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公明党目黒区議会議員 関けんいち

グリーン・リカバリー

2020年6月23日

昨日付けの公明新聞五面に新型コロナウィルスの感染拡大で冷え込んだ経済の復興と、地球温暖化問題の解決を同時に目指す「グリーン・リカバリー」について特集しています。その背景や政策を実行するに当たっての課題、日本が果たす役割などについて、国連気候変動枠組み条約の主席交渉官の一人として地球温暖化交渉に尽力されました東京大学公共政策大学院の有馬純 教授に取材しておりますので、抜粋して紹介致します。

⚫ なぜ、グリーン・リカバリーが欧州を中心に注目されているのか。

教授 : 地球温暖化対策に熱心な欧州各国は、コロナ禍に伴う経済の低迷によって、脱炭素社会に向けた取組みの優先順位が下がる事に強い懸念を持っている。ロックダウンにより経済活動は大きく減退し、国際エネルギー機関(IEA)の直近の見通しでは、世界のCO2排出量は前年比で8%減少する第二次世界大戦以降で最大の下げ幅だ。ただ、景気が回復すれば間違いなくリバウンドする。欧州の環境活動家は「ただでさえ環境の優先度が下がっているのに、CO2の排出量が更に増加したら大変だ」と危機感を強めており、グリーン・リカバリーという議論が前面に出てきている。

⚫ コロナ対策と同様に温暖化対策でも、国が厳しい規制と巨額の財政出動をすべきとの意見もあるが。

教授 : コロナは自分も含め、身近にいる人たちを命の危険に晒す。だから欧州の人たちは不自由があってもロックダウンに耐えた。また、ロックダウンにより感染者を管理する事で効果が目に見えた。それに対し温暖化は、1ヵ国が一生懸命取組んでも、他国が温室効果ガスを排出し続ければ焼け石に水だ。それに、効果が見えるのにも時間がかかる。パリ協定の「1.5度目標」達成には、30年まで毎年7.8%のCO2を減らし、50年までに排出量実質ゼロを達成しなければならない。コロナで大きな経済被害が出た今年と同じくらいの削減を、10年以上続けなければいけない事になる。コロナと同様に政府が強権を発動するのは、国民の理解が得られないのではないか。経済や雇用に比較的短期で好影響が出て、環境面でも効果がある施策を中心に実行すべきだろう。

⚫ 日本では、どのようなグリーン・リカバリーの取組みが考えられるか。

教授 : 一つは電力ネットワークの強化だ。日本は北海道ー東北など地域間の送電線連携が弱い。関東と関西で周波数が違う課題もある。それらが風力発電のように適地がある程度偏っている再生可能エネルギーを、全国の消費地へ送電する際の制約になっている。送電網インフラが老朽化しているので、財政出動で再整備を一気に進めるという手はあるだろう。電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、双方向の電力融通を可能にする「スマートグリッド」の導入も合理的だ。そして温暖化を完全に解決するには、排出されたCO2を回収し、地中深くに貯留する技術(CCS)や水素技術などの開発を進めないといけない。民間企業はコロナ禍で体力が弱っているので、政府が思いきった減税措置や、将来を見据えてハイリスクな技術開発に力を入れる検討をしても良い。

⚫ 「ウィズコロナ」と呼ばれる世界で、持続可能な社会に向けた取組みはどう変わるか。

教授 : 世界が直面する課題は温暖化だけではない。SDGsは気候変動のほか、健康、雇用、貧困など計17ある。コロナの脅威が続くと、気候変動の優先順位が下がるのは避けられない。コロナ前よりも経済と環境の両立を目指す政策のハードルは上がっている。20~30年後を見据えれば、環境保護分野への大胆な投資が経済を強くするという意見もあるが、問題はそこに至るまでの経路だ。例えば、石炭の高効率燃焼技術の輸出をやめたからといって発展途上国が安価な石炭の利用をやめるとは思えない。OECD加盟国が輸出をやめたとしても、中国がシェアを奪うだけかも知れない。コロナ禍で化石燃料の価格が下がっていて、再エネの競争力は相対的に低下している。経済の落ち込みを鑑みれば、再エネ導入のために電気料金をこれ以上引き上げるのは容易ではない。日本の電気料金はアジアの中で最も高く、更なる引き上げは国際競争力にも悪影響になる。コロナ禍でテレワークが普及したように、今後さらに電化が進む可能性があるが、この観点でも電気料金の引き上げは不人気だろう。

⚫ 今後、脱炭素社会への移行に影響を与える出来事はあるか。

教授 : 11月の米大統領選挙でバイデン候補が当選すれば、米国の環境政策は大きく変わる。パリ協定への再加入や化石燃料の規制に取り組むと思われる。米国が環境問題に意欲を持つようになれば、脱炭素社会を目指す欧州の頭痛の種が消える。とはいえ、化石燃料の輸出禁止などの政策が実際に行われるかは、米経済の状況を見据えないといけない。米国民が温暖化対策に支払う許容額で最も多い回答は1人当たり年12ドルだ。パリ協定の「2度目標」達成には、その80倍以上の負担が必要と試算されており、国民の理解を得ながらどこまで施策を進められるかは不透明だ。

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