次期衆院選に向け、民主党がマニフェスト(政権公約)の策定作業に着手すると報道されている。「財政再建に軸足」とか「実現性を重視」などと伝えられているが、あまりにも国民をバカにした話ではないだろうか。
 民主党が政権を奪取した2009年マニフェストこそ、現在の民主党政権の政策基盤であり、その十分な検証なくして、国民に新たな公約などできるわけがない。
 この時のマニフェストには、「中学卒業までの子ども1人当たり月額2万6000円の子ども手当」「高速道路料金の原則無料化」「ガソリン税などの暫定税率を廃止し2・5兆円の減税」「年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金を実現」「後期高齢者医療制度の廃止」など、華々しい政策がずらりと並んでいた。「八ッ場ダムの建設中止」も注目された。
 だが、12年度予算政府案や税制改正大綱で明らかになったように、これらの公約はことごとく守られず、実現の見通しも立っていない。八ッ場ダムは建設継続が決まった。09年マニフェストは完全に崩壊したのである。
 これは、野党が実現を妨害したのでも、東日本大震災で財源が不足したためでもない。初めから財源の裏付けがなかったのである。民主党幹部は、マニフェスト実現に必要な総額16・8兆円を生み出す方法を問われると、「予算の組み替え」や「歳出削減」で可能だと主張。消費税について、当時の鳩山代表は「当面の間は5%で十分まかなえるという試算が出ている。4年間は増税の議論をする必要はない」と豪語していた。
 しかし、政権を奪取して、初めて財源確保が困難だと気付いたのか、民主党は10年の参院選マニフェストで、「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」との一文を盛り込んだ。通常の政策経費さえ調達が困難になり、16・8兆円の財源を必要とするマニフェストなど実現不可能であることを事実上、認めたものだ。
 現在、民主党内では「消費税増税派」と「マニフェスト順守派」が対立しているようである。前者は、マニフェストの破綻を知りながら、それを正式に認めない点で不誠実である。後者は、マニフェストの崩壊を理解できない点で、政治家としての判断力に疑問符が付く。
 虚構の公約で国民を欺いた民主党の責任は重い。マニフェストとともに政権の正当性も崩壊していることを強く指摘しておきたい。(1/12付公明新聞3面 主張)

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名古屋市 木下優
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