大石久和、藤井聡著『国民国家の現象学「国土学」』を読みました。
「国土学」とは、すべての国家が存続するために求められる「国土」のあり方を考えるものであり、国民国家という現象を解釈するものであるこから、「国民国家の現象学」と呼ばれている。
また、本書では、我々の国民国家は、「自然の脅威」、「外敵の脅威」、「自滅の脅威」の三つの脅威に晒されており、その脅威から国民国家を護ることができなければ、その存続すら危ぶまれてしまう。したがって、「住処」である国土それ自身が、それらからの脅威から護ることができるものであることが不可欠であり、そのあり方を考え、それを実現していく実践を考えるのが国土学としている。
しかしながら、現在わが国では、この三つの脅威から日本を護る国土をつくりあげる努力を十分に行っていない。具体には、「自然の脅威」については、首都直下型地震や南海トラフ地震の脅威を乗り越えられるだけの強靭な国土であるのか。「外敵の脅威」については、周辺の離島に対する不測の侵略行為からわが国を守り抜くための国土利用が進められているか。「自滅の脅威」については、国土のポテンシャルを余すことなく発揮できるインフラ整備などの公共投資は不十分で、都市偏重のインフラ投資が、日本のマクロ経済のデフレを導き、格差の拡大をもたらしているのではないか、といった状況がある。このような危機に至った要因として、私たち日本の国民国家が住処としている「国土」を蔑ろにし続けてきたことを挙げている。そうした状況において、本書では、国民国家の「インフラ」(下部構造)である国土と、その「スープラ」(上部構造)である経済、文化や社会的諸制度との間で循環し続けることそれ自体が「国民国家の生のプロジェクト」であること、また、国土は、単に生命を維持するためだけではなく、故郷であり祖国という形で「精神の大地」となるべき存在であることを明示したうえで、我々が「行き続ける」ためには、いかなる国土が求められているのか、そして、今日の日本の繁栄と生き残りのためにいかなる「国土」が必要とされているかを明らかにしている。