感染者1000万人超、しのぎ削るワクチン開発、治療薬普及への取り組み
米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計によると、新型コロナウィルスの全世界の感染者が日本時間28日、累計で1,000万人を超えました。中国湖北省武漢市政府が昨年末に原因不明の肺炎患者発生を初めて公表(後に新型コロナ感染と確認)してからおよそ半年が経過しました。死者は50万人に迫ります。米国やブラジルなど南北米大陸を中心に感染拡大のペースが加速しており、パンデミック収束の目処は立たない状況が続きます。ヨーロッパでロックダウンなどの対策により感染が収束に向かい始める中、新たな流行の中心地となったのが米国。感染者は約251万人、死者は12万人超といずれも世界最多となっています。
一方、新型コロナウィルスの感染や重症化を防ぐワクチンの開発に向け、世界で100種類を超す研究が進んでいます。臨床試験(治験)は欧米や中国が先行していましたが、国内でも大阪大学と創薬ベンチャーが30日から始める予定です。世界保健機関(WHO)によると約140種類のワクチン開発が進行し、うち16種類が治験で安全性や有効性を確認する段階に移っています。ウィルスの感染力をなくした「不活化ワクチン」などの従来型だけでなく、「遺伝子ワクチン」と呼ばれる新しいタイプの開発も進んでいます。「遺伝子ワクチン」は、複製したウィルスのDNAやRNAの一部を体内に取り込んで免疫を作る仕組みで、ウィルス本体を培養する必要がないため製造期間やコストを抑えられる利点があります。これまで実用化に至った例はないですが、ウィルスが変異しても迅速に対応できる可能性があります。日本で30日から治験が始まるワクチンもこの仕組みを使います。大阪大学と同大発の創薬ベンチャー「アンジェス」が開発し、大阪市立大附属病院で30人を対象に実施。10月には治験の参加者を約500人に増やすなどして実用化を急ぎます。そして、来年3月までに20万人分の生産体制を整えると言います。ただ、ワクチン開発には通常5~10年かかります。エイズウィルス(HIV)のワクチンも30年以上研究が続いていますが、未だ実用化されていません。
新型コロナウィルスのワクチンや治療薬を低所得国や貧困地域を含め世界各地に普及させるための国際会議が27日、欧州連合(EU)欧州委員会などの主催でオンラインで開かれ、約40カ国・地域や企業、財団が計61億5000万ユーロ(約7,400億円)の資金支援や協力を約束しました。資金支援のうち49億ユーロは、欧州委員会と欧州投資銀行(EIB)が融資と保証を担います。欧州委員会は5月4日にワクチン普及への国際支援の働きかけを開始。日本からも含めこれまでに累計159億ユーロの支援を取り付けました。日本は今回、取り組みへの協力を改めて表明しました。