グリーンボンド/環境対策の資金調達に活用を
温暖化対策に必要な資金を調達する手段として、日本でも普及させたい。
国際社会では今、「グリーンボンド」と呼ばれる債券が急速に拡大している。最新のデータでは、今年9月時点の発行額が全世界で1709億ドル(約18兆円)に上った。過去5年間で4倍以上というのだから驚くべき増加率だ。
グリーンボンドとは、環境問題の改善に役立つ事業(グリーン事業)に使途を限定し、国や自治体、企業などが発行する債券(ボンド)のことである。
太陽光パネルの設置や植林、電気自動車の開発といった事業の資金調達のために発行され、購入した投資家らには一定期間たつと利息とともに払い戻される。
投資家にとって魅力が大きいこともグリーンボンドの特徴である。環境対策という息の長い取り組みに投資することによって、長期的に安定した利益が見込めるからだ。環境対策とビジネスをうまく結びつけた点に、急成長の要因があると言えよう。
日本では、環境省がグリーンボンドの発行に関するガイドラインを定めた2017年から発行額が増え始めている。例えば東京都は同年、日本の自治体として初めてグリーンボンドを発行し、東京五輪施設の照明のLED化や環境に優しい都営バスの導入などに充てている。金融機関をはじめ民間企業もグリーンボンドの発行に乗り出している。
とはいえ、日本の発行額は世界全体の1%程度にすぎない。世界第3位の経済大国であり、脱炭素社会の実現を国際社会で最初に掲げた国にしては、市場規模はあまりに小さく、政府は取り組みを強める必要がある。
まずは、グリーンボンド自体の認知度を高めることだ。自治体や企業に発行を促すと同時に、投資家の信頼を得る努力が欠かせない。
投資環境の整備も重要だ。グリーンボンドの発行には、通常の地方債や社債よりも必要な手続きが多く、コストもかかるため敬遠する企業が少なくない。
相次ぐ台風被害を見ても気候変動対策は喫緊の課題であり、グリーンボンドの役割は大きいことを重ねて強調しておきたい。 2019年10月26日 公明新聞2面転載