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公明党目黒区議会議員 関けんいち

岐路に立つWHO

2020年8月2日

昨日付け公明新聞四面は、表題のテーマで国際政治学、グローバル・ヘルス・ガバナンスを専門とする東京都立大学 詫摩佳代教授に取材記事が掲載されてますので、抜粋して紹介致します。

⚫ WHOの新型コロナへの対応をどう評価するか。

教授:感染状況の判断と、それに応じた勧告を行う国際保健規則に定められた役割は、比較的忠実に果たしてきた。一方、テドロス事務局長は1月28日の訪中以後、繰り返し中国政府の対応を称賛したが、国際機関として慎重さに欠ける行動だったと言わざるを得ない。かつてWHOが2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS(サーズ))発生時、公然と中国を批判したことで意志疎通が困難になった苦い経験を意識したからだと言われている。しかし、結果として1月時点でウイルスがこれ以上中国から流出しないとの誤ったメッセージを世界に発信し、更に、各国を連帯させるべき時に米中対立を激化させる一因をつくってしまった。

⚫ 脱退宣言をした米国の狙いは。

教授:トランプ大統領の最優先目標は大統領選に勝つことだ。選挙への悪影響を避けるため、米国内における感染再拡大の責任をWHOと中国に転嫁しようとしている。脱退宣言は選挙を意識したパフォーマンスだろう。ただ、WHOは季節性インフルエンザワクチンの推奨株を選定するなど米国も恩恵を受ける事業を多数手掛けている。このため、共和党内部でも脱退は長期的な国益を損なうとの見方が強い。

⚫ WHOが本来担うべき役割とは。

教授:WHOの目的は「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」(WHO憲章第1条)であり、肥満の定義や受動喫煙対策など、実現に向けた様々な基準を設定する役割がある。また、保健衛生インフラの整備に関する加盟国間の格差を是正するため、国際協調を主導し必要な支援を調整する。設立時は、特に途上国への支援が重視されていた。

⚫ 過去の感染症対応では成功例も多い。新型コロナはなぜ収束の見通しが立たないのか。

教授:SARSや09年の新型インフルエンザ、14年のエボラ出血熱などはWHOの対応が奏功し、被害を抑えた事例と言える。一方、今回はウイルスの性質が従来と異なり、無症状でも感染が広がるため感染者の見分けがつかない。このため、途上国だけでなく一定水準の保健衛生インフラが整備されている先進国でも感染が拡大した。また、米国が国際社会に背を向けている最悪のタイミングで新型コロナが発生したことで、国際協調が困難な状況にある。エボラ流行時は、当時のオバマ米大統領が国連安保理の開催を訴え、エボラを「国際社会の平和と安全の危機」と位置付ける決議が採択されるなど、各国の連携にリーダーシップを発揮した。しかし今回は、米中あるいは米ロの対立により安保理が全く機能していない。

⚫ WHOの課題は。

教授:今回明らかになったのは、WHOの権限が非常に制限されているということだ。感染症対応は初動が重要だが、WHOは強制力を持たないため、加盟国の自発的な報告を基に動くしかない。もし中国・武漢で感染が確認された当初にWHOが強制的に現地に入って自ら調査していれば、現在の状況は異なっていたかもしれない。初動対応だけでも権限強化は不可欠だ。また、他の機関との連携も強化する必要がある。今や感染症は世界経済や人々の日常生活にも影響を及ぼすグローバルな危機であり、WHOが単独で対処するのは困難だ。

⚫ 国際社会はどう対応していくべきか。

教授:中国は米国に代わって国際保健を主導することへの意欲は非常に強い。ただ、香港への統制強化や南シナ海の領有権主張などに対し警鐘を強める国々も多く、国際社会のリーダーを務めることは難しいだろう。こうした状況下で国際協調を構築するには、米中などの大国に次ぐ日本や欧州各国、オーストラリア、カナダ、インドといった、いわゆるミドルパワーの国々を中心とする連帯が欠かせない。これらの国々が、戦後の国際保健で重視されてきた人権の尊重や透明性の確保といった価値観を、いかに維持できるかが国際協調の可否を左右することになる。

⚫ 日本が果たすべき役割は。

教授:日本は対立する米中の間で双方と適度に良い距離を保っている。この関係性を生かし、両国を国際協調に引き付けるような働きかけが期待されている。トランプ大統領が再選されれば、米国は一段と国際社会から離れてしまうことが予想されるが、そうであっても協調の大切さを粘り強く説き続けなければならない。中国に対しても、先に挙げた国際保健における価値観の意義を継続して訴えていくべきだ。また、今回のコロナ禍を契機として、感染症に対する日常的な備えの重要性が明らかになった。それには、従来、日本が重視してきた日米安保や自由貿易協定などの枠組みに保健協力の考え方を取り入れていくことも必要だ。大きな視点で他国と保健協力に取り組むことが確かな備えとなる。日本は国民皆保険制度を実現したまれな国として、全ての人が適切な保健医療を受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」の達成を目指し、途上国などにおける保健インフラの整備に長年取り組んできた。手を洗う水に不足する国もある。そうした人々への支援を一層充実させていくことが求められる。

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