仙台 いじめ母子心中事件について
仙台市泉区で昨年11月に発生した小学2年生の女子と母親の無理心中事件。いじめを苦に、またしても尊い命が失われてしまったことは悔しく残念でなりません。事実調査のための第三者委員会の設置が検討されるようですが、報道を見る限り、学校や市教育委員会、市が「いじめ防止対策推進法」やガイドラインに即して対応していれば、母子の命は、守られていた命だったのではないかと思わざるを得ません。
19日に記者会見した父親によれば、昨年5月に娘へのいじめを知り、何十回も学校や市教委に相談したものの、十分な対応が取られなかったそうです。8月には娘が「しにたいよ しにたいよ いじめられて何もいいことないよ」というメモを書いています。やがて娘は不登校になり、母子二人きりで家で過ごすようになり、11月29日に最悪の事態へと至ってしまいました。
文科省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、 被害児童生徒や保護者から、「いじめにより重大な被害が生じた」という申立てがあったとき(人間関係が原因で心身の異常や変化を訴える申立て等の「いじめ」という言葉を使わない場合を含む)は、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても、重大事態(生命心身財産重大事態)が発生したものとして報告・調査等に当たること、とされています。
また、いじめが原因とみられる不登校が発生した場合も、重大事態(不登校重大事態)として速やかに学校から学校の設置者を通じて、首長まで報告することが義務付けられています。
この女子の場合は、「死にたいよ」というメモを書いた時点で「生命心身財産重大事態」として捉えるべきであったし、少なくとも学校を休みがちになった時点で、「不登校重大事態」として、市長まで報告がなされるべきでした。
しかし、愕然とすることに、22日の郡和子市長の記者会見によれば、市長がこの母子のことを知ったのは、事件が発生した後だということです。本来であれば、事件発生前から「重大事態」として市長が把握しておかなければならない案件でした。そして、学校や市教委の対応が不十分だと被害者が訴えているのであれば、解決に向けて市長が指導力を発揮すべきでした。そのために郡市長は、市長直轄の「いじめ対策推進室」を設けたのではなかったのでしょうか?
重大事態として報告されてしかるべき案件が、報告がなされず放置され、適切な対応につながらない。そして被害者は孤立し追い詰められていく。これまで市立中学校で相次いだいじめ自死事件と同じ構図だと思います。
重大事態として報告がなされていれば、例えばスクールソーシャルワーカーを派遣し、家庭訪問をして注意深く見守るなどの対応も取れたはずです。心ある市長だったら、報告がないことに怒りを爆発させて、関係する職員を厳しく処分するのではないかと思います。
今回の学校や市教委、市の対応については厳しく問いただされるべきだと思います。そして重大事態の発生報告がなされなかった場合、つまり重大事態が隠ぺいされた場合の懲戒処分の在り方についても、改めて検討しなければならないのではないか、と思います。