前川区長へ予算要望
広がる遠隔手話通訳
新型コロナウイルスの感染予防対策として、スマートフォン(スマホ)やパソコンなどのテレビ通話機能を活用し、手話通訳を提供するサービスが広がっている。手話通訳者が聴覚障がい者に同行せずに、映像と音声で通訳できるのが特徴だ。自治体や企業の取り組みを追った。
■スマホ、PC介し意思疎通/病院や行政手続き、災害時に活用
宮城県は、9月28日から遠隔手話サービスの運用を開始した。オンラインで手話通訳をする環境が整った県内自治体から順次、導入している。
通常、聴覚障がい者が手話通訳を利用する場合は、市町村に派遣依頼し、通訳者に同行してもらう。だが、コロナ禍にあっては聴覚障がい者と通訳者が互いに新型コロナへの感染リスクにさらされる可能性がある。手話は表情や口の動きも意思疎通に欠かせず、通訳者がマスクを着用できないという問題もあった。
しかし、遠隔手話通訳サービスを使えば、新型コロナによる感染リスクを回避することができる。利用者は、従来通り市町村の窓口に手話通訳者の派遣を申し込み、通訳者の派遣が困難だと市町村が判断すれば、スマホやタブレット端末などを使った遠隔による手話通訳サービスを提供する流れだ。県に登録している80人の手話通訳者が対応する。
■利用は無料
宮城県では、市町村の担当窓口が発行するURLや指定した2次元コードを読み取れば、自動的にビデオ通話画面に切り替わる独自のシステムを導入した。利用は無料で、医療機関の受診や行政の手続きのほか、災害時などで交通機関が使えず、通訳者が派遣できない場合も想定している。県障害福祉課の伊勢博之課長補佐は、「コロナ禍における聴覚障がい者のコミュニケーションを支援したいと考え、導入した」と話す。
■使い慣れたアプリで
今月15日からオンライン会議システムや無料通話アプリのビデオ通話を活用したサービスを始めたのは福岡県久留米市。申し込み時には、「遠隔手話を希望する」ことと「使用するアプリ」を伝える。新しいアプリをダウンロードする必要がなく、本人が使い慣れているアプリでサービスを利用できることが利点だ。
市障害者福祉課の担当者は「新しいアプリを使うことにハードルが高い人もいる。無料通話アプリなどを使う高齢者もおり、利用者が使いやすい形で始めた」と導入の背景を語る。
■企業の会議、面接でも
民間企業でも、遠隔手話通訳を活用する新たなサービスが進む。
障がい者や高齢者が使いやすいユニバーサルデザインの普及に取り組む株式会社ミライロ(大阪市)は、4月からオンラインによる面接や会議に参加する聴覚障がい者向けのサービスを展開する。
感染拡大当初、テレビ会議システムに参加する聴覚障がい者には、発言を文字化する音声認識アプリを使っていたが、システムとの相性が悪くて使えなかったり、相手の唇を読み取って会話をする口話では、「画質が粗く口元が見えない」といった課題を抱えていた。
そこで同社では、企業のオンライン会議や面接時に手話通訳者も参加し、同時通訳する仕組みを採用した。新型コロナの感染拡大によるオンライン会議などの需要の高まりが背景にあった。担当の福島直人さんは「コロナ禍でも、聴覚に障がいのある当事者がリアルタイムでオンライン会議に参加できる」と強調する。
社会福祉法人「聴力障害者情報文化センター」によると、手話通訳士の資格を持つ人は全国で3830人いるという。地域によって偏りがあり、高齢化も課題となっている。ミライロでは新型コロナの収束後を見据え、遠隔で通訳できる体制を今後も整えていく考えだ。
■厚労省、導入時の費用を初めて補助
厚生労働省は2020年度第1次補正予算で、都道府県がスマホなどの通信端末を通じた遠隔手話サービスを導入する際、通信環境の整備や通訳者の専用ブース設置などに要する費用の補助を始めた。現在、41都道府県が予算を活用している。厚労省の担当者は「同サービスの導入経費に着目し、初めて予算を付けた。今後も円滑に遠隔手話を利用してもらえるよう取り組む」と語っている。
公明新聞2020/10/29 3面転載
第8回光が丘清掃工場建替協議会
文字・活字文化の日
きょう10月27日は「文字・活字文化の日」。11月9日まで続く「読書週間」の初日である。
「ラストページまで駆け抜けて」との今年の標語の通り、最後まで心をつかんで離さない1冊に出合うことは、読書の魅力の一つだ。
読書は人生を豊かにする。ネット上の断片的な情報を拾うだけでは得にくい想像力や思考力を高めてくれる。とりわけコロナ禍という未曽有の困難の渦中にあって、読書の意義を改めて確認することは重要だ。
興味深いデータがある。近年は出版物の販売が低迷していたが、今年は本を手に取る人が増えているのだ。
日本出版販売株式会社の調査によると、9月期の出版物の店頭売上は2008年の集計開始以来、初めて5カ月連続で前年を超えた。特に、文芸書やビジネス書、児童書などの売れ行きが堅調だ。
大型書店が営業を自粛していた春ごろは、テレワークで働く人が自宅近くの小規模店で哲学書などを買い求める光景も見られたという。
危機を乗り越える知恵を書物に求めている人もいるのではないか。
ICT(情報通信技術)の発達により、スマートフォンやタブレット端末などで電子書籍を読む人が増えていることにも注目したい。
電子書籍の売り上げが伸びているのに加え、電子書籍を貸し出す「電子図書館」を持つ自治体数と電子図書の貸出件数が、共に急増している。活字離れが指摘される中で歓迎すべき動きである。
「良き書物を読むことは、過去の最も優れた人々と会話を交わすようなものである」とは、フランスの哲学者、デカルトの箴言である。
人と直接会って会話することが制約される今ではなおのこと、本との“会話”は歴史に学び、未来に希望を見いだす糧となろう。
読書週間は、敗戦の影響が色濃く残る1947年に「読書の力によって、平和な文化国家を作ろう」という決意のもとに始まったとされる。
一人一人がコロナ禍を克服し、わが国が新しい時代を開いていく上で、読書が果たす役割が大きいことを重ねて強調しておきたい。
公明新聞2020/10/27 2面転載
核禁止条約、来年1月発効へ
【ニューヨーク時事】核兵器禁止条約の批准書や受託書を国連に寄託した国・地域が24日、発効に必要な50に達した。ホンジュラス国連代表部が同日の批准書寄託を確認した。条約は90日後の来年1月22日に発効する。核兵器の使用や保有を初めて違法化する国際条約となる。
■保有国は参加せず
核兵器禁止条約は2017年3月、核軍縮の停滞を背景に非保有国の主導で制定交渉が始まり、同7月に採択された。核保有国やオランダを除く同盟国は交渉に参加せず、軍縮条約としては異例の速さで採択に至った。
条約は前文に被爆者の「受け入れ難い苦痛と損害」に留意すると明記。核抑止力を意味する「核兵器を使用するとの威嚇」も禁止した。一方、核保有国が交渉に参加しなかったため、具体的な軍縮措置は盛り込まれなかった。
核兵器禁止条約制定を働き掛け、ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」で国連を担当するセス・シェルデン氏は「条約発効で(核兵器は違法という国際的な)規範が強まることで、非加盟国の行動に影響を及ぼす可能性はある」と指摘。核保有国などに加盟を促す活動を続けていく方針だ。
ただ、核保有国は、核抑止力を国家安全保障戦略の柱に据えており、核兵器の使用をはじめ幅広い活動を禁止する同条約への参加は困難。条約制定を受け、核保有国と非保有国の溝も一層深まった。唯一の被爆国として両者の「橋渡し役」を自任する日本は、今後その役割をいかに果たしていくか、改めて問われることになる。
■国連総長、世界の運動成就
【ニューヨーク時事】グテレス国連事務総長は24日、核兵器禁止条約の年明けの発効について「核兵器使用による壊滅的な人道的結末に目を向けさせた世界の運動が成就した」と述べ、核兵器なき世界の実現に向けて条約制定・批准を働き掛けた被爆者や核実験被害者、NGO関係者らの活動をたたえた。報道官を通じ声明を発表した。
また、条約発効を核廃絶に向けた「有意義」な動きと評価。核廃絶が「国連にとって軍縮問題の最優先事項」と改めて強調した。
■党核廃絶推進委・浜田座長がコメント
核兵器禁止条約の来年1月発効が決まったことを受け、公明党核廃絶推進委員会の浜田昌良座長(参院議員)は25日、次のようなコメントを発表した。
■被爆者の声、結実を評価
このたび核兵器禁止条約を批准する国と地域が50に達したことで、同条約は90日経過した来年1月22日に発効することになります。これは唯一の戦争被爆国であるわが国のヒバクシャの皆様の声が、国際的な法規範として結実したものであり、高く評価するとともに、これまで核兵器の非人道性に対する啓発活動を通じて国際世論の形成をリードしてきた市民社会の活動に心から敬意を表します。
■日本はオブザーバー参加を
近年、核軍縮を巡る状況の停滞が続く中で発効要件を満たした核兵器禁止条約について、わが国が、対立を深める核兵器国と非核兵器国の間に「真の橋渡し」ができるよう、主体的な取り組みが必要と考えます。今後、開催が予定される締約国会合においては、オブザーバー参加や、広島、長崎への誘致も含めて、日本としての貢献のあり方を幅広く検討し、政府に働き掛けてまいります。
公明新聞2020/10/26 1面転載
国連創設75周年、山口代表のメッセージ(全文)
公明党の山口那津男代表が国連のグテレス事務総長に寄せた国連創設75周年に対する祝意のメッセージは次の通り。
◇
国際連合創設75周年の佳節に際し、日本国公明党を代表し、謹んで慶祝の意を表します。
新型コロナウイルス感染症対策をはじめ、気候変動や自然災害など地球規模の課題が増え、多国間協議の場が求められている今日、国連の存在意義はかつてなく高まっています。
日本政府は国連諸機関と緊密に連携し、ポストコロナを見据え、国連の取り組みを一層効果的なものにすべく改革を進めていく立場を明確にしております。公明党も連立与党として、SDGsの推進をはじめ国連改革への意欲を示す政府をしっかり後押ししてまいる所存です。
また、広島・長崎への原爆投下から75年という節目に、唯一の戦争被爆国であるわが国が核兵器廃絶に向け国際社会の合意形成に力を尽くせるよう機運を高めてまいりたいと存じます。
これまでの国連改革における貴殿のご貢献に敬意を表しますとともに、創設80周年に向けたさらなる飛躍のために一層のリーダーシップを発揮されることを期待しております。
国連の益々の発展と、貴殿のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
公明新聞2020/10/24 2面転載
光が丘夏の雲小学校開校10周年記念式典
感染症対策の司令塔「東京iCDC」が始動
東京都の新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策の“司令塔”として今月1日、「東京感染症対策センター(iCDC)」が始動した。政策立案に専門家の多角的な知見を生かすことで、これまで以上に的確な感染症への対応が可能になると期待されている。
■専門家の知見、政策へ反映
iCDCは、感染症など健康危機への対応や研究を行う米国の疾病対策センター(CDC)を参考に設立された。
都は新型コロナウイルスの感染拡大を機に整備を検討。名称には「感染症」を意味する「infection」の頭文字“i”を加え、感染症対策に特化した司令塔機能をアピールする。CDCのようなワクチンや治療薬の研究などは行わず、都庁内に置かれた事務局を中心に行政と専門家が一体となって、対策を打ち出す仕組みを整えた。
iCDCに期待されるのが、感染の再拡大やインフルエンザとの同時流行など、今後、予想される課題に対し、より効果的かつ迅速な対応を図ることだ。
組織内に設置された「専門家ボード」(座長=賀来満夫・東北医科薬科大学特任教授)には、大学や研究機関などから専門家が集い、検討チームを構成。都の感染症対策全般について、提言・助言を行う。
これまでも都では、医療提供体制などについて、専門家の助言を受けてきた。今回、より専門性を高めたチームでの調査・研究を進めることで、さらに科学的な知見に基づいた政策を打ち出すことができる。まず、①疫学・公衆衛生②感染症診療③検査・診断④正確な情報の発信・分析を行う「リスクコミュニケーション」――の4チームで議論を進め、今後は必要に応じて、チームを増設する。
加えて、都の福祉保健局内には緊急時のオペレーション機能を持つ「健康危機管理対策本部」を設けた。政策立案や感染が拡大する地域への集中支援、医療提供体制の確保などを進める。複数の部局や関係機関が担ってきた機能を一体的に運営することで、「的確で迅速な対策ができる」(都の担当者)という。
コロナ禍という有事でのスタートになったが、常設の機関として、平時には、公衆衛生人材の育成や研究機関とのネットワーク構築に当たる。専門家ボードの外部アドバイザーを務める国立感染症研究所の脇田隆字所長は、「(iCDCによって)行政と専門家が一体となり、有効な対策を実行することが可能な体制が整う」と期待を寄せる。
■都議会公明党、早期運用など訴え
都内の新型コロナ感染者数は今月21日までに2万9335人と全国の感染者数(9万3405人)の3割を占める。15日に開かれた都のモニタリング会議においても、新規陽性者数や感染経路が不明な事例の増加が指摘されるなど、いまだ予断を許さない状況だ。
iCDCについて、都議会公明党(東村邦浩幹事長)は8月31日の緊急要望で早期の運用開始を主張。9月29日の都議会代表質問では、iCDCの役割として、専門家の知見を生かし、コロナとインフルエンザの同時流行に備えた的確な対策などを実施するよう要請してきた。東村幹事長は、「iCDCからの提言、助言を公明都議23人に寄せられた現場の声と照らし合わせ、政策に反映させていく」と語っている。
■コロナ下の設立に大きな意義/iCDC専門家ボード座長(東北医科薬科大学特任教授)賀来満夫氏
新型コロナウイルスという未知の感染症に直面する中で、最新の情報や科学的知見を基に対策を進めるiCDCのような機関が立ち上がったことには、非常に大きな意義がある。
専門家ボードには、疫学・公衆衛生、感染症診療、検査・診断、リスクコミュニケーションなど、幅広い分野の専門家が集っている。
このようなメンバーで議論を重ねることで、喫緊の課題となっているインフルエンザとコロナの同時流行に対しても、検査や診療体制に限らず、疫学的な調査・研究、不安を抱える都民への情報共有のあり方など、総合的な対策の強化を図ることができる。
公明党は、感染拡大の当初から、危機管理の重要性を訴え、都民の代表として対策を進めてきたと認識している。今後も連携を密にしながら、効果的な政策の実現をめざしていきたい。
公明新聞2020/10/23 3面転載
増える「カスハラ」 企業は悪質行為から従業員守れ
土下座の強要、購入から半年たった商品の返品、特定従業員への解雇の要求――。どれも顧客や取引先が従業員に悪質なクレームや理不尽な要求を突き付ける「カスタマーハラスメント」(カスハラ)の事例である。
厚生労働省は、カスハラに応対する従業員が精神疾患を抱え、自殺や退職に追い込まれるなど被害が深刻化していることを踏まえ、来年度に企業向けの対応マニュアルを策定する方針を決めた。
疲弊して心を病む働き手が増えれば、企業の事業継続にも影響しよう。近年は、ネット上に企業や個人の実名をさらして誹謗中傷するなど悪質性も目立つ。国が対応策を示すことは、企業に実効性ある取り組みを促す意義がある。
昨年の民間調査によると、苦情対応の担当者らの半数以上が最近3年でカスハラが増えていると感じていた。対応によるストレス増加は約9割に上り、8割が「仕事意欲への低下」で業務に影響があると答えている。国際労働機関(ILO)が昨年6月に採択した職場でのハラスメントを禁止する条約には、カスハラも対象に含まれ、国際的にも問題視されている。
クレームは本来、企業の商品やサービスを向上させる上で有益なものといえる。一方で、「客」という立場を悪用して従業員に面と向かって罵倒するなどの言動は、人権侵害にもつながる。度を越した迷惑行為を許してはならない。
重要なのは、働き手を守ることだ。企業には、従業員が安全で健康に働けるように配慮する義務がある。社内で悪質クレームに対する考え方や対処方針を浸透させるなど、組織として毅然と対応する体制づくりに取り組んでほしい。
公明党はカスハラ被害が相次ぐ事態に対し、昨年の女性活躍推進法等改正案の国会審議などで、行為の定義や対応のあり方を示したガイドラインの策定といった必要な対策を、関係省庁が連携して実施するよう求めてきた。
国はマニュアル策定に当たり、企業対応の好事例も収集する予定だ。どこからがカスハラと呼べるのか、線引きが難しい課題でもあるだけに、可能な限り分かりやすく対策を示し、周知徹底を図るべきである。
公明新聞2020/10/22 2面転載