高齢、障がい者の旅行 誰もが楽しめる環境づくりを
旅行には、日常生活を一時的に離れ、新たな出会いや発見によって心身を癒やすといった魅力がある。しかし、体力面などの不安から旅行を諦める高齢者や障がい者は少なくない。
高齢者の増加などにより、政府は全人口の約3分の1がUTの対象とみている。あらゆる人が旅の楽しみを享受できる環境整備を急ぐ必要がある。
また、わが国の成長産業の一つである観光業の発展や地域活性化の点からも、UTへの取り組みは必須であると言えよう。
ただ、日常生活で介助を必要とする人の旅は容易ではない。ヘルパーの確保のほか、公共交通機関や旅先のバリアフリー状況、観光施設へのアクセスの確認など多くの準備を要する。同行するヘルパーの費用も負担しなければならない。
旅を提供する側にも課題がある。観光庁の調査によると、旅行会社を中心に積極的にUTに取り組みたいと考えている割合は低い。旅行先の情報や介助ノウハウの不足、トラブル時の責任問題などが主な理由だ。
こうした中、UTの環境整備を進める地域が増えていることは明るい材料だ。例えば兵庫県は、全国初のUTに特化した条例の制定をめざす。宿泊施設のバリアフリー化への補助などが柱となる予定だ。このほか、自治体や企業、NPOなどの連携によるUT相談窓口の設置といった取り組みも各地で広がりつつある。
公明党の山口那津男代表も27日の参院代表質問でUTの推進を主張。具体策として、情報発信の強化や一人一人のニーズに合わせたサービスに努める観光施設などに対し、観光庁が認定マークを交付する「心のバリアフリー認定制度」の普及を訴えた。
政府は、2022年度内に策定する新たな観光立国推進基本計画に、こうした施策を盛り込み、UTが一層広がるよう取り組みを強化してもらいたい。