コロナ禍はなぜ起きたか
本日付け公明新聞の四面の土曜特集では、表題の「コロナ禍はなぜ起きたか」と題して、問われる野性動物とヒトとの関係について、生物多様性の保全に詳しい、名古屋大学大学院の香坂玲 教授に取材しておりますので、抜粋して紹介致します。
⚫ 新型コロナウィルス感染症のパンデミックを、生物多様性の観点から捉える事が重要との事だが。
教授 : 地球は46億年という長い歴史の中で様々な環境の変化を重ねてきた結果、数千万種と推定される多様な生物が生息し、相互に関係する環境をつくりあげてきた。疫病や気候の激変も含む環境の変化は、多様な生物が存在する事に影響している。ウィルスは自らが増えていくために宿主の存在が必要で、長期的には弱毒化するものも多い。私たちは食料や創薬などで生物多様性の恩恵を享受している。一方、ウィルスとの共存を余儀なくされるものでもある。農耕を始めた時点で、水路や食料を備蓄する場所から発生した蚊やハエなどが媒介して、ウィルスに感染する事もあれば、ネズミやコウモリ、渡り鳥、家畜などの動物とヒトにも感染する人獣共通のウィルスも多い。新型コロナウィルスの場合、コウモリのほか、絶滅危惧種に指定されるウロコが漢方薬の原料になるなどの理由で密猟されているセンザンコウを媒介し、ヒトに感染したと見られている。自然界には野性動物に由来する未知のウィルスが、約170万種あると推定される。新たな感染症のパンデミックが起こり得る可能性は常にある。また、ウィルスの感染が加速度的に広がるきっかけを、開発などの人間がつくってしまっている。
⚫ 人間の活動が問題視されるのはなぜか?
教授 : 未開地の開発を進めた結果、野性動物の生息域を狭め、接触することの無かった野性動物の生息域に人間が入り込んでいる。例えば、湿地は10万種以上の淡水生物をはじめ、爬虫類や両生類、渡り鳥の生息域として必要だ。しかし、その85%以上が消失し農地などに変えられている。これにより、人間が居住する場所に渡り鳥の飛来が増え、家畜が鳥インフルエンザに感染するリスクが高まっている。森林は陸地の約30%を占め、陸域生物種の約8割が生息しているが、1990年から30年間で178万平方キロメートルも失われ、農地への転用や都市開発などが行われている。また、住む場所を奪われた野性動物は、わずかに残された生息域に集まる事で「密」になり、人間と接触しやすくなっている。今後は、ウィルスの感染リスクの管理という観点からも、野性動物の生息域を保護し、生物多様性を保全する取り組みが国際的に注目される。中国南部や途上国では野性動物がタンパク源の食用として売買されている。アフリカでは、狩猟で捕獲した野性動物をその場で食べたり、売ったりする「ブッシュミート」が問題となり、国連でも議論されてきた。野性動物の売買などが行われている場所で、動物からウィルスが感染するリスクの啓発や規制をする取り組みの強化が国際的に議論されている。新型コロナウィルスの影響で来年に延期となったCOP15(様々な生物や、その生息域の保全などを目指す生物多様性条約の第15回締約国会議)が中国の昆明で開催され予定で、ここで野性動物の取引の問題に関して、どういう対策が打ち出されるのかが注目される。
⚫ ほか、どのような取り組みが求められるか?
教授 : 「ワンヘルス」(One Health)という考え方で、保険衛生上の課題を、ヒト、動物、環境が相互に関係しているものとして捉える。かつては、ヒトの病気は医師、動物の病気は獣医師と、それぞれ個別に活動していた。「ワンヘルス」では、医学、獣医学、更に環境学の専門家が緊密に連携して取り組むことが求められている。それぞれが連携することで、動物からヒトに、いつ、どこで、どのようにウィルスが感染したのかを早期に探知する仕組みの構築も可能となる。人獣共通感染症に対処するには、こうした連携が必須である。仕組みづくりに向けて、WHO、国連食糧農業機関(FAO)、国連環境計画(UNEP)、国際獣疫事務局(OIE)、生物多様性条約事務局(CBD)などの国際機関が取り組みを開始している。ウィルス感染症のパンデミックの防止には、「3密」の回避や、治療薬やワクチンの開発など、人間に注目した対策だけでは不十分である。ワクチンが開発され終息出来たとしても、ウィルスと共存しなければならないので、私たちの状況は変わるわけではない。野性動物の生息域の保全に加え、家畜の福祉にも目を向けた飼い方の改善も必要だ。人間の「食」の在り方の見直しも重要である。環境への配慮の観点から、地域特有の季節や伝統を再評価した「食」と、それを支える「風土」も重視すべきである。
と結ばれています。
ヒトによる環境破壊がもたらした野性動物の生息域の剥奪は、未知のウィルスを人類に近づける結果を招いたと拝察します。これからの今一重の環境への配慮と、ウィルスとの共存に向けた防疫管理、日常を暮らすための「新しい生活様式」の定着を目指し、持続可能な環境の構築に向けて、取り組まなければいけないという事を、あらためて学びました。













