東海大学非常勤講師青木泰樹氏の著者「経済学者はなぜ嘘をつくのか」を読みました。筆者は、経済学の主役が、現実重視のケインズ経済学から論理重視の供給側の経済学に交替したことにより、経済の語源である「経世済民」の意に反する方向へ進んでいるとしている。また、こうした現状においては、既存の経済学の枠を超えた「経済社会学」が必要であるとし、そのよりどころとして「社会は価値観の異なる異質的主体から構成されていること、経済は内部に変動要因を抱えていること、経済現象は必ず社会現象(非経済現象)に作用すること、逆に社会現象もまた経済現象に反作用すること」というシュンペーターのヴィジョンをあげている。本書は、2部構成になっており、前半部分では、経済学者の理論や統計指標を吟味しながら、経済学者を信用してはならない理由について、後半部分では、筆者の提唱する経済社会学に基づき、効率至上主義の誤り、財政再建に関する新たな見解の提示、リフレ派の論理の誤謬、アベノミクスの変遷などについて解説している。最後に「建設国債を財源とした積極的な財政政策を実行する」という政府へ具体的な政策提言を行っている。その理由として、内憂外患を抱える災害大国日本において、安全、安心、安定に対する国民の巨大な需要、すなわち国土強靭化のための需要が存在しており、政府がそうした需要を責任を持って満たしていくことは、将来の不可実性の除去につながり、民間経済を活発化させるとし、さらに、財政政策、経済政策の観点からもその有効性について、わかりやすく解説している。昨今、熊本地震など想定外の災害が発生しており、国土強靭化を積極的に推し進めるうえで、後押しをしてくれる書であると感じます。