人工乳房 保険適用が好評
乳がんで乳房の全摘手術後、乳房再建に使う「人工乳房」が医療保険の対象になり、好評だ。
1月から、より自然な形で再建できる「しずく形」の人工乳房にも医療保険が適用されたことで、胸の膨らみを失った女性の喪失感を補うための選択肢が広がっている。人工乳房による再建は自費診療だったため、保険適用によって、患者の自己負担は原則3割で済むようになった。
昨年7月、おわんのような「丸形」の人工乳房に、日本で初めて保険適用された。しかし、丸形が合わない人も多く、しずく形の早期承認が求められていた。
医療保険が使えるようになったことで、がん診療連携拠点病院や大学病院などでも実施例が増えている。一方で、人工乳房は、素材を冷たく感じるなど違和感を感じる人もいるため、担当の医師と納得いくまで相談して決めることが大切だ。
日本では年間約6万人が乳がんを発症し、そのうち約2万人が全摘手術の対象になっている。人工乳房の保険適用によって、患者の経済的負担が大幅に軽減され、術後の前向きな生活を支援する一助にもなっている。
乳房再建には、お腹や背中などの脂肪や筋肉、皮膚を移植する「自家組織移植法」と人工乳房を使う方法がある。従来は自家組織の移植にしか医療保険が適用されなかった。
新たに保険適用された乳房再建術は、がんの切除と同時に皮膚を膨らませるための器具(皮膚拡張器=エキスパンダー)を留置し、数カ月後にシリコーンでできた人工乳房と入れ替える方法。
都道府県が提供している医療機関の情報提供サービスや日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会のホームページなどで手術を行う施設が紹介されている。手術を希望する患者への丁寧な普及体制の構築が必要だ。<公明新聞2014年2月4日付掲載>