
五輪といった国際大会では応援にも熱が入る。しかし、重圧を背負いながら懸命に戦う選手を追い詰めるような言動は許されない。感情に任せて罵詈雑言を浴びせて個人の尊厳を傷付ける行為は厳に慎むべきだ。
日本オリンピック委員会(JOC)は「投稿に際してはマナーを守って」と訴える声明を発表し、行き過ぎた投稿に対しては法的措置も検討するという。毅然と対応してもらいたい。
SNSの普及とともに深刻化している誹謗中傷の問題は、今後開催される国際競技大会でもつきまとう。選手らを守る仕組みづくりを急ぐ必要がある。
国際オリンピック委員会(IOC)は、今大会から人工知能(AI)を活用したSNSの監視体制を敷き、事業者に問題投稿の削除を求めるシステムを導入した。今後も精度を高めていくことが求められよう。
何より重要なのは、悪質な投稿は法的な責任が問われる点を周知することだ。
国内では、公明党の推進で2022年に刑法が改正され、「侮辱罪」の法定刑が厳罰化されている。投稿する前に内容が適切か一呼吸置いて考えるなど、投稿者のマナー向上への取り組みが欠かせない。
公明新聞2024/08/13 2面転載