2/8(金)~2/10(日).滋賀県大津市で開催された【アメニティーフォーラム17】in大津プリンスホテルに参加してきました。

このフォーラムは、

障害のある人と家族が快適で豊かな地域生活を送ることができる社会づくりを目的に開催され、ハンディのある人の豊かな地域生活を支援するために必要なサービスとそれを提供していく仕組みづくりを提案するもの

です。かねてより一度参加したいと念願しており、日程が厳しい中ではありましたが強行軍で参加。フォーラムは朝から深夜まで延々と開催されましたが、私は朝から夕まで。以下、まとめとして参考になった事柄を列記しますφ(..)

<2月8日(金)>

1.基調講演1 社会的包摂をどう実現するか 新しいビジョンへ

宮本太郎(北海道大学大学院法学研究科教授)

●「気合い社会」=「自立・自主」への危惧

●忙しすぎる「正規」と家族をつくれない「非正規」の分断

●1997年以降、共働きが専業主婦を上回る

●これまでの社会保障

=①22歳までは教育 ②出入りしにくい生活保護 ③人生後半の社会保障

☛ニーズ決定型の「殻の保障」

●これからの社会

=包摂型社会=トランポリン型社会

☛ニーズ表明型の「翼の保障」

☛①保育 ②参加保障 ③能力開発

●給付付き税額控除の意味=労働ボーナス 米では頻回に実施

●社会的包摂の家は「4LDK」=

①仕事部屋 =雇用

②勉強部屋 =教育・学習

③休息のための寝室 =体と心のケア

④家族と過ごすリビング =家族

⑤仕事から離れる待機室 =失業・離職

●5つの部屋を行き来できることが大事。行き来できる廊下を担うのは「社会的企業」

◎社会的包摂の理念をどのように浸透させ展開するか。社会的企業をどう普及させるか。現状、社会的企業についての松山市の所管は地域経済課である。

2.SHOUGAI 新しい芸術・文化の創り方

(1) 講演 創造と欠損との関係

パトリック・ジジェ(仏・ナント市 国立コンテンポラリーアーツセンター リュー・ユニック芸術監督)

●「リュー・ユニック」は「他にない場所」の意。ビスケット工場を改修した

(2) ライブパフォーマンス鑑賞

◎まさに、“いのちの力”を爆発させたパフォーマンス。

◎遠慮や逡巡や人目を打ち破っての演技。

 

<2月9日(土)>

3.シンポジウム 相談支援を充実強化させる5つの提言

阿萬哲也・西川宜宏・玉木幸則・荻野ます美・財前民男

コーディネータ:加藤恵・又村あおい

●改正障害者自立支援法は「つなぎ法」なんかではない。実質的に機能していく

●障害者自立支援法の改正によりH24年4月から相談支援の充実強化のための施策が進められているが、その相談実績はとても充実と言える状況ではなく、前年度実績を下回る自治体すらある。原因は何か

  • 自治体の財政難を理由に、委託費が削減されているから?
  • 66万人のサービス利用者の支援計画は無謀だったから?
  • 人材がいないから?
  • 地域移行に向けて、病院・施設に意欲がないから?

●相談支援はアドボケータ(代弁者)

●相談支援専門員が入ると、一日サービスでぎっしり埋まる。「家族の介護力を奪わない」「家族が将来をイメージできる」計画をお願いしたい。親が心配なのは将来のこと。利用調整は親でもできる

●(相談で)「紙に落とす、計画に落とす」なんて言い方は、しないでほしい。心の声を聴いてほしい。普通、知らない人に、信頼できない人に相談なんてできない。それでも相談している心境を分かってほしい

●皆さんには、「デイリープラン」「ウィークリープラン」「マンスリープラン」ありますか? 計画で埋まった生活をしてますか? 「計画を立てなければいけないから立てる」ではダメ。当事者に説明できるかどうか

●ソーシャルワークで大事なのは、地域を変える熱意があるかどうか

●相談支援は“権利行使支援”

◎私自身がグループホームのサービス管理責任者や【就業・生活支援センター】の支援員を務めていたことから、相談支援の今後についてはいつも気にかかるところ。

◎保護者パネリストの言葉を重く受け止めたい。障がい者福祉における“オーダーメイド”の伝統が継承されることを望みたい。

4.日本の地域包括ケアの目指すもの ~若者に期待すること~

辻哲夫(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

●「2025年問題」=(第1次ベビーブーム世代・団塊の世代)後期高齢者の急増

  • 都市の急速な高齢化と多死社会の到来
  • 長寿化 ⇒誰もが人の世話になる
  • 認知症高齢者の増大 ⇒誰もが障がい者になる可能性
  • 寝たきり・引きこもりによる「廃用症候群」を防ぐ施策・まち
  • 「動く」「食べる」が大事

●地域包括ケアシステム

=医療・予防・介護・生活支援・住まいが日常生活圏(30分で駆けつけられる圏域)にある

  • 生活の場に医療が来る。高齢者は外来が困難
  • 朝・昼・晩にスポットでケアがある
  • 家で死ねる
  • 高齢者の就労は3人で1人役で構わない
  • 在宅医療の拡充が不可欠

☛そのために、在宅主治医を中心にした“医師のグループ化”とバックアアップ体制が不可欠。

●急速な後期高齢者の増加は政策のパラダイム転換を求めている

新しい地域社会への転換=医療機能の分化と連携 + 地域包括ケア

①繋ぎ目としての在宅医療の普及

  • 在宅医療連携拠点の在り方がポイント
  • 地区医師会と市区町村の役目が重要

②24時間在宅介護看護サービスの普及

  • 定額報酬24時間在宅ケアシステムの成否がカギ
  • 市町村がビジョンを示す必要(公募政策):地域ケア推進拠点計画

●誰もが「地域の中で一緒に住むのが当たり前」という人は増えていく、増えるべき

◎2025年をどう迎えるか。自治体の果たす役割は大きいと自認。

5.生活保護制度の見直しと生活困窮者対策

村木厚子(厚生労働省社会・援護局長)

(1) 全国の生活保護受給実態(平成24年10月速報値)

  • 2,142,580人
  • 1.68%
  • 1,564,301世帯

●CWにヒアリング「受給者で本当に保護が必要な人の割合はどのくらい?」

  • 受給者の多い都市⇒8~9割
  • 受給者の少ない都市⇒99%

(2) 世帯類型別構成割合

①高齢者世帯 43.5%

②母子世帯  7.4%

③傷病・障害者世帯 30.6%

④その他   18.5% (10年前8.3%)

(3) 扶助費目割合

①医療費半分

②生活費3割

(4) 生活保護法改正案のポイント

①不正・不適正受給(0.4%?)の対策の強化

☛地方自治体の調査権限強化

☛就労指導の強化 等

②医療費扶助の適正化

☛医療機関が受給者に後発医薬品使用を促すことの法制化

③生活保護受給者の就労・自立の促進

☛就労自立給付金(積立)の創設 等

(5) 生活困窮者対策検討事案

●自治体とHWが一体となった就労支援の抜本強化

☛自治体にHW常設窓口の設置。ワンストップ型支援体制の整備

●多様な就労体験等の場を提供する事業の育成支援

●最適な支援策を早期かつ包括的に提供する相談支援事業

(6) 生活保護基準の見直し

●消費実態と現行基準の乖離を、年齢別・世帯人員別・居住地域別等で検証

◎生活保護の課題は進展する高齢化の問題であると改めて知る。

◎予期せぬ災害、突然の経済危機、気候変動に伴う急激な環境悪化など、先進国、途上国を問わず、さまざまな形で襲いかかる“突然襲いくる困窮の危険”。その困窮の危険から“人間の尊厳”を守る“セーフティネット(人間の安全保障)”の確立は世界的な課題。日本の生活保護制度などの困窮対策は、後世に残すべき大事な仕組みだと実感。

◎市民に一番近い行政単位である自治体の果たす役割がますます重要と知る。

6.障害者福祉にむけての政治の役割

~政策のプライオリティと財源の確保について~

衛藤 晟一(自)・高木美智代(公)・山本ひろし(公)・福岡たかまろ(自)・大西健介(民)・初鹿あきひろ(元)

コーディネータ:野澤和弘

(高木美智代(公))

  • 差別禁止法について、今国会での成立は困難と思われるが提出はする
  • 秋の成立を目指す。議員立法ではなく、閣議決定で出す方向

(山本ひろし(公))

  • GHの整備目標98,000人(?)に対し現在8万人にまで拡充

◎障がい福祉分野においては、政局ではなく、超党派で推進されていることが確認された。

◎社会保障改革の前進には“大人の、分別ある野党(当時の自公)”の協力が大きかった。

7.鼎談 2014年は、糸賀一雄生誕100周年です。

~この間、「福祉の思想」は育まれたか?~

吉村民樹・渡邉光春・島崎春樹

コーディネータ・笠原吉孝

ベヴァリッジ 1879~1963:「ベヴァリッジ報告」。英「福祉国家」の実現に多大な影響

バンク-ミケルソン 1919~1996:「ノーマライゼーション」を提唱

糸賀一雄 1914~1968:「近江学園」を創設し日本の福祉を先導。「この子らを世の光に」

●3人は違った立場で第2次世界大戦を経験。「戦後世界の再生」を目指す戦い。その思想や理念は70年経った今でも、社会保障や福祉の基本

◎西の糸賀、東の三木。実践の糸賀、理論の三木。かつて、東大脳研の三木安正が設立した「旭出学園」に勤めていた私としては、この滋賀フォーラムに参加して、この鼎談を受講でき、感慨ひとしお。

◎糸賀イズムが継承され、時代に即応して展開されているものの一つが本フォーラムであると思う。

 

<2月10日(日)>

8.新しい障害支援区分のこと

福岡寿・高森裕子・友利久哉

コーディネータ:片桐公彦

●「障害程度区分」から「障害支援区分」への変更

●「障害程度区分」の課題

  • 知的・精神領域の方の区分は、支援が難しいケースでも低く出る傾向
  • 一次判定から二次判定への変更率が知的・精神では40%以上

☛程度区分の尺度自体の精度への疑問

●「障害支援区分」への変更

  • 変更率は縮まるか
  • 判定項目はどのように変わるか
  • メンタルな支援の必要度の重みをどう尺度に表すか

◎三菱総合研究所の協力を得て、障害程度区分のロジックやシートが構築されていたのを初めて知る。

◎支援度が正しく測られる程度区分が確立されることを望みたい。併せて、適時見直し可能であることが重要であると感ずる。

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松山市 吉冨健一
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