政府の水産業支援策
Q なぜ、政府が水産事業者に緊急支援を行うのか。
A 東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出が8月24日に始まったことを巡り、反発した中国が日本産水産物の輸入を全面的に停止したことなどが背景にある。
日本産水産物の最大の輸出先は中国・香港で、国内生産量に占める中国・香港向けの輸出割合はホタテが35%、ナマコが73%に上る。
これまで中国は、福島や宮城など9県と東京都からの水産物の輸入を停止してきたものの、今回の全面禁輸が水産事業者に与える打撃は甚大だ。そこで政府は、中国などに対して科学的根拠に基づかない措置の即時撤廃を求めると同時に、影響を和らげるための緊急支援策を9月5日に閣議決定した【表参照】。
Q 具体的にどのような支援を行うのか。
A 2023年度予算の予備費から207億円を支出し、風評対策・漁業継続支援として既に設けている計800億円の基金と合わせて1000億円規模の対策を行う。
例えば、輸出先の転換対策では、輸出減が顕著なホタテの漁協などによる一時的に買い取り・保管を支援。その上で、海外を含む新たな販売先の開拓に向け、水産業者と海外バイヤーとのビジネスマッチング、専門家によるブランド化支援に乗り出す。
国内の加工体制の強化も進める。殻付きの状態が多いホタテは、中国でむき身加工された後に米国に輸出されるケースが多いため、中国を経由せずに輸出できるよう殻むき作業の人材確保や機器導入の経費を補助する。
Q 公明党の取り組みは。
A 党農林水産部会は、現場の水産業関係者らの声を踏まえた支援策の必要性を主張。8月31日には、漁業者のなりわい維持・継続に向けて販路開拓や国内需要喚起など対策の迅速な実行を求める緊急決議を農水省側に提出。これを踏まえ岸田文雄首相は同日、支援策をまとめるよう関係閣僚に指示していた。