「みやぎSNS相談」実施中! 今年度から私立学校も対象に
いじめ認知件数 「重大事態」も公表すべき
本日の河北新報で報道されておりましたが、宮城県教育委員会が昨年4月から10月までの公立小中高における、いじめ認知件数(仙台市分を除く)を公表しました。それによると小中は前年同期に比べ、認知件数が約4割も減ったとのことです。
これまで県教委では、いじめ認知件数の多さについて、些細ないじめも見逃さずに認知している現われとして肯定的に捉えている、と説明してきました。その観点からすると、いじめ認知件数の大幅な減少は、「認知力の低下」ともとれるので、果たして「いじめが少なくなっている」と手放しで喜んでよいものなのかは疑問が残るところです。
一方で、県教委がいまだ、いじめの「重大事態」の発生件数を公表していないのは残念です。私は以前から、いじめによる痛ましい事件の再発防止のために、県内で、いじめの重大事態がどれだけ発生しているか、またどのようなケースが発生したのかを、個人情報の保護には十分に配慮しながら公表し、教育現場等でしっかりと情報共有すべきだと訴えてきました。
仙台市などで相次いでいる事件を見ると、早期に重大事態として対応されていれば、命が失われるという最悪の事態には至らなかったのではないかと思われるケースがほとんどです。県教委は「公表は慎重であるべき」との立場をまだ崩してないようですが、重大事態に対する社会の理解の促進のためにも、できる限りの情報公開をしていくべきだと思います。
横浜市では、福島県から避難した男子生徒がいじめられた問題を教訓として、独自の公表のガイドラインを策定して、重大事態の発生件数や調査結果を公表しています。そうした取り組みも参考にしながら、宮城県や仙台市においても、いじめについては認知件数のみならず、重大事態についても情報公開を進めていくべきだと思います。
(以下は、平成28年9月定例会一般質問の議事録です)
議長(中山耕一君) 六番遠藤伸幸君。
◆六番(遠藤伸幸君) 御答弁ありがとうございました。大綱二点目のいじめ不登校対策について、再質問させていただきますが、重大事態を公表しないというのは、これは文科省の指示で公表できないということなんですが、これは改めて文科省に問い合わせて公表できるかどうかということを問い合わせたのでしょうか。
○議長(中山耕一君) 教育委員会教育長高橋仁君。
◎教育委員会教育長(高橋仁君) これは文科省の指示というよりは、文部科学省の考え方を踏まえて、県としても慎重に対応すべきだというふうに考えているところでございます。個別のさまざまな事情がある中で、件数についても極めて少ない場合もありますので、そういったことも含めて、県としては国の考え方を踏まえて県の判断で、今のところは公表は慎重であるべきだというふうに考えているということでございます。
○議長(中山耕一君) 六番遠藤伸幸君。
◆六番(遠藤伸幸君) わかりました。私の調べでは少なくとも、岩手県、千葉県、神奈川県、兵庫県、京都府でこの重大事態については、県で何件あったかということを公表しております。例えば神奈川県では十四件あったと公表しておりまして、この公表に際して特に問題はなかったという回答も得ております。壇上でも触れましたけども、京都府の教育委員会ではことし上半期に一件、不登校の重大事態が発生したということ発表しました。京都府の教育委員会の担当者にこれなんで公表したんですかと私問い合わせましたが、確かにこの数字を公表することによって、マスコミからどこなんだと、だれなんだという追及を受けると、その意味では職員はその対応で大変になるというデメリットは確かにあると。しかし、この重大事態の件数は命にかかわる情報だから公表しているんだと。こういう重大事態が起こったということを、府民の皆さんに知ってほしいということで公表しているということでございました。文科省の考え方がそうかもしれませんが、県としてこの重大事態を公表するかしないかというのは、私は本当に今、このいじめによりまして、県内で自殺の事件も発生しておりまして、これは非常に大事な問題だと思っております。それでこの県で重大ないじめの事件というのがどれだけ発生しているのかというのは知りたい、県議会議員として知りたいという情報でございまして、これが現状では全く、県で重大事態が起きているのか起きていないのかわからないという状態で、そして議論もできないという状況でございまして、こういうことはやはりできる限り、それは当然プライバシーには配慮しなければいけませんが、この情報についてはなるべく公表して、県民の総力を挙げてこのいじめによる重大事態をなくしていくんだという事が大事だと思いますが、県知事はいかがお考えですか。
○議長(中山耕一君) 知事村井嘉浩君。
◎知事(村井嘉浩君) おっしゃってることの趣旨はよく理解できます。先ほど私も答弁いたしましたけれども、いじめというのは許されるべきものではないと。非常に大きな問題だというふうに思っております。そういった意味から、今、教育長からも答弁ありましたけれども、今のお話も受けとめて、しっかりと御検討いただきたいというふうに思っております。
○議長(中山耕一君) 六番遠藤伸幸君。
◆六番(遠藤伸幸君) ありがとうございます。本当に県として主体的に検討をしていただきたいというふうに思います。また重大事態に陥った案件でも、教員の皆さんの努力によって解決に向かったというケースもあると思います。そういったケースをしっかり情報共有して、再発防止に役立てていくべきではないかというふうに思いますので、そういった観点からも御検討いただければというふうに思います。
仙台 いじめ母子心中事件について
仙台市泉区で昨年11月に発生した小学2年生の女子と母親の無理心中事件。いじめを苦に、またしても尊い命が失われてしまったことは悔しく残念でなりません。事実調査のための第三者委員会の設置が検討されるようですが、報道を見る限り、学校や市教育委員会、市が「いじめ防止対策推進法」やガイドラインに即して対応していれば、母子の命は、守られていた命だったのではないかと思わざるを得ません。
19日に記者会見した父親によれば、昨年5月に娘へのいじめを知り、何十回も学校や市教委に相談したものの、十分な対応が取られなかったそうです。8月には娘が「しにたいよ しにたいよ いじめられて何もいいことないよ」というメモを書いています。やがて娘は不登校になり、母子二人きりで家で過ごすようになり、11月29日に最悪の事態へと至ってしまいました。
文科省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、 被害児童生徒や保護者から、「いじめにより重大な被害が生じた」という申立てがあったとき(人間関係が原因で心身の異常や変化を訴える申立て等の「いじめ」という言葉を使わない場合を含む)は、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても、重大事態(生命心身財産重大事態)が発生したものとして報告・調査等に当たること、とされています。
また、いじめが原因とみられる不登校が発生した場合も、重大事態(不登校重大事態)として速やかに学校から学校の設置者を通じて、首長まで報告することが義務付けられています。
この女子の場合は、「死にたいよ」というメモを書いた時点で「生命心身財産重大事態」として捉えるべきであったし、少なくとも学校を休みがちになった時点で、「不登校重大事態」として、市長まで報告がなされるべきでした。
しかし、愕然とすることに、22日の郡和子市長の記者会見によれば、市長がこの母子のことを知ったのは、事件が発生した後だということです。本来であれば、事件発生前から「重大事態」として市長が把握しておかなければならない案件でした。そして、学校や市教委の対応が不十分だと被害者が訴えているのであれば、解決に向けて市長が指導力を発揮すべきでした。そのために郡市長は、市長直轄の「いじめ対策推進室」を設けたのではなかったのでしょうか?
重大事態として報告されてしかるべき案件が、報告がなされず放置され、適切な対応につながらない。そして被害者は孤立し追い詰められていく。これまで市立中学校で相次いだいじめ自死事件と同じ構図だと思います。
重大事態として報告がなされていれば、例えばスクールソーシャルワーカーを派遣し、家庭訪問をして注意深く見守るなどの対応も取れたはずです。心ある市長だったら、報告がないことに怒りを爆発させて、関係する職員を厳しく処分するのではないかと思います。
今回の学校や市教委、市の対応については厳しく問いただされるべきだと思います。そして重大事態の発生報告がなされなかった場合、つまり重大事態が隠ぺいされた場合の懲戒処分の在り方についても、改めて検討しなければならないのではないか、と思います。
11月定例会が開会 議員提案「いじめ防止対策推進条例」が成立
本日、宮城県議会11月定例会が開会し、これまで特別委員会で取り組んできた「いじめ防止対策推進条例」が全会一致で可決・成立しました。
いじめを社会総がかりで防止していくために、「いかなる理由があってもいじめは許されるものではない」との理念のもと、県教委や学校、教職員、保護者、地域、企業等の責務や役割を定めると共に、相談体制の整備などの基本的施策も盛り込んだ総合条例です。今後はこの条例を基に、いじめ防止対策の実施計画が作られ、毎年度、議会に対策の実施状況等の報告もなされることになります。
また今日は、これまで2年間、議長を務められた中島源陽議員が退任され、新議長に佐藤光樹議員(塩釜市選出)が選出されました。県政史上最も若い議長とのことです。県民に信頼される議会をめざして、新議長のもとで引き続き議会改革に取り組んでまいります。
本会議終了後には、公明党県議団で村井知事に対し、来年度の政策要望を行いました。
宮城県いじめ防止対策推進条例案を全会一致で決定 特別委
昨日、宮城県議会いじめ・不登校等調査特別委員会が開かれ、議員提案条例「宮城県いじめ防止対策推進条例案」について、委員会として全会一致で決定しました。
議論が続いていた基本理念については、結果として、「いかなる理由があってもいじめは許されるものではない」との文言を残すことで、全会派が合意することができました。
いじめによる痛ましい事案を再び起こさないために、県議会としても役割を果たそうとの決意でスタートした条例づくり。特別委員会の開催は今年17回を数えました。そもそも、いじめとは何か。県や関係者、保護者の果たすべき責務は。罰則は必要か。市町村との役割分担は。情報公開のあり方はなど、多岐にわたる論点で真剣に議論を戦わせました。
議論が紛糾し、鋭く対立したこともありましたが、いじめ防止は社会総がかりで取り組まなければならない問題であり、多数決はなじまないとの思いがありました。最終的に全会一致で条例案を決定できたことは非常に良かったと思います。
条例は11月定例会で成立する予定です。
宮城県いじめ防止条例案 「基本理念」について
宮城県議会いじめ・不登校等調査特別委員会で制定を目指している、いじめ防止条例について、基本理念に掲げた「いかなる理由があってもいじめは許されるものではない」という文言が議論を呼んでいます。6月29日から7月20日まで実施した条例骨子案のパブリックコメントでは、この基本理念について、否定的な意見も多く寄せられました。
基本理念は条例の核となる部分であるため、委員間でもかなりの時間を費やして議論をしてきたところですが、県民の皆様とともに今後もさらに議論を深めていくことが大切であり、パブリックコメントを寄せて頂いた皆様には心から感謝を申し上げたいと思います。
この条例案は、2013年に制定された「いじめ防止対策推進法」を根拠法としています。同法では第4条で「児童等は、いじめを行ってはならない」と、「いじめの禁止」を明確に定めています。つまり、いじめは法的に禁止された行為なのです。いじめは、「心身に苦痛を感じさせる行為」と幅広に定義されているため、どの子どもにも起こりうるものとして捉えることは重要です。しかし、他者に苦痛を与えることは人権の侵害であり、どんな理由があろうと決して許されないものです。以前、委員会の参考人質疑に来てくださった、いじめ自死遺族の女性は、「いじめは、生きる力を奪う『虐待』と同じだと考えるべきだ」と強調されていました。
しかしながら、世間では、「いじめなんてよくあることだ」という声や、「いじめに負けない強さが必要だ」とか、「いじめは、いじめられる側も悪いのだ」などというような言動が横行しているのが現実です。以前、ある市の教育委員会が、市内の全ての児童生徒を対象に実施したいじめに関するアンケートでは、小中学生の約3割が、「いじめられる人も悪いところがあると思う」と答えたとのことです。こうした「いじめられる側も悪い」「理由があれば、多少のいじめは許される」というような“被害者責任論”が根強く残っていることが、いじめはあっても仕方がないという空気を生み、被害者を追い詰め、重大な事態を引き起こす背景となっているのではないでしょうか。
こうした問題意識から、現在3年目となる宮城県議会いじめ・不登校等調査特別委員会では、早い時期から「いかなる理由があっても、いじめは行ってはならないということを社会にしっかりと発信するべきだ」という意見が出され、昨年の委員会の報告書の中にも、「いかなる理由があっても、いじめをしてはならないとの児童生徒の意識を一層高める」との提言が盛り込まれました。
この文言を条例案の基本理念に盛り込むことについては、委員の中でも賛否両論があり、激論にもなったところですが、最終的には、「児童生徒をはじめ、学校及び教職員、保護者、行政機関、県民、事業者は、いかなる理由があってもいじめは許されるものではないという幼少期から大人までの共通認識のもと、互いに連携協力しあい、いじめ問題を克服することを目指し、県民一丸となって、いじめを生まない環境づくりに取り組まなければならない」との表現で固まりました。
この基本理念に対し、パブリックコメントでは、「いかなる理由があってもいじめは許されない」という高圧的で不寛容なメッセージを条例に明記することは、逆効果であり、かえって学校現場の委縮を招き、いじめの陰湿化や隠ぺい化を助長する、などという反対意見が出されました。また、「いかなる理由があっても」という表現は、教育活動の制限につながり、いじめ防止への県民の共同の取り組みにとって、「百害あって一利なしだ」とまで言い切る主張もありました。
しかし、いじめ防止への強いメッセージを発することが、かえっていじめの陰湿化や隠ぺいを招くという主張は根拠が薄いと言わざるを得ません。なぜなら、「宮城県いじめ防止基本方針」で、「学校の教育活動全体を通じ、全ての児童生徒に『いじめは決して許されない』ことの理解を促し」と定めているように、教育委員会も、学校も、「いじめは許されない行為である」との指導を行っているからです。この考えを強調することが、いじめの隠ぺいや陰湿化につながるというのなら、ただちにそうした指導をやめなければいけなくなるのではないでしょうか。
私は逆に、まだまだ、「いじめは決して許されるものではない」というメッセージの発信が弱いと思っています。子どもに対してというよりも、大人に対して働きかけが足りないと思います。学校では、一生懸命、いじめは許されないという意識啓発を行っているのです。それを社会全体へと広げていくことが、いま政治や行政が果たすべき役割ではないでしょうか。そしてそれが、いじめ問題の解決に力を尽くしている学校現場を励ますことになるのではないかと思います。
また、「強いメッセージを発することは逆効果」という主張には、これまで県内で相次いで発生したいじめ自死事案への深い反省や、危機感があるのか疑問に思います。
仙台市の中学校で発生したいじめ自死事案は、いじめが陰湿で見えなかったから発生した、のではなく、教員が、生徒や保護者から何度も相談を受けるなどして、いじめを認知していたにも関わらず、適切な対応が取れなかったために発生したものです。
なぜ、適切な対応が取れなかったのか。「教員の多忙化」を挙げる向きもありますが、一番の要因は「いじめに対する認識が甘かった」「子どもの命を守ることに対する緊張感が欠けていた」ことだと私は思います。その意味で、条例で毅然としたメッセージを発し、社会の意識変革をさらに促していくことは重要であると考えます。それは、いじめ自死事案の風化を防ぐことにもつながると思います。
また、パブリックコメントの中には、「いじめの定義は広範であって、軽微な行為でもいじめに該当する行為がある。すべてのいじめを許されない行為であるとするなら、教員の指導が一律に厳しいものとなり、いじめの早期発見を妨げるのではないか」という意見もありました。
いじめは、「いじめと感じればいじめ」であり、暴力や集団での無視などといった悪質なものから、冷やかしやからかいといった行為も含む広い概念です。自覚がないままいじめてしまっていたということは誰もが経験することでしょう。しかし、軽微ないじめであっても、放置すれば深刻な被害を引き起こすことはあるのであり、「どんないじめも許さない」という認識を持つことは大切だと思います。
その上で、当然、いじめた子どもに対する指導はケースバイケースで柔軟であるべきであり、いじめという言葉を使わなくてもよいし、やさしい言葉で指導をしても良いと思います。条例案は、教員によるそうした指導の工夫を否定するものではありません。教員には日々、いじめ対応スキルの向上に努めてもらうことが重要ですが、その原動力となるのは、「いじめから子どもを守る」という強い決意だと思います。そして「いかなる理由があっても、いじめは許されるものではない」という基本理念は、その決意を引き出す基盤になると思います。
以上、長くなってしまいましたが、宮城県いじめ防止条例の基本理念についての私の考え方を書かせて頂きました。
。私は、「いかなる理由があっても」は、被害者の側に立つ言葉であり、いじめられている子どもたちを勇気づける言葉でもあると思います。この条例が、どこまでも、いじめの被害者に寄り添い、命を守るための条例であるために、「いかなる理由があってもいじめは許されるものではない」という基本理念は大切にしたいと考えています。
なお、北海道が2014年に制定した「北海道いじめの防止等に関する条例」では、第4条で「児童生徒は、いかなる理由があってもいじめを行ってはならない」と定めており、「いかなる理由があっても」という表現は、宮城県だけが採用しているものではないということを付言しておきます。
宮城県いじめ防止条例骨子案 パブリックコメント実施中
宮城県議会の議員提案条例「(仮称)宮城県いじめ防止等に関する条例」の骨子案について、7月20日までパブリックコメントを実施中です。ぜひご意見をお寄せください。
「いじめは、いじめを受けた児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであり、その対応は難しく、子どもたちを取り巻くいじめの状況は複雑化、深刻化しております。
そこで、宮城県議会では、いじめ防止等に関して、基本理念を定めるとともに、県の責務等を明らかにし、いじめ防止等のための施策を、総合的かつ実効性のあるものとして推進し、もって、児童生徒の尊厳を保持するとともに、健やかに成長できる環境を社会全体で形成することを目的とする「(仮称)宮城県いじめ防止等に関する条例」の制定に向けた検討を進めております。
つきましては、この条例の骨子案に対し、広く県民の皆様からの御意見を募集いたします。」
http://www.pref.miyagi.jp/site/kengikai/izime-jyourei-kosshi.html
宮城県いじめ防止条例 骨子案を全会一致で決定
6月18日から宮城県議会6月定例会がスタートしました(7月4日まで)。18日は、本会議に先立ち、私が副委員長を務める「いじめ・不登校等調査特別委員会」(吉川寛康委員長)が開かれ、(仮称)宮城県いじめ防止等に関する条例の骨子案を全会一致で決定しました。
骨子案は、いじめによる痛ましい事件の再発を防ぐために、いじめ問題の専門家や被害者家族、市町村教育委員会、PTA、教職員組合など多くの関係者からの意見を聞きながら、真摯な委員間討議を重ねてまとめたものです。
特別委員会の開催は、今年に入ってから13回を数え、時には紛糾し激論となる場面も何度かありましたが、委員長はじめ各委員が合意をめざして努力した結果、最終的には全会派一致のもと骨子案がまとまりました。
骨子案の基本理念では、「いかなる理由があってもいじめは許されるものではない」とうたい、“いじめは、いじめる側が悪いのであって被害者には非はない”という考え方を明確にしました。その共通認識のもとで、「県民一丸となって、いじめを生まない環境づくりに取り組まなければならない」と、学校関係者だけでなく、社会全体で、この問題に取り組むことの重要性を示しました。この基本理念にのっとり、県や県教育委員会、学校、教職員、保護者の責務だけでなく、いじめ防止対策推進法には規定のない県民や事業者等の役割も定めています。
このように、骨子案では、いじめの「未然防止」へ強いメッセージを発する一方で、いじめの早期発見や重大化を防ぐ方策にも力点を置いています。
これまで全国各地で相次いだ自死などの重大事案では、教員がいじめの相談を受けても、「これくらいはいじめではない」と軽視したり、多忙を理由に放置したり、あるいは情報を共有しなかったりして、組織的な対応が取られなかった結果、事態が深刻化したケースが多く見られました。
そこで骨子案では、「学校及び教職員は、児童生徒がいじめを受けていると思われる時は、児童生徒の気持ちに沿いながら他の業務に優先して組織として迅速に対応する」などと、教員による「抱え込み」を防ぎ、組織対応の徹底を求める規定を盛り込みました。
また、県教育委員会や県立学校に関わる基本的施策としては、教職員のいじめ対応力の向上のための研修の実施や、子どもが相談しやすい環境の整備、学校と福祉機関や警察との連携強化、SNSによるいじめの防止への取り組みなど、すでに取り組んでいる対策も含めて、いじめの未然防止や早期発見、適切な初動対応などに必要な施策を網羅しました。
さらに、重大事態が発生した場合の対処として、学校や第三者委員会による速やかな調査の実施はもちろん、被害者側への適時・適切な情報提供や、社会に対する正確な情報発信など、これまでの重大事態の教訓を踏まえた規定を盛り込んでいます。
ただ、県条例のため、基本的には県立学校を対象にした条例となり、市町村立学校への影響は限定的です。なぜなら、地方自治法や地方教育行政に関する法律に基づき、県は市町村の判断を過度に制約できないこととなっているためです。
現在、仙台市が独自のいじめ防止条例を策定していると伺っていますが、今後、他の市町村でも県条例を参酌した条例制定や基本方針の改定を期待したいと思います。
県条例の骨子案は、今後、県議会ホームページで公表し、6月29日から7月20日まで県民の皆様のご意見を募ることにしています。
村田町、塩釜市の「いじめ防止対策推進条例」を調査
去る5月10日、副委員長を務める宮城県議会いじめ・不登校等調査特別委員会で県内視察を行い、「いじめ防止対策推進条例」を定めている村田町、塩釜市の取り組みを調査しました。
県内では、塩釜市、村田町、松島町の3市町がいじめ防止対策推進法に基づく総合条例を制定しています。
このうち村田町では、①いじめ防止に関する各組織の役割を明確化する②議論の透明性を確保する③町民に広く周知する効果がある――などの理由から平成27年3月に条例を制定しました。
担当者は「いじめ防止対策推進法では自治体は基本方針を定めることになっているが、社会全体でいじめを防止するという法の趣旨からすると、条例の形で基本方針を定めることがふさわしいと思った」と説明。条例制定の効果としては、「町の対策を推進する上での明確な根拠ができたことが様々な場面で役立っている」と話していました。
一方、塩釜市は、平成28年4月にいじめ防止対策推進条例を施行しました。同条例では、市立小中学校に対して、いじめ防止基本方針に加えて具体的な年次計画を定めるよう義務付けており、学校現場で実効性ある取り組みが行われるよう工夫がなされていました。
また、有識者などからなる「塩釜市いじめ防止等対策委員会」を設置し、毎年2回、市のいじめ防止対策の課題などについて答申を受け、市の施策に反映させるという素晴らしい取り組みも行っていました。
村田町も塩釜市も、いじめ防止について真剣に取り組んでおり、とても参考になりました。視察では、現在検討中の県のいじめ防止条例についても様々なご意見を頂きました。今後の議論にしっかりと生かしていきたいと思います。