冬にも起こる脱水症
体の脱水と聞くと夏の時期を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、実は冬の脱水にも注意が必要なのです。さまざまな分野の医療関係者で構成する「教えて!『かくれ脱水』委員会」副委員長で医師の谷口英喜さんに、冬の脱水症の特徴や気付くポイント、対処法と予防法などを聞きました。
■自覚なく、じわじわ進む
冬の脱水症は、主に二つに分けられます。ウイルス疾患による発熱、下痢、嘔吐などで水分不足状態になってしまうこと、もう一つは、冬の季節的特徴である空気の乾燥による湿度の低下や、汗以外で体内から奪われる水分を指す不感蒸泄の増加によるものです。
水分摂取量が減ることや、喉がかわきにくいこともあり、冬の脱水症は意外に多いのです。
谷口さんは、「夏の脱水症は、大量の汗をかくなどの目立ったサインが見受けられ、かかっている自分も周りの人も気付くことができます」とし、一方「冬の脱水症は、見て分かる症状もなく、じわじわと進んでいくため、自覚がないだけでなく、周囲も気付かないうちに発症してしまっています」と警告。特に、高齢者や病弱な人は注意が必要だと訴えます。
■下痢、もどしたとき経口補水液で補給
気付きにくい冬の脱水症ですが、体から出される「カサ、ネバ、ダル、フラ」の四つのSOS【イラスト参照】を見逃さずに、適切な対応をすることが大切です。
「カサ」――手先などの皮膚がカサカサすることで、体の中で乾燥が始まっていることを示しています。スポーツドリンクやイオン飲料などで水分と電解質を取る必要があります。
「ネバ」――口の中が粘ついたり、食べ物が飲み込みにくくなったりしたら、脱水が始まり水分不足に陥っている状態。発熱していることもあります。下痢や嘔吐がなくても、経口補水液を少しずつ口に含むことが推奨されます。
「ダル」――脱水症状の初期から現れます。下痢や嘔吐でだるさを感じている場合、体は水分を欲している状態ですが、水分だけでは体液中の電解質濃度が低下するため、経口補水液による不足した体液の補水が必要です。
「フラ」――目まいや立ちくらみ、ふらつきなど熱中症でも見られるこのサインは、脱水症がかなり進行している状態。放っておくと血圧低下になってしまいます。すぐに経口補水液を摂取するようにしてください。経口補水液を1500ミリリットル以上摂取しても症状が改善されなかったり、飲めない状態になっている場合は、医師の判断を仰ぎましょう。
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冬の脱水症を防ぐには、空気の乾燥を防ぐことも大切です。部屋の条件にもよりますが、以下の6項目のうち、できることをしましょう。
①加湿器の使用②室内の換気③洗濯物を部屋に干す④室内で植物を育てる⑤水を張ったバケツにタオルを掛ける⑥石油ストーブの上に水を入れたやかんをのせる――。
また、経口補水液を摂取する際、もどしたいような感じがあれば、もどさないでいられる状態であるかを30分間確認してから、まず少量を数回補充するように心掛けてください。体を冷やしたくないときは、常温、もしくは湯気が出ない程度に温めて飲むとよいでしょう。
コロナ禍の生活を送る上で、マスクが欠かせません。マスクは喉のかわきを鈍らせますので、喉がかわかなくても定期的な水分摂取を心掛けてください。摂取の目安は、コップ1杯(160ミリリットル程度)。トイレが近かったり、飲みきれない場合は50~100ミリリットル程度。起きているときは、水分補給の間隔を2時間以上あけないようにします。入浴前後のいずれか、睡眠の前後両方は水分摂取が必要です。
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寒い季節に発症する病気の原因には脱水症によるものも少なくありません。谷口さんは「経口補水液などを補給し、改善するか確かめてみてください」と話します。その上で「疑いがあれば、かかりつけの病院で脱水症かどうか診てもらいましょう。重度の場合は点滴治療が必要です。軽度か重度かの判定を専門家にしてもらうのが大切です」とアドバイスしています。
公明新聞2020/11/29 6面転載
自殺の増加 コロナ禍の影響深刻、対策急げ
コロナ禍の収束が見えない中、自ら命を絶つ人が急増している。悩みや困難を抱える人に寄り添い、支える取り組みが急務だ。
自殺者数は年々減少する傾向にあったが、7月以降は4カ月連続で前年の同じ月より増加し、10月は暫定値ながら約4割多い2158人に達した。
憂慮すべきは、女性の自殺が目立つことだ。10月は852人で前年の同じ月より約8割も増えている。
その理由について、厚生労働省の依頼で自殺対策の調査研究を行っている「いのち支える自殺対策推進センター」は、非正規雇用が多い女性はコロナ禍による失業などで経済的に困窮しやすいことに加え、家庭にいる時間が増えたため、DV(配偶者などからの暴力)や育児の悩み、介護疲れなどの問題が深刻化した可能性を指摘する。有名人の自殺報道の影響もあるという。
子どもの自殺が増えている点も看過できない。8月には高校生の自殺が過去5年間で最も多くなった。コロナ禍による学習環境の急変などが背景にあるとみられている。事態は極めて深刻だ。
このため、公明党の自殺防止対策プロジェクトチームは先週、政府に対策の強化に向けた緊急の提言を申し入れた。
提言では、自殺の動向や要因について官民が協力して詳細に分析するよう要請し、電話やSNS(会員制交流サイト)による相談・支援体制の強化を訴えた。
きめ細かい取り組みには一定の時間をかけて現状を分析する必要がある。同時に、今すぐ対応できることに注力することが欠かせない。とりわけSNSは、対面や電話による相談に不慣れな若い世代が活用しやすい。
提言ではさらに、相談員不足に悩むNPOなど民間団体への支援強化や、悩みを抱える女性が安心して立ち寄れる居場所の確保を求めている。政府には迅速に対応してほしい。
自殺の防止には、身近な人の見守りが大切だ。心身ともに疲弊している人は周囲に助けを求められず孤立しやすい。家族や友人、地域住民らが声を掛け、小さな変化も見逃さないようにしたい。
公明新聞2020/11/27 2面転載
令和2年 第四回定例会開会
気候危機 国を挙げ脱炭素社会めざせ
衆参両院が、地球温暖化対策に国を挙げて取り組む決意を示す「気候非常事態宣言」の決議を採択した。
今国会の所信表明演説では、菅義偉首相が2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。内閣に続き、国権の最高機関である国会が温暖化への強い危機感を表明し、対策の抜本強化の必要性を訴えた意義は大きい。
決議の中で重視すべきは、地球温暖化問題について「気候変動の域を超えて気候危機の状況に立ち至っている」と指摘していることだ。
なぜ「気候危機」なのか。政府文書として初めて「気候危機」との表現を使った20年版「環境白書」は、地球温暖化によって人類を含む全ての生き物の生存基盤が揺るがされているとの認識を示している。
実際、自然災害の激甚化が著しい。日本では猛烈な台風や豪雨が頻発し、世界では記録的な熱波や森林火災、ハリケーンなどが発生している。
国連によると、直近20年間の気候関連の災害による被害額は2兆2450億ドル(約235兆円)で、その前の20年間の約2・5倍に上った。事態は深刻と言わざるを得ない。
地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」の下、各国は温室効果ガス削減の取り組みを進めている。しかし、各国が掲げている目標を達成しても必要な削減量には大きく不足している。
気候危機を回避するには、今回の決議にあるように、経済社会の再設計や取り組みの抜本的強化が必要であることは言うまでもない。
まずは、政府が年末にも発表する脱炭素社会に向けた行動計画が重要だ。国内の温室効果ガス排出量の多くを占めるエネルギー分野では、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの主力電源化を強く推し進めるべきだ。水素社会の実現や二酸化炭素(CO2)の回収・貯留システムの開発などを後押しする技術革新にも力を入れる必要がある。
温暖化対策に一貫して取り組んできた公明党は、石井啓一幹事長を本部長とする「地球温暖化対策推進本部」を新たに設置して体制を強化、政府に提言する方針だ。“環境の党”として政策論議をリードしたい。
公明新聞2020/11/26 2面転載
コロナワクチン 円滑に接種できる体制づくりを
新型コロナウイルス感染症のワクチンの開発が進んでいる。政府は必要な量のワクチンの確保とともに、接種が円滑に実施できる体制づくりに万全を期す必要がある。
新型コロナワクチンの接種費を無料にすることを柱とする予防接種法改正案が、19日の衆院本会議で全会一致で可決され、20日に参院で審議入りした。今国会で成立する見通しだ。
同改正案は、ワクチン接種は市町村において実施し、接種費用は国が負担すると明記。接種により健康被害が出た場合の救済制度を整備し、健康被害に関わる損害賠償で生じた製薬会社の損失を国が補償することなどを盛り込んでいる。
接種費用や接種リスクに対する国の責任を明確にすることは、接種を受ける国民はもちろん、実施主体の市町村やワクチンを供給する製薬会社にとって重要だ。
国費での接種について公明党は、9月10日に当時の加藤勝信厚生労働相に提言。健康被害救済制度も7月16日の参院予算委員会で提案し、「(創設へ向けて)検討する」との答弁を得ていた。今回の改正案に公明党の主張が反映されたことを評価したい。
改正案の成立を見据え、検討を急ぐべき課題もある。
まずは国による国民への積極的な情報発信である。改正案の内容をはじめ、政府が医療従事者や高齢者らを優先するとしている接種順位に関する考え方、予防の効果や副反応のリスクなどについて、国民が正確に理解できるよう努めねばならない。相談体制の整備も必要だ。
市町村へのサポートも欠かせない。市町村はワクチンの流通や保管、接種など総合的な運営を担う。実施体制のあり方について、モデルケースを示すなど丁寧な対応を国に求めたい。
日本政府が各6000万人分のワクチン供給で基本合意している米ファイザー社と英アストラゼネカ社、2500万人分の供給で契約している米モデルナ社は今月、それぞれが開発中のワクチンについて、臨床試験で高い有効性が確認できたと発表した。
開発が順調に進むよう願うとともに、わが国への供給開始に向け準備を進めたい。
公明新聞2020/11/25 2面転載
コンテナでPCR検査 区内120超の診療所でも/東京・練馬区
東京都練馬区は、トレーラー式コンテナを用いた新型コロナのPCR検査センターを9月から開設し、検査体制を強化している。推進した区議会公明党(吉田由利子幹事長)と小林健二都議はこのほど、現地で担当者から検査の現状を聞いた。
検査センターは、西武池袋線の高架下にコンテナを配置して開設。毎週火、木、土曜日に医師が鼻や口の奥の粘液を採取し、検査している。最短で3日後に結果を知ることができる。
練馬区内ではPCR検査センターのほか、120カ所を超える診療所でPCR検査が受けられる。
区議会公明党はこれまで、前川燿男区長に提出した新型コロナ対策に関する緊急要望(全4回)の中でPCR検査センターの充実を一貫して訴えていた。
公明新聞2020/11/24 7面転載
性暴力被害に対策充実へ
公明党の提言を踏まえた性犯罪・性暴力の被害者支援の充実が期待されている。11日の衆院内閣委員会で、古屋範子副代表が政府の取り組みをただしたのに対し、橋本聖子女性活躍担当相が今後の対策について答弁した。
例えば、10月1日にスタートした性犯罪・性暴力被害者のための全国共通短縮ダイヤル「#8891」(はやくワンストップ)。各都道府県に設置されている最寄りのワンストップ支援センターに通じ、被害に遭った直後からの迅速な支援に役立っていることから、政府は2022年度の通話料無料化に取り組んでいる。
■SNS相談の通年実施
SNS(会員制交流サイト)を活用し、性暴力について専門家がチャットで相談に応じる「Cure time(キュアタイム)」(受付時間 毎週月、水、金、土曜の午後4~9時)では、来年1月30日までを試行期間としているが、政府は21年度からの通年実施を準備している。
「#8891」と「Cure time」について政府は、今月12~25日の「女性に対する暴力をなくす運動」期間において、さらなる周知を図っている。
政府は産婦人科での診察やカウンセリング、警察や弁護士への連絡など、総合的な支援を1カ所で提供するワンストップ支援センターの体制強化にも取り組む。現在、20都道府県の支援センターが24時間365日対応しているが、性犯罪については夜間の相談が多く、緊急対応が必要なため、政府は各都道府県による24時間化を後押ししている。
性犯罪・性暴力の被害者支援については、公明党の男女共同参画社会推進本部(本部長=古屋副代表)などが6月、菅義偉官房長官(当時)に提言で求めていた。
公明新聞2020/11/23 2面転載
“小さな声”から政策実現
【コロナ対策】
■1人一律10万円給付
コロナ禍で激変した国民生活を下支えするため、所得制限なしで1人一律10万円給付を実現しました。
■希望者のワクチン確保へ
ワクチンの希望者全員への無料接種に向けて、開発を進める製薬会社と交渉し、ワクチン確保をめざします。
■高齢者施設に検査費補助
高齢者・障がい者施設を対象に、利用者や職員への定期的なPCR検査などの費用を都が独自で補助します。
■シルバーパス郵送で
都営地下鉄やバスなどに無料で乗れる高齢者向け「シルバーパス」の更新手続きを2020年度は郵送方式に。
■雇用調整助成金を拡充
休業手当を支払う企業に対し、助成の日額上限を特例で従業員1人当たり8370円から1万5000円に。
■企業の資金繰り支援
中小企業の資金繰り支援で、政府系金融機関などの実質無利子・無担保融資を推進しました。
■医療従事者へ慰労金
新型コロナ感染リスクと闘う医療・介護・障がい福祉サービス従事者に1人5万~20万円の慰労金を支給。
【防災】
■学校耐震化ほぼ100%
2002年に44.5%と公表された全国の公立小中学校の耐震化率は、15年度にほぼ100%に達しました。
■液体ミルク備蓄
乳児用液体ミルクの国内販売が解禁に。災害用備蓄品としても活用され、各地で普及が進んでいます。
■公立学校体育館に冷房
災害時の避難所となる公立小中学校体育館への冷房設置を進め、全国平均(約5%)を上回る51%で完了。
■調節池や堤防を整備
豪雨災害による河川の氾濫を防ぐため、調節池や堤防の整備など治水対策が全国的に進められています。
■待望の小型ドクターヘリ
救急医療体制の強化に向けて、都は機動力が高い小型のドクターヘリを2021年度に導入する方針です。
【子育て】
■児童手当を創設、拡充
国の制度として1972年に創設。現在は原則、中学3年生まで子ども1人につき月1万~1万5000円を支給。
■特定不妊治療に助成
都は、国の特定不妊治療費助成に最大10万円を上乗せ。2019年度からは所得制限も緩和されています。
■私立高校授業料無償化
都は独自に私立高校授業料を実質無償化。2020年度からは対象世帯を年収910万円未満まで拡大しています。
【高齢者】
■高額療養費制度を改善
医療費の自己負担額の上限を定めた高額療養費制度を改善。69歳以下の中低所得者の負担額を軽減しました。
■白内障手術に保険適用
高齢者に多く発症する白内障。高額な手術費用の保険適用を実現し、患者の負担を軽減しました。
■年金受給資格10年で
年金の受け取りに必要な加入期間を25年から10年に短縮。多くの人が新たに対象になりました。
【若者】
■給付型奨学金を拡充
返済不要の給付型奨学金を実現。今年度から対象世帯と支給額が大幅に拡充されています。
■WiーFi整備加速
通信量を気にせず、スマホなどで動画やゲームを楽しめる公共の無料Wi-Fi。整備加速に尽力しました。
■携帯料金を引き下げ
公明党は1000万人超の署名を政府に届けるなど料金引き下げをリード。さらに安さを実感できる水準へ全力。
公明新聞2020/11/22 東京版転載
不育症治療 国の助成制度を創設すべきだ
妊娠しても流産や死産を繰り返す「不育症」。厚生労働省によると患者数は約140万人に上るという。適切な治療を行えば8割以上の患者が出産できるとの研究結果もあり、治療促進へ対策を強化すべきだ。
公明党は17日、菅義偉首相に対して不育症への支援を求める提言を行い、治療の実態や自治体の支援状況の把握を急いだ上で、不育症の治療に対する国の助成制度の創設、保険適用の拡大を求めた。
折しも今月、政府内に不育症の支援強化に向けたプロジェクトチームが発足し、議論がスタートしている。これは、10月に党女性委員会による首相への要請や代表質問などでの訴えを受けたものだ。政府は、実効性ある支援策を取りまとめてもらいたい。
公明党は長年にわたり、当事者の声を受け止め、公的支援を充実させてきた。治療法の一つとされる血液凝固を防ぐ自己注射薬(ヘパリン注射)の保険適用や、相談窓口の設置を実現するとともに、地方自治体では公明議員の訴えにより、治療費を独自に支援する動きが広がっている。
ただ、患者の半数以上が原因不明な上に、治療法については、安全性や有効性に関するデータが不十分なものが多く、保険適用外となるケースが大半だ。患者の経済的な負担は重い。
また、治療費の支援制度を設けている自治体も全体の3割にとどまり、内容にも差がある。全ての患者が支援を受けられるよう国として助成制度を創設すべきである。
17日の首相への提言で指摘している、患者や家族が抱える悲しみ(グリーフ)に対する心理面のケア(グリーフケア)の充実も不可欠だ。繰り返される流産や死産によって絶望や自責、無力感を抱き、不安障害やうつ病に陥る女性は少なくない。
グリーフケアは、一部のNPOや当事者団体が担っているものの、医療機関や自治体との連携が不十分なため、患者らに必要な支援が届いていないという。ケアの周知強化と併せて、関係団体と医療機関、行政との連携強化に向けた対策も検討すべきだ。
子どもを授かりたいという希望がかなうよう環境整備を進めたい。
公明新聞2020/11/21 2面転載