都市農地貸しやすく/新法施行 マッチングが重要に/公明推進 貸借でも相続税を猶予
税負担を軽減し、生産緑地を貸しやすくする都市農地貸借円滑化法が9月に施行され、都市部の農家の後継者不足解消に向けた取り組みが始まっている。
同法に基づく新制度は、これまで第三者に貸し付けると打ち切られていた生産緑地の相続税の納税猶予を貸借時も継続できるようにした点がポイント。所有者が新たな納税の心配をせずに希望者へ貸し出せるようにした。
また、農地の貸借は行政が解約を認めなければ借り手が借り続けられるため、所有者が貸したがらないケースが少なくなかった。このため、新制度は賃貸借期間終了後に所有者へ確実に戻ることを保証し、貸しやすい環境にした。
新制度を受け、東京23区で最大の農地面積を有する練馬区は、地元のJA東京あおばと協力し、農地を所有する約700世帯を対象に9月下旬からアンケート調査を実施。「農地を『貸したい』『借りたい』などの意向を正確に把握しながら、新制度を周知していく」(同区都市農業課)と話している。
同区内で、約70アールの農業体験農園を営む加藤義松さん(64)は、農家の後継者不足が問題になる中、「同法の施行は、生産緑地の貸借を活性化し、意欲ある人によって都市農業が安定的に維持されることに貢献する。貸したい人と借りたい人をうまくマッチングさせる仕組みづくりが重要だ」と期待を寄せる。
生産緑地の指定を受けると、30年間の営農義務を負う代わりに、宅地並みに重い固定資産税が農地並みに軽減される。さらに、相続税の納税猶予の適用も受けられるが、東京など三大都市圏の特定市では、終身営農の条件が課せられる。
ただし、第三者に貸し出すと相続税の納税猶予が打ち切られるため、これまで貸借が進まなかった。生産緑地の約8割が1992年に指定を受けており、2022年に優遇期限を終える。生産緑地の賃貸借が進まなければ、農地の宅地化などが急速に進む懸念があり、都市農業振興に向け、農地を貸しやすくする制度への改正が求められていた。
公明党は都市農業の振興に一貫して取り組み、都市農業振興基本法(15年)や都市農地貸借円滑化法の成立をリードしてきた
2018年10月29日 公明新聞2面転載