行政のデジタル化 誰もが恩恵実感できる環境を
デジタル改革関連6法案が閣議決定された。政権の重要課題であるデジタル社会の形成をめざすものだ。今国会での成立を期したい。
法案のポイントは「デジタル庁」の設置をはじめ、国や自治体間で異なる情報システムの標準化、マイナンバーの活用拡大、押印の原則廃止による行政手続きの簡素化などだ。
デジタル庁は9月1日の発足が法案に明記された。各府省への勧告権など「強力な総合調整機能」を持つ司令塔である。2000年にIT基本法が制定されたものの、今日まで行政のデジタル化が思うように進んでいない現状を打破しなくてはならない。
重要なのは、ITに精通した優秀な人材をいかに確保できるかだ。デジタル庁は500人規模の組織とし、100人以上を民間から採用するという。官民から即戦力となる人材を登用してもらいたい。
情報システムの標準化もしっかりと進めるべきだ。これまでは各省庁や自治体が独自にシステムを構築してきたため、仕様が異なっている。その弊害は、コロナ対策の給付金手続きが遅れたことを見ても明らかだ。
マイナンバーの活用では、預貯金口座を任意でひも付けできるようにする。災害時などの給付金を簡易な手続きで迅速に受け取れるなど国民のメリットは大きい。
一方で、個人情報の保護に関する国民の不安に留意すべきである。昨年も雇用調整助成金のオンライン申請を巡って、企業担当者の個人情報が流出した。今後の国会審議を通じて政府は、情報システムの安全性について国民の理解と信頼を得られるよう丁寧に説明することが求められる。
公明党はデジタル化を推進する上で、「誰一人取り残さない社会の実現」を訴えてきた。誰もがデジタル化の恩恵を最大限に受けられる環境の整備が最重要である。
例えば、高齢者などデジタル機器に不慣れな人への配慮である。政府は、スマートフォンの使い方やオンラインの行政手続きなどを教える「デジタル活用支援員」事業を20年度に試験導入し、21年度に拡充する方針だ。デジタルディバイド(情報格差)を生まない取り組みが欠かせない。
公明新聞2021/02/18 2面転載