【公明16年6月号】
(対談)持続的な経済発展へ日本が牽引力に~デフレの完全脱却に向け、規律ある財政拡大を~(京都大学大学院教授 藤井聡/公明党全国議員団会議議長 太田昭宏)
これからの日本の経済政策のポイント(「所得ターゲット政策」、「デフレ脱出速度の確保」、「公共事業投資(防災・減災対策、ストック効果を生むインフラ整備)」、「緊縮思想からの脱却」⇒「日本の持続的な経済発展=世界経済の牽引力」)が示されており大変興味深く読みました。要旨はつぎのとおり。
日本経済の現状については、アベノミクスが奏功し、株価や雇用は好転、税収も増加し、日本経済はデフレを脱却しつつある。(太田)しかしなながら、消費税の8%への引き上げによる個人消費の減速、上海ショック(昨年の上海市場の急落)を契機とした世界経済の冷え込み、という二つの懸念材料があることから、デフレからの完全脱却のためには、物価ターゲットから所得ターゲット(「国内総生産(GDP)600兆円の実現」)への転換が鍵であり(藤井)、アベノミクス3本の矢のうち、第2と第3の矢の、財政政策と成長戦略(太田)に加え、「脱出速度の確保」が欠かせない。(藤井)
特に、財政出動には、福祉や教育に加え、「公共事業投資」(防災対策への投資と未来のためのインフラ形成)に力を入れるべきであり、そのためには、公共事業に対する今までの認識を見直したうえで、防災・減災対策を国の最重要政策とし、さらに、「フロー効果」にとどまらない「ストック効果」が期待できるインフラ整備を「選択と集中」で進めるべきである。また、この「ストック効果」こそが、これまで見落とされてきた経済成長のエンジンである(太田)。 〔*インフラ効果:インフラが完成することで、その地域の生産性を向上させたり、生活の質を向上させる効果を長期的に生み出すもの〕
さらに、防災・減災やインフラ整備が進まなかった要因に緊縮思想をあげ、これからは、過剰な財政拡大と過剰な緊縮主義の両方を避けたバランスをどう取るかが問われ、さらに、ゼロ金利を活用し、政府も民間も今こそしっかり未来の投資を行なうべきである(藤井)。
また、成長戦略の柱として、人口減少の中で強い日本経済をつくるためには、交流人口や海外から人や物を呼び込む観光が重要である(太田)。
最後に、規律ある形で財政拡大を展開し、財政健全化も達成して、GDP600兆円を実現できれば、世界の国々のモデルケースにもなるだろう(藤井)。 伊勢志摩サミットでは、G7が世界経済の荒波を鎮めることができる中心的なプレーヤーに日本が位置づけられることが大事である(太田)、と「日本が世界経済の牽引力に」と期待を寄せている。