高齢者層で広がるネット通販のトラブル
新型コロナウイルス感染症拡大により、インターネット通販を利用する高齢者が増えています。半面、インターネットを使い慣れていない人も多く、利用はしてみたものの、「注文した商品が届かない」「写真と違うものが届いた」などのトラブルも増えています。慎重な利用を心掛けましょう。
■注文した商品が届かない
■無料期間なのに請求書
■スマホゲームで月10万円
総務省の「令和元年通信利用動向調査」によると、インターネット利用者の割合は60代で90%、70代でも74%と、高齢者層で大幅に伸びていることが判明しました。一方でトラブルも増加しています。インターネット通信販売(ネット通販)に関するものが顕著です。国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数は、今年4~6月だけで約7万件を超えました。
相談者の内訳は、50代以上のシニア世代が4割を占めています。コロナ禍における「新しい生活様式」として、国は通信販売の利用を推奨しています。そのため、ネット通販を初めて利用する高齢者が増え、トラブルに巻き込まれている実態が浮き彫りになりました。
例えば、次のような相談が寄せられています。
ネット通販で洋服と靴を購入した50代女性は、代金1万2000円をクレジットカードで決済しました。ところが2週間たっても商品が届かず業者に電話しましたが、「現在対応していません」と音声が流れるだけ。調べてみたところ、評判の悪い業者であることが分かりました。
60代男性からは、こんな相談が寄せられました。男性は、本来75万円する高級腕時計を格安で販売するとうたう通販サイトを発見。迷わず注文しましたが、掲載されている写真とは違う偽物が届いたというものです。
商品だけでなく、インターネットで映画などを鑑賞できる有料の動画配信サービスや、オンラインゲームなどに関するトラブルも発生しています。具体的には、▽1カ月間無料で視聴できる動画配信サービスを契約。無料期間が終了して解約したが、請求書が届いた▽コロナ禍で休校中の小学生が、祖母のスマートフォン(スマホ)を勝手に操作し、オンラインゲームで遊んでいた。3カ月間にわたって月10万円を請求された――などの事例も報告されています。
■クーリングオフなし/事前の確認が不可欠
トラブル増加を受け、国民生活センターでは、次のようにアドバイスしています。
ネット通販を含む通信販売には、クーリングオフ制度がなく、販売業者が定める特約(返品を認めないなど、消費者に不利な特約も)に従う必要があります。注文・購入する前には、返品の可否や返品できる期間などを必ず確認しましょう。もし、特約が定められていない場合は、商品を受け取った日を含めて8日以内ならば、購入者が送料を負担して返品することができます。
また、動画配信サービスを解約する際には、解約手続きの案内を必ず確認してください。お金や個人情報の詐取を目的とする悪質な業者も存在します。少しでも怪しいと感じたサイトは利用せず、万が一、トラブルが生じた場合は、「消費者ホットライン℡188」まで連絡してください。
公明新聞2020/10/13 4面転載