法務局の遺言保管制度
■自宅での保管に比べ、改ざんなどの恐れもなく安全で、家庭裁判所による検認も不要。7月10日からスタート
Q 父が自筆でしたためた遺言書が自宅で見つかり、すぐに家庭裁判所(家裁)で検認の手続きをした。遺言書のおかげで相続が円滑に終わった。
A その遺言書は自筆証書遺言だ。家裁の検認という手続きによって遺言書の保存を確実にし、後日の変造や隠匿を防ぐことが必要だ。
しかし、せっかく書いた自筆証書遺言でも無効とされるケースも多いという。自筆証書遺言が無効とされるケースは、財産目録はワープロで作成しても良いが、本文までワープロで書かれていたり、日付と氏名が自筆でなく、また、押印がない場合だ。さらに、相続する財産が不明確だったり、誰かと共同で書かれたものも無効とされる。お父さんの場合、自筆証書遺言としての形が整っていたので遺言書として有効だったのでしょう。
Q 自筆証書遺言は、そもそも自宅で保管するため、誰も遺言書の存在に気付かなかったり、逆に改ざんされるリスクもある。結構、大変だ。
A その通り。そこで自筆証書遺言に関わるトラブルを避けるため、各地の法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が7月10日からスタートする。
保管に当たっては、法務局が財産目録以外は自筆かどうか、日付と氏名も自筆か、また、押印があるかなど、民法が定めている自筆証書遺言に必要な外形が整っているかどうかをチェックしてくれる。
遺言者が亡くなった後、法務局は相続人からの請求を受け、遺言書の写しを渡し、同時に、他の相続人に対して遺言書を保管していることを通知する。
利点としては、改ざんなどの恐れがなく、さらに、自筆証書遺言に必要な家裁による検認の手続きが不要になることだ。そのため、すぐに遺産分割の手続きに入ることができる。
1980年代以降、遺言の利用は急速に増えている。保管制度が相続トラブル防止に役立つことが期待される。
公明新聞2020/06/29 3面転載