世界経済減速と日本/予算案の早期成立が最大の備え
世界的な景気減速の傾向が顕著になっており、日本経済にどのような影響が及ぶのか注視する必要がある。
欧州中央銀行(ECB)は7日、欧州の単一通貨「ユーロ」圏における今年の成長率の見通しを従来の1・7%から1・1%に下方修正し、年内の利上げ断念を表明。加えて、中国の税関総署が8日、2月の輸出が20・7%減と、3年ぶりの大幅な減少となったことを発表したのを機に、世界的な株安を招いた。
日本でも、日経平均株価が大幅に続落し、一時2万1000円台を割り込んだ。
世界的な景気減速は、やはり中国が起点となって進んでいると言えよう。
中国政府は今年の全国人民代表大会(日本の国会に相当)で、米国との貿易摩擦を背景に経済成長の勢いが著しく鈍化していることを踏まえ、2019年の経済成長率の目標を2年ぶりに引き下げた。
この状況は米国にとっても痛手となっている。中国製品には米国製の部品も組み込まれており、中国向けに輸出をしている米企業は直接的な打撃を受けているためだ。
欧州の経済不振も、中国向けの輸出が多いドイツの経済成長の伸び悩みが、主な理由の一つとなっている。
日本も、減速傾向を強める中国経済の影響が、政府の1月の景気動向指数の速報値に表れ、生産の動きを示す鉱工業生産指数が低下しているほか、輸出額も減少している。
このように、日本経済を取り巻く環境は不透明感を増しているが、過度の悲観論は避けるべきだ。中国政府は、特に景況感が悪化している製造業と中小企業の税負担を軽減し、景気のてこ入れを図る方針を明らかにしており、その効果を見極める必要がある。
また、日本経済の状況は決して悪くない。雇用と所得の環境改善が続いており、今年の春闘では賃上げが確実視されている。訪日外国人観光客による消費も増加している。
重要なことは、先行き不透明な世界経済がもたらすリスクに備えつつ、10月の消費税率10%への引き上げに適切に対応することである。その意味で、19年度予算案の早期成立と、その着実な実施に勝る景気対策はないことを強調しておきたい。 2019年03月11日 公明新聞2面