グリーフケア
被爆の実相 次世代に/核軍縮進展へ対話促す/山口代表 NPT会議成功後押し
公明党の山口那津男代表は6日午前、広島市で記者会見し、核兵器のない世界に向けた日本の役割などについて、大要次のような見解を述べた。
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【被爆体験の継承】
一、原爆投下から74年を迎えた。被爆を経験した人が少なくなり、その体験の継承が難しくなっている。記憶や経験を文字にとどめ、画像や映像に残し、被爆の遺構を保存することで、被爆の実相を後世に伝えていく取り組みが重要だ。
一、(被爆遺構の保存について)公明党議員も積極的に支援している。後世に残し、伝えるべき価値があり、保存に適したものは、政府に一定の配慮をお願いしたい。具体的な検討へ前向きに努力していく。
【核なき世界に向けて】
一、唯一の戦争被爆国である日本が核兵器のない世界をめざして、これからも粘り強く歩みを進めていかなければならない。(核兵器保有国と非保有国の橋渡し役として)公明党が提唱し、創設された賢人会議が9月にも報告書をまとめる。これを日本政府が共有して、来年開かれる核拡散防止条約(NPT)運用再検討会議での対話を促し、実質的な核軍縮に結び付ける役割の一助として生かしていくべきだ。公明党もNGO(非政府組織)などと手を携え、日本政府をバックアップしながら、会議の成功を後押ししていく。
一、(広島市長が平和宣言で「核兵器禁止条約の署名・批准を求める被爆者の思いを受け止めてほしい」と述べたことについて)広島市民の切なる声を政府に届ける真摯な内容だった。核兵器禁止条約に対する日本政府の取り組みを求める声は、広島市民のみならず、広範で強い。国際的な規範として重要な意味を持つものだ。
一、一方で、核兵器の禁止規範とともに大事なことは、核保有国に働き掛けて、実質的な核軍縮を進めることだ。そうした点に日本政府は配慮し、核保有国と非保有国の橋渡し役を担い、対話による核軍縮の進展をめざしている。大きな方向性は矛盾するものではない。
■74回目、広島原爆の日
広島は6日、74回目の原爆の日を迎えた。広島市中区の平和記念公園では、午前8時から市主催の「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が開かれ、被爆者や遺族ら約5万人が参列。松井一実市長は平和宣言で、日本政府に対し「唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いを受け止めて」と訴えた。
式典には安倍晋三首相ら政府関係者のほか、公明党からは山口那津男代表をはじめ、斉藤鉄夫幹事長、谷合正明、山本博司の両参院議員、田川寿一、栗原俊二、日下美香、尾熊良一、下西幸雄、石津正啓の各広島県議、渡辺好造、西田浩、碓氷芳雄、石田祥子、川村真治、並川雄一、田中勝、川本和弘の各広島市議が出席。92カ国と欧州連合(EU)の代表とともに、国連の中満泉軍縮担当上級代表(事務次長)も、3年連続で出席した。
原爆が投下された午前8時15分には、遺族代表らが「平和の鐘」を打ち鳴らし、1分間の黙とうをささげた。
市長は宣言で、世界の政治指導者に対し「核兵器のない世界への一里塚となる核兵器禁止条約の発効を求める市民社会の思いに応えてもらいたい」と要請。日本政府に対しては「核兵器のない世界の実現にさらに一歩踏み込んでリーダーシップを発揮する」よう求めた。
中距離核戦力(INF)全廃条約の失効など最近の国際情勢については「国家間の対立的な動きが緊張関係を高め、核兵器廃絶への動きも停滞している」と指摘した。
安倍首相はあいさつで「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、双方の協力を得ながら対話を粘り強く促し、国際社会の取り組みを主導する」と述べた。
式典では市長と遺族代表が、この1年間に死亡が確認された5068人の名前を記した原爆死没者名簿を慰霊碑に納めた。犠牲者は31万9186人となった。厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ人は今年3月末時点で全国に14万5844人。平均年齢は82・65歳で、昨年より0・59歳高くなった。
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「核なき世界」めざして/「被爆の実相」世界に発信/広島、長崎へ要人が訪問 政府とNGOを橋渡し
今年で設立10年の節目を迎える公明党核廃絶推進委員会。広島、長崎の「原爆の日」を前に、同委員会の設立時から座長を務めている浜田昌良参院議員に、「核兵器のない世界」の実現に向けた取り組みなどについて聞いた。
――2009年12月に核廃絶推進委員会を設置した背景は。
浜田昌良座長 当時は2010年の核拡散防止条約(NPT)運用再検討会議の直前だった。同会議は5年に1度、核不拡散に関する問題を議論するが、05年の会議は最終文書を採択せず決裂。NGO(非政府組織)関係者から10年は成功させたいと、協力要請があった。
また、09年8月の衆院選で野党に転じ、もう一度、公明党らしさを見つめ直している時でもあった。新しい党のビジョンでも「平和」は重要な位置を占めた。そこで、長いスパンで継続的に核廃絶を議論し、NGOと政府を橋渡しする、対決型・対立型ではないプラットフォーム(共通基盤)として委員会は設置された。
――どんな視点で取り組んできたのか。
浜田 核廃絶を本当に実現しようとする時、核廃絶という「理想」と安全保障(核抑止)という「現実」のギャップを埋める必要がある。このギャップを埋め、イデオロギー(政治的立場)を乗り越えるには、「被爆の実相」や「非人道性への共感」を基盤にして近寄る必要があるとの方針で取り組んできた。
まずは「被爆の実相」を知ってもらうことが重要だと外務省に訴え続けた。同省もこれに対応し、世界の首脳が集う会合を被爆地で開くなどして、ついに16年にはオバマ米大統領の広島訪問が実現した。そのほかにも各国要人が被爆地を訪れたり、国際会議に被爆者の代表が出席するなど、被爆の実相を広く世界に伝える取り組みが大きく前進した。
――今後の取り組みについては。
浜田 17年に国連で採択された核兵器禁止条約の交渉過程で、核兵器保有国と非保有国の溝は深まった。核禁条約は、国際的に核兵器を禁止する規範を確立しようとする画期的な一歩であり、公明党も大局的な視野から評価しているが、核軍縮を具体的に進めるためには、もう一度、両陣営の橋渡しをしないといけない。
橋渡しの一つの手段として、核保有国と非保有国双方の有識者を日本に招き、核軍縮の進め方を議論する外務省主催の「賢人会議」が創設された。同会議は、公明党の提案で被爆地の広島市と長崎市でも会合を重ね、9月には、これまでの議論をまとめた報告書を外務省に提出する。さらに後継組織として有識者とNGO、そして関係国の政府関係者が議論する「1・5トラック」会合を外務省が開く。これらを通じ、日本が来年のNPT運用再検討会議で核軍縮に関する合意形成を進める役目を果たしていくべきだ。
――党は核廃絶にどう取り組むか。
浜田 冷戦後の核軍縮の支柱であった米ロの「中距離核戦力(INF)全廃条約」が2日に失効した。このように、核廃絶を取り巻く現実は厳しくなってきている。
新たな軍拡競争への懸念も広がる中だが、それでも日本は唯一の戦争被爆国として、国際社会に対して核廃絶を訴える権利と責務がある。日本が核保有国と非保有国の真の橋渡し役となるよう、公明党が与党として支え続けたい。さらに政党外交などを通じて、国際社会に核廃絶を訴え続けていく。
風しん拡大防止へ/公明訴え「無料券(抗体検査と予防接種)」送付/今年度は40〜47歳の男性 届いたらぜひ受診
風疹の感染拡大を防ぐため、全国の市区町村では40〜47歳(1972年4月2日〜79年4月1日生まれ)の男性に宛て、今年春から夏にかけて抗体検査や予防接種の無料クーポン券が届けられている。厚生労働省によると、全国の市区町村の約9割が7月末までに送付を終えたとされ、同省は「クーポン券を使って抗体検査と予防接種を」と呼び掛けている。
風疹は、特に妊婦が感染すると、赤ちゃんが難聴や心臓病、白内障などになって生まれる可能性がある。国立感染症研究所によると、今年初めから7月21日までに報告された風疹患者が計2004人に上り、昨年(1年間で2917人)を上回るペースで拡大している。
今回の無料クーポン券配布は、感染拡大を受けた公明党の強い主張で、政府の2018年度第2次補正予算や19年度予算に計上された対策の柱となる事業。
この対策は、子どもの頃に予防接種を受ける機会がなかったことで、他の世代に比べて抗体保有率が低い40〜57歳(62年4月2日〜79年4月1日生まれ)の男性に焦点を当てている。今年度はまず、40〜47歳の約646万人に無料クーポン券が発送されているが、48〜57歳でも、市区町村の担当窓口に連絡すれば発行される。
区役所20階
地方経済潤す訪日客/消費額は1兆円超/公明、観光立国の実現を推進
訪日外国人の増加が続き、国内各地の経済を押し上げている。観光庁は17日、今年上半期(1〜6月)の訪日外国人旅行者が推計で1663万3600人と、過去最高を更新したと発表した。訪日外国人の旅行消費額も1兆2810億円で過去最高(2019年4〜6月期)を記録。訪日客の地方部(三大都市圏の8都府県を除く)での消費額も拡大しており、18年には初めて1兆円を突破し1兆362億円に達している。
■体験型観光など「コト消費」拡大
地方を訪れる訪日客の増加は、体験型観光など「コト消費」への関心の高まりが背景にある。
観光白書によると、買い物など「モノ消費」を求める訪日客の割合は、これまで約5割以上で推移してきたが、18年には約4割まで減少。各地の文化体験などを求める訪日客が増えているという。
実際、外国人の呼び込みに成功している観光地では、各地の特色を生かした体験型観光が盛況だ。
外国人延べ宿泊者数が15年の約2倍(約2万9000人泊、17年)になった徳島県「にし阿波」エリアでは、伝統文化の藍染め体験や桐げた工場の見学ツアーが好調。日本各地に残る伝統芸能など“本物”に触れたい訪日客を引き付けている。
外国人利用者数が15年の約2・4倍(約9300人、18年)になった三重県伊勢志摩地域の海女小屋体験施設。ベテラン海女が素潜り漁や生活の様子を話しながら、手焼きによる魚介類を提供することで人気が高い。訪日外国人の集客が、交通費や宿泊費などを含め、地域に大きな経済効果をもたらしている。
地方を訪れる訪日客の割合は15年に地方も訪れる人が5割を超え、18年には約6割の1800万人に達している。地方誘客の流れを加速させ、地域活性化につなげる取り組みの重要性が増している。
公明党は、経済成長や地方創生に向けた「観光立国」の実現を強力に推進してきた。ビザ(査証)発給要件の緩和や消費税免税店制度を拡充。19年5月に党が政府に行った政策提言「成長戦略2019」では、地方誘客に向け、地域の自然や文化財を活用した体験型観光の推進を訴えていた。