がんの職域検診 普及へ法的位置付け明確に
日本人の男性の3人に2人、女性の2人に1人ががんになり、罹患した人の約3人に1人は20代から60代だ。早期発見・治療に向け、職場でのがん検診(職域検診)を普及させたい。
22日の参院決算委員会で公明党の三浦信祐氏が、がん検診を受けやすい環境整備を訴えたのに対し、加藤勝信厚生労働相は、職域検診の法的な位置付けについて検討する考えを示した。
厚労省は、検診による死亡率減少の有効性などから▽胃がん▽大腸がん▽肺がん▽子宮頸がん▽乳がん――の「5大がん」の検診を推奨している。
これらのがんを対象に市町村が実施する「住民検診」は、健康増進法に基づく事業として公費が投入されている。
一方、職域検診は企業や団体が福利厚生の一環として任意で実施しており、法的根拠はない。このため、検診の対象や内容は統一されておらず、行政が詳しい受診状況を把握する仕組みもないのが現状だ。
ただ、2019年の国民生活基礎調査によると、がん検診を受けた人のうち職場で受診したのは、肺がん検診の67・5%をはじめ4割から7割程度を占める。
職域検診は明確な根拠法がないため、予算措置や行政の支援が十分とは言えない。法的な位置付けを明確にし、企業などの取り組みを後押しすることは、働き手をがんから守る上で大きな意義がある。
まして政府は、3月にまとめた「第4期がん対策推進基本計画」で、がん検診受診率の目標を50%から60%に引き上げた。職域検診の普及は、この目標達成にも欠かせない。
公明党も先の統一地方選重点政策で、誰もが「がん検診」を受診しやすい体制の整備を掲げ、職域検診を法的に位置付けるよう主張している。
また、国立がん研究センターの調査では、がんと診断された時に就業していた人のうち、約2割が退職や廃業をしていた。職域検診の普及とともに、短時間勤務や在宅勤務など治療と仕事の両立支援も進めたい。
公明新聞2023/05/27 2面転載