学校教育のICT化/一人一人の可能性引き出したい
さまざまな子どもたちの状況に応じた「誰一人取り残さない教育」をめざし、環境づくりを進めたい。
先に成立した2019年度補正予算には、学校現場のICT(情報通信技術)化を推進する「GIGAスクール構想」実現のための経費が盛り込まれている。これは、児童・生徒が1人1台のパソコンやタブレット端末を持ち、クラス全員が一度にアクセスできる通信環境の整備を支援するものだ。
経済協力開発機構(OECD)が、世界の15歳を対象に実施した国際学習到達度調査(PISA)によると、日本の子どもは、ネット上の膨大な情報の中から必要なものを探し出し、信頼できるか見極める能力が十分育まれているとは言えないとされた。
ネット社会が進展する中、情報を活用する能力を育成する点で、日本が立ち遅れている現状は看過できない。
19年3月時点の学校におけるパソコンの配備状況は全国平均で5・4人に1台にすぎない。最も整備されている佐賀県の1・9人に1台に対し、最も低い県では7・5人に1台にとどまるなど、地域格差も大きい。
加えて強調したいのは、ICT化が特別な支援を必要とする子どもたちが勉強していく上での困難を改善、克服するのに役立つことだ。
例えば、視覚に障がいがある子どもは、読み上げ機能や拡大機能を利用することで、皆と同じように学べる。聴覚に障がいがある場合は、教師やクラスメイトの話を音声認識技術を用いて文字に変換することも可能だ。
過疎地や離島の学校、入院中の子どもを対象にした遠隔教育への活用も期待されている。近年増えている、親が外国籍などの子どもに、きめ細かい指導を行う際も、通訳機能が使える。
公明党が19年の参院選公約に学校教育のICT化を掲げたのも、子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育を後押しできると考えたからだ。
ただ、ICT機器の扱いに不慣れな教員が少なくないことや、今後見込まれる端末の維持費の負担などを懸念する声があることも事実だ。こうした課題への手だても検討を進めるべきである。