「すべての女性のためのトータルプラン」 党女性委員会の提言(要旨)
■1、あらゆる分野でジェンダー平等を推進
⑴男女共同参画の推進
「第5次男女共同参画基本計画」の中では、2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう新たな目標を掲げている。それを踏まえ、早急に指導的地位に占める女性の割合3割を達成し、将来的には5割をめざし、環境整備を行うこと。さらに女性差別撤廃条約の実効性を高めるための選択議定書の早期批准を実現すること。
⑵男女間の賃金格差是正
公明党の主張で、301人以上の事業主について男女の賃金の差異の把握・公表が義務化された。実効性ある同一労働同一賃金の徹底、非正規から正規社員への転換、女性の働く環境整備、女性の能力開発などをさらに進め、男女の賃金格差是正に取り組むこと。
⑶選択的夫婦別姓の導入
夫婦別姓を望む当事者のためにも、男女共同参画の象徴ともいえる選択的夫婦別姓を可能とする法改正を行うとともに、旧姓の通称使用拡大やその周知に取り組むこと。婚姻や離婚などによる名字(姓)の変更に伴う官民の各種手続きの負担軽減のため、国として民間の協力を得ながら名字(姓)変更のワンストップ化を進めること。
⑷男性の育休取得率の向上と育休制度の拡充
22年10月から「産後パパ育休(出生時育児休業)制度」がスタートした。現行の政府目標を大幅に引き上げ、25年に1週間以上の育休取得率で公務員85%、民間50%を達成するため、男女ともに一定期間、実質収入100%給付が受けられる制度の創設や同僚への育休応援手当創設など、育休を取得しやすい職場環境を整備するための支援を抜本的に拡充すること。
⑸育児中の時短勤務手当の創設
育児のため通常の勤務時間で働くことが難しい人が仕事を続け、徐々に本格的な復帰をめざせるよう、育休明けで子育てのため勤務時間を短くして働く人向けに、時短勤務手当などを創設し、育児との両立、就労意欲の低下防止、就労の継続や通常勤務復帰によるキャリア形成を後押しすること。
⑹性犯罪対策と性暴力・DV被害者支援
DV(配偶者などからの暴力)・ストーカー・性暴力などあらゆる暴力を根絶することは女性活躍の大前提であり、強力に施策を推進すること。「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」に基づき、「集中強化期間」で実施された取り組みを踏まえ、女性に対する、あらゆる暴力を根絶するために、性犯罪の厳罰化、被害者支援の充実、未然防止に引き続き取り組むこと。その際、当事者や支援団体などからのヒアリングなどにより継続的に実態把握・フォローアップし、支援策に反映させていく仕組みを構築すること。
⑺痴漢対策の推進
公明党の要望を踏まえて策定された、政府の「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」を着実に実施すること。女性専用車両・防犯カメラの増設、痴漢防止アプリなどのICT(情報通信技術)を活用した鉄道における安全対策のさらなる推進、学校における対応の改善、ワンストップ支援センターの拡充と周知など被害者保護、加害者に対する再犯防止プログラムの実施など、関係省庁が連携して痴漢撲滅に向けた取り組みを抜本的に強化すること。
⑻ひとり親家庭への支援
児童扶養手当の拡充、経済的基盤を整えるためのリスキリングや多様な就労支援、メンタルヘルスケア、子どもが高等教育を受ける機会を阻害しないよう、ひとり親家庭への包括的支援を検討すること。高等職業訓練給付金の拡充を図ること。また、ひとり親家庭のさまざまな不安・負担の軽減のために、家賃貸付をはじめとする住居支援や子どもの預かり、見守り強化などを充実すること。
■2、生涯にわたる教育支援
⑴リカレント教育・リスキリングの充実
希望に応じて誰もが必要な能力・スキルを身に付け、就業機会の拡大につながる環境整備を進めること。特に、女性のライフイベント、ライフステージに応じたリカレント教育の充実に取り組むこと。社会人の学び直しを促進するため、費用、時間、成果の評価などの環境整備、大学・専門学校などを活用した実践的プログラムの開発・拡充など、産学官が一体で社会変革を促すこと。
⑵デジタル教育の充実
誰もが豊かで安全なデジタルの恩恵を享受できるよう、基礎的なITリテラシー(情報技術を使いこなす力)の習得の機会を確保し、デジタル活用支援の充実などを図ること。パソコンなどの学習は認知機能強化や、コミュニケーション量の増加など、認知症予防につながると期待されるため、中高年の認知症予防にパソコンを用いたデジタル教育を取り入れ、年金以外の収入を得られるよう中高年のデジタル教育充実を図ること。
■3、女性の経済的自立支援
⑴社会的ニーズの高い仕事への就労支援
家事・子育てや介護の経験を生かして、ニーズの高い産後ドゥーラなど産後ケアをサポートする人材、ベビーシッター、家事支援ヘルパーになるために必要な研修受講を支援するなど、柔軟に働ける環境整備に取り組むこと。子育てしながら夫婦ともフルタイムで働く世帯が、家事・育児サービスを利用する場合に、その費用を税控除の対象にすることなどを検討し、家事・子育てや介護の社会化・外注への理解と普及に努めること。
⑵起業家教育・スタートアップ支援の充実
アントレプレナーシップ(起業家精神)教育について、小・中・高・大学の幅広い段階で充実するとともに、国際展開も見据えた起業支援プログラムを強化し、大学・高専などにおける起業環境を整備すること。スタートアップ(新興企業)の育成については、ロールモデルの創出やネットワーキングの参加機会の確保など、女性起業家への支援を強化すること。
⑶キャリア教育・職業教育の充実
社会人・職業人として自立できる人材を育成するため、進路を考える15歳までに、体系的かつ充実したキャリア教育・職業教育を推進すること。その際、さまざまな困難を理由に、最初から希望をかなえられないと考えている子どもたちに、多様な支援などの情報を提供し、必要な支援・助言につなげ、人生に生かせる職業教育へと強化・充実させること。
⑷デジタル人材育成の加速化
就業の受け皿となるIT企業などと連携し、企業が求めるSAP(基幹システム)などのデジタルスキルを公的職業訓練で提供し、eラーニングを後押しし、全国どこに住んでいても受講できるようにすること。
■4、生涯にわたる健康支援
⑴プレコンセプションケアの充実
結婚・妊娠・出産・子育ては個人の自由な意思決定に基づくものであり、個々人の決定に特定の価値観を押し付けたり、プレッシャーを与えたりしてはならないことに十分留意すること。また、多様な性のあり方の尊重を踏まえた上で、まだ出産することを決めていない女性も含め、妊娠前の女性やカップルに対する健康管理「プレコンセプションケア」の推進を学校教育、行政、助産師会などと連携し整えること。
⑵生理の公平の実現
無償配布などの取り組みを一過性、地域限定のものから、全国的、日常的、普遍的サービスに変えていくため、生理用品の無償配布を継続・拡充すること。学校や公共施設、不特定多数の人が利用する施設の女性トイレへの生理用品の配備拡大に取り組み、必要な時に誰も困らない社会をめざすこと。
⑶妊娠・出産後の支援、労働環境整備
働く女性の妊娠期間における支援・環境整備を進めていくこと。企業や働く女性向けに、生理休暇制度の活用、つわり、不育症、流産、死産などの場合に母性健康管理措置などによる休業が可能であることなど、さまざまな情報を提供して周知啓発を図ること。
⑷更年期の女性守る対策
女性活躍を推進する上で、更年期の女性を守り、支える対策を取ることが社会に求められている。対象年齢の健診に「簡易更年期指数(SMI)」を必須化し、ホルモン補充療法(HRT)などアクセスしやすい医療体制の整備や、更年期障害など女性の健康維持に向けた知識啓発と社会の認識を深めるために教育の場で学ぶ機会をつくり、相談窓口の整備を進めること。
■5、妊娠・出産・子育てへの切れ目ない支援
⑴不妊治療、不育治療の支援拡充
不妊治療の一部保険適用に関し、相談・カウンセリングを含め、有効性・安全性が確立したものについての保険適用拡大や国庫補助制度の創設など、さらなる経済的負担の軽減を図ること。加えて、有効性や安全性が確立した不育治療については、迅速に保険適用を進めること。
⑵リトルベビーハンドブックの充実
2022年9月、母子手帳の見直し方針について検討会の「中間報告書」が提出された。最新の知見を踏まえた改定を行い、より多くの自治体で電子母子手帳の導入ができるよう支援するとともに、低出生体重児のための「リトルベビーハンドブック」の地方における作成を支援すること。