人工衛星を活用した水道管の漏水調査 宮城県で全国初の取り組み
老朽化が進む水道管の効率的な修繕・更新をめざし、宮城県11市町と福島県の相馬地方広域水道企業団は、人工衛星を活用した水道管の漏水調査を共同で実施することになりました。県境を越えた漏水調査の共同実施は全国初の取り組みとのことです。
本日、県庁で村井知事や市町の首長らが出席して行われた基本合意締結式に私も同席させていただました。
これまでの水道管の漏水調査は、職員が現地で音を聞いて水が漏れているかを判断する方法で、多大な労力と時間がかかっていました。
これに対し、人口衛星を活用した調査は、衛星から地上に放出した電磁波の反射情報などを分析して、漏水の可能性の高いところを特定するもので、早期に多数の漏水箇所の発見が可能です。現在、国内では外資系企業やベンチャー企業など複数の事業者がこの技術を持っています。
この漏水調査を全国に先駆けて導入した愛知県豊田市では、調査期間を5年から7か月に短縮し、調査にかかる総コストも10分の1に抑えるなど、大きな効果を上げています。
ただ、この先進的な調査を一つの自治体で実施するのは財政的に難しいため、宮城県では県主導のもと複数の自治体が共同発注することにしました。県内では、気仙沼、白石、角田、登米、栗原、富谷の6市と、村田、柴田、丸森、大郷、涌谷の5町が手を上げ、また、隣接する福島県相馬市などに給水する相馬地方広域水道企業団も参加することになりました。
県によると、共同発注で委託費用の大幅な削減が見込まれるほか、国のデジタル田園都市国家構想交付金も活用でき、1自治体当たりの負担額はかなり少なくなるとのことです。今後、委託事業者を選定し、7月にも漏水調査をスタートする予定です。
きょうの基本合意締結式では、参加した首長から、人口減少や水道管の漏水の進行で料金収入が低迷する中、課題解決につながる今回の取り組みは、「まさに干天の慈雨だ」などと期待する声が相次ぎました。
村井知事は、「将来的な水道事業の広域化に向けて、まずは共同でできることから取り組もうというのが今回の事業だ。成果が上がれば、他の多くの市町村も参加して頂けるのではないか」と話していました。
人工衛星を活用した漏水調査について、私は2022年11月定例会一般質問で導入を提案していました。そのきっかけは、白石市の大森貴之議員から、「公明新聞でも紹介されていた、衛星を活用した漏水調査を白石市で行いたいが、財政的に難しい。県が中心となって共同発注という方式が取れないか」という相談を受けたことです。大森議員は長年、県の水道事業に携わってきた水道のプロです。
さっそく、公明党県議団で、大森議員とともに愛知県豊田市の取り組みを調査し、その際、同市の担当者から「複数の自治体が連携して頼めば費用をかなり抑えられると思う」とのアドバイスを受けたので、議会質問で提案させていただきました。
今回、議会での提案が具体化の運びとなって大変うれしく思います。今後も公明党のネットワークを生かし、水道事業の課題解決に取り組んでまいります。
【2022年11月定例会一般質問】
◎遠藤伸幸
最後に、大綱六点目、水道事業の諸課題について伺います。
近年、全国的に水道管の老朽化による漏水や断水といった事故が多発しています。昨年十月、和歌山市では、水管橋が崩落し、一週間にわたり市内の四割に当たる六万戸が断水。今年五月には、静岡県菊川市で水道管が破損し、三日間約六千七百世帯で断水が発生しました。県内でも、今年七月に仙台市青葉区台原で水道管が破裂し、一時約二万二千二百戸で断水や濁水が発生しました。いずれも水道管の老朽化が原因と見られています。
本県の水道管の総延長一万七千百八十三キロメートルのうち、四十年の法定耐用年数を超過している管路の割合は二三・八%で、全国平均二〇・六%を上回っております。今後、管路の更新を急ぐ必要がありますが、多額の費用がかかることから管路の老朽化や漏水状況を的確に見極めながら、優先順位を決めて投資を行っていかなければなりません。
しかし、管路の状態把握は、一度掘り起こして目視で確認する必要があるなど、時間と費用、労力がかかり、なかなか進まないのが実情です。
こうした中、全国ではAIや衛星画像解析など最新の技術を導入して、課題を克服しようとしている自治体があります。
愛知県豊田市では、全国で初めて人工衛星の画像から水漏れの可能性のある区域を特定する技術を導入しました。
どのような仕組みかというと、まず人工衛星だいち二号が特定エリアの画像を撮影した後、地球に向けてマイクロ波を放射します。マイクロ波は、地下約二メートルの深さまで浸透し、塩素を含む水道水に当たると、他と異なった反射が得られます。
その反射特性を撮影画像に登録し、配管データなどと組み合わせてAIで解析することで、漏水している場所を推定できるという技術です。
同市では、令和二年九月から令和三年四月にかけて、この技術を使った漏水調査を実施し、延長二千二百十キロメートルの水道管から漏水可能性区域を二百五十七キロメートルに絞り込み、うち二百五十九か所で漏水を発見しました。
漏水調査の期間は、五年から七か月に短縮され、コストも約十分の一に削減したとのことです。現在は、日本のベンチャー企業とともに、より画像解析の精度を向上させた漏水調査の実証実験を行っております。
先日、公明党県議団でもこの取組を視察しましたが、既に五十を超える自治体がこの技術の導入に向けて予算化を進めているとのことでありました。
同市の担当者によりますと、複数の自治体が連携して依頼すれば、費用は更に抑えられるとのことであります。
本県でも、漏水調査の効率化や管路の更新、修繕の効率化に向けて、市町村と連携して県の広域水道のみならず、市町村の水道事業にこの技術の活用を検討してはどうかと考えますが、御所見を伺います。
◎公営企業管理者(佐藤達也君) 大綱六点目、水道事業の諸課題についての御質問にお答えいたします。
水道は県民生活を支える重要な社会資本であり、特に広域水道において漏水が発生した場合にはその影響が広範囲に及ぶことから、県ではこれまで東日本大震災の教訓を踏まえ、水管橋の耐震化や伸縮可とう管の補強を重点的に実施してきたほか、将来到来する管路の本格的な更新を見据え、埋設管路の調査に今年度から着手するなど老朽化に起因する漏水等の防止にも努めているところであります。
一方、市町村においては、耐用年数を超過した水道管が膨大な延長になるにもかかわらず、漏水調査は人手による音聴調査、音を聞いて漏水の有無を判定する調査のことですが、この音聴調査が主流であることから多くの労力と時間を要しており、漏水箇所の早期把握と管路更新の効率化が大きな課題であると認識しております。
御提案のありましたAIや衛星画像解析などを活用した漏水調査等については、新しい技術であることから先進事例の状況やその有効性・効率性等を把握するとともに、市町村とも情報を共有しながらその活用について検討してまいります。
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