保健所の強化
新型コロナウイルスの感染者が全国で再び増加する中、対策の最前線に立つ保健所の過重負担が深刻化している。
公明党の山口那津男代表は、3日の政府・与党連絡会議で保健所の強化を訴えた。保健所は、コロナ感染症対応を含め広く公衆衛生を守る重要機関である。機能不全を招くようなことがあってはならない。
全国保健所長会の調べによると、新型コロナの感染が拡大し始めた3月中旬から下旬の保健所業務は▽感染の疑いがある人を診察する医療機関の調整▽PCR検査の受付▽検査機関への検体搬送▽感染経路を追跡する積極的疫学調査――などが多かった。
保健所が日常的に担う業務は、母子保健や食品・環境衛生に関する指導、医療機関の監視など多岐にわたる。これらに加え、今は新型コロナへの対応に追われている。保健所には相談を求める電話が絶えず寄せられ、超過勤務も常態化。労働環境は過酷を極めている。
こうした事態に陥った背景の一つが、行政改革の一環として各地で進められた保健所の統合・縮小だ。地域保健法が制定された1994年に全国で847カ所あった保健所は、2020年に469カ所と4割ほど減った。
新規感染者が再拡大し、収束の見通しも立たない中で保健所機能をどう強化するか。
重要なのは、保健師がウイルスの封じ込めに必要な感染経路の追跡や感染者の健康管理といった専門業務に集中できる環境を整備することだ。そのために当面は、職員の配置調整や臨時職員の採用を急ぐべきである。
大阪市は、保健師のOBに協力を求めたほか、民間の人材派遣会社にも保健師の派遣を依頼している。山梨県では保健師に加え、事務などを担う臨時職員を採用している。各地の参考になろう。
業務の見直しや効率化も重要であり、外部委託を積極的に進めたい。電話相談や検体搬送、検査結果の通知といった作業を民間業者に任せているところもある。
コロナ後も新たなパンデミック(世界的流行)が起きる可能性は否定できない。今後の増設を含め、政府は保健所の体制強化に努めるべきだ。
公明新聞2020/08/07 2面転載