温暖化と健康リスク/子どもへの影響が懸念される
未来の世代ほど、地球温暖化の影響を強く受けることを改めて認識する必要がある。
英国の医学誌ランセットと欧米の大学チームは、温暖化によって世界中で農作物の収穫可能な量が減少し、感染症も拡大するため、子どもの健康リスクが高まるとの報告書を発表した。
報告書では、1980年からの30年間でコメや麦、トウモロコシなどの収穫量は最大で6%減っており、温暖化により一層の減少が見込まれると分析。また、気温の上昇や降雨量の増加などでウイルスや細菌が広がりやすい環境になり、デング熱やコレラといった感染症の被害が拡大すると警鐘を鳴らしている。
実際に日本でも、気温の上昇による水稲の品質低下や収穫量の減少が報告され、デング熱などの感染症を媒介する蚊の生息域が東北地方北部まで拡大していることも確認されている。
今回の報告書でとりわけ重要なのは、このまま温暖化が進めば子どもの健康に重大な影響が生じると指摘している点である。
例えば、農作物の収穫減は途上国の子どもを中心に深刻な栄養不足を招き、感染症も抵抗力が弱い子どもほど重症化しやすい。加えて、化石燃料の利用が続けば大気汚染が進行し、呼吸器などが発達段階にある子どもに、ぜんそくの悪化や心疾患の増加が見込まれることにも報告書は言及している。
既に「世界で発生する全ての死亡の約4分の1は、何らかの形で環境問題に起因し、その死亡者の3分の1以上を14歳以下の子どもが占めている」(ユニセフ)。温暖化対策の強化に国際社会が総力を挙げるべきであることは言うまでもない。
来月には、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)がスペインで開かれる。産業革命前に比べ世界の平均気温の上昇を2度未満、できれば1・5度未満に抑えることを目標に掲げる「パリ協定」の発効を来年に控えた重要な会議である。
米国が協定離脱を通告したことは大きな打撃に違いないが、残る締約国が団結し協定を着実に実施していかねばならない。この点、日本のリーダーシップにも注目したい。
2019年11月19日 公明新聞2面転載