厳罰化から3年 摘発進む“あおり運転” 検挙は全国で260件に
片側2車線道路を走行中、後続車の行く手を遮るように急ブレーキや蛇行運転を繰り返す「あおり運転」で、周囲を危険にさらした――。これは21年2月に妨害運転罪で逮捕された例だ。同時期に別の場所でも悪質な運転を行っていたという。
同罪は、これまで法律上の定義が曖昧だった「あおり運転」を取り締まる罰則として20年6月に初めて創設された。
同罪の対象となる違反行為は、他車への通行妨害を目的とした▽車間距離を極端に詰める▽急ブレーキをかける▽クラクションを執拗に鳴らす――など10類型。最長で懲役5年の厳罰が科せられ、事故を起こさなくても運転免許が取り消される【上の表参照】。
妨害運転罪での検挙件数は全国で260件(20~22年)に上る。このうちの70件は、あおり運転の末に高速道路などで他の車を停止させており、「著しい交通の危険を生じさせた」とされている。
あおり運転の厳罰化の効果について警察庁の担当者は、「検挙件数は増加傾向にある」と着実な摘発に結び付いていることを強調。「法令を駆使し、引き続き厳正な取り締まりと広報、啓発を推進したい」としている。
■車間距離不保持など違反行為も抑止
厳罰化は、妨害運転罪には至らなくても、あおり運転につながるリスクが生じる違反行為を抑止する効果も生んでいるようだ。
例えば、「車間距離の不保持」の取り締まり件数は20年に1万3062件だったが、22年は6117件へと半分以下に減少しており、車間距離を確保する意識の高まりが推察される。
■「された経験ある」半数(保険会社の調査)
チューリッヒ保険会社が6月に実施した、全国のドライバー2230人を対象にした実態調査では、「あおり運転をされた経験がある」と答えた人の割合が約半数の53・5%に上った。調査開始時の18年(70・4%)からは減少している。
また、同調査によると、あおり運転の証拠を記録できるドライブレコーダー(ドラレコ)を約半数の51・5%が利用。ドラレコの普及によって、あおり運転が「減少すると思う」と回答した人は66・3%に上った。
調査に協力し、同社の発表資料で見解を表明した九州大学の志堂寺和則教授によると、あおり運転には、邪魔な車を排除するために行う「道具型」と、何かをきっかけに逆上し相手に警告や制裁を与える意図で行う「衝動型」の2パターンがある。志堂寺教授は、遭遇した際の対処方法について、道具型には「道を譲るのが無難」と指摘。衝動型は、「危険な運転行為に及ぶ可能性があるため、より注意が必要」と強調し、「身の危険を感じる場合は、ちゅうちょせずに警察に連絡を」と呼び掛けている。
■公明、道交法改正を主導/佐藤(茂)、岡本氏らが尽力
あおり運転は、2017年6月に神奈川県の東名高速道路で一家4人が死傷した事故を契機に社会問題化した。公明党は「あおり運転を絶対に許さない」との決意で、いち早く取り締まりの強化を国会で訴え、厳罰化に向けた法改正を主導してきた。
同年11月の衆院内閣委員会で、他党に先駆けて問題を提起したのが佐藤茂樹氏だ。「重大な事故につながりかねない行為は徹底して取り締まるべきだ」と訴えた結果、警察庁は翌年1月、あらゆる法令を駆使して厳正な捜査を徹底するよう全国の警察に通達した。
さらに、根絶に向けた法整備へ、19年8月に党として、あおり運転防止対策プロジェクトチーム(座長=岡本三成衆院議員)を設置。党内議論や警察庁との意見交換などを重ねて検討を進め、同年12月、罰則の創設を柱とする道交法改正を求める提言を政府に申し入れた。
この提言を全面的に反映した道交法改正案が20年3月に閣議決定され、国会審議を経て同年6月に成立し、施行された。岡本座長は、さらなる対策強化へ、「あおり運転が犯罪であることの一層の周知・広報に力を注ぐとともに、抑止効果の高いドライブレコーダーの普及を後押ししていきたい」と決意を語った。

