障がい者の声生かす
都議会公明党の推進で東京都の障がい者支援策が着実に進んでいる。その中から、「東京都盲ろう者支援センター」設立と、字幕や音声ガイド付き「バリアフリー映画」普及の取り組みを紹介する。
東京都盲ろう者支援センター
生活訓練や相談など実施
全国に先駆け、盲ろう者を支援
視覚と聴覚の両方に障がいのある盲ろう者を支援する「東京都盲ろう者支援センター」(台東区)が2009年5月に設立され、4年が経過した。
長年、盲ろう者は福祉行政の谷間に置かれ、一般社会からも置き去りにされてきただけに、多くの関係者がセンター誕生と、その事業を高く評価している。
同センターは、都の補助を受け、認定NPO法人「東京盲ろう者友の会」が運営。自治体レベルでの“日本版ヘレン・ケラー・センター”とも言える同センターは、わが国初の試みとして大きな注目を集めている。
盲ろう者は全国でおよそ2万人、東京都内には約2000人いると推計されているが、既存の視覚・聴覚障がい者向けサービスの利用は難しい。
「盲ろう」は、テレビに例えると、画面が消え、音声も消えた状態。「光」と「音」が失われた生活になるため、独力で他者とコミュニケーションが取れず、情報入手や移動も容易ではないためだ。
支援センターの設立によって、盲ろう者のコミュニケーション能力を高める訓練を行うことができるようになった。それが、希望を持って生きていく原動力になっている。
設立のきっかけは、08年8月、都議会公明党と盲ろう者である東京大学准教授の福島智氏との出会いだった。「米国には、盲ろう者の社会的自立を支援するヘレン・ケラー・ナショナルセンターがある。ぜひ日本にも設置してほしい」という福島氏の訴えを受けて、都議会公明党が都への働き掛けを約束したことから始まった。
当初、都の関係部局は「個別の障がい者向けのセンターは設立できない」との考えを崩さず協議は難航、計画は何度も暗礁に乗り上げかけた。しかし、公明党議員の粘り強い推進の結果、09年度予算に同センター設立の費用が計上され、開設へとこぎ着けた。
盲ろう者に“生きる意欲と希望”を持ってもらえる支援拠点は、全国への普及が待ち望まれている。
バリアフリー映画
字幕・音声付き作品が普及
公明 国会・都・区議の連携で実現
視覚、聴覚障がい者も楽しめる字幕や音声ガイド付きのバリアフリー映画の上映が各地に広がっている。
現在、日本には目や耳の不自由な人は約70万人と推計されている。だれもが楽しめる映画の普及は都議会公明党の実績の一つだ。
聴覚障がい者向けの字幕は、外国語映画のセリフを日本語で表示する字幕とは異なる。「音情報」と呼ばれる音楽や効果音の説明、誰が話しているセリフなのかなど、ストーリー展開が分かる丁寧な解説である。
映像のバリアフリー化は、映画に限らず、テレビやDVD(デジタル多用途ディスク)にも普及し始めている。公明党の国会議員と都・区議との連携プレーによって、09年6月、改正著作権法が成立し、障がい者向け字幕や音声ガイドが著作権者の許可なしで付けられるようになったからだ。
字幕は一般の人も十分に楽しめる。例えば、高齢者が複雑なストーリー展開の映画を鑑賞する時に役立つほか、子育て中の親が、寝ている子どもを起こさないように音声を消して、字幕でドラマを楽しむ場合にも利用できる。
映画製作大手4社による日本映画作品の約6割(10年現在)が字幕付きになり、バリアフリー映画は普及が進んでいる。
ただ、上映する映画館は少ない。中小の製作会社を含めると字幕作品の製作は1割強と、遅れている。また、音声ガイドは、ごくわずかな作品にしか付いていないのが現状だ。いずれも、米国や英国など諸外国に遅れをとっている。
今後は、官民一体の取り組みが必要である。
東京都盲ろう者支援センター
前田 晃秀 センター長
利用者の生活は大きく改善
東京都は1996年に盲ろう者に対する支援として、「通訳・介助者派遣事業」をスタートさせました。盲ろう者が他者とコミュニケーションを取るには通訳・介助が必要なため、派遣事業は欠かせません。
事業が進むに従って課題も見えてきました。そもそも、通訳・介助を受けるには、盲ろう者自身が他者の意思を受け取れるコミュニケーション能力を身につけなければなりません。そこで私たちは、関係機関に盲ろう者への訓練の必要性を訴えてきましたが、なかなか実現しませんでした。
ところが、2008年に都議会公明党のバックアップを受け、09年5月に「東京都盲ろう者支援センター」の設立にこぎ着けることができました。支援センターでは、盲ろう者のコミュニケーション訓練など中心に多角的な事業を展開しています。
センターの誕生で、盲ろう者の生活は大きく改善されましたが、まだ一部の人にしか利用されていません。
都内にいる約2000人の盲ろう者のうち、センターの支援につながっている人は、わずか120人弱にとどまっています。残り1800人を超える方が適切な支援や訓練が受けられず、いまだに社会の中で孤立しています。
例えば、市区町村と連携して盲ろう者を把握し、支援につなげるような取り組みが必要だと思います。行政がきめ細かな配慮を広げるためにも、都議会公明党のさらなる支援をお願いします。
公明新聞:2013年6月11日(火)付掲載