アートがつなぐ
第6回地域回想法サミットの続きです。
次の講演は「アートと回想法」と題し、一般社団法人アーツアライブ代表理事 林 容子 氏のお話です。
園芸の次はアート(芸術)が人に与える効果のお話。
芸術と福祉をつなぐきっかけになったのは自身の短期入院時にCHARTSに参加したことです。その後高齢者福祉施設で活動を開始した。
入所者のお部屋に伺い、楽しい思い出をたくさん語ってもらいまして、その思い出をその人の部屋の障子に学生たちと一緒に描きあげました。
入所者からきれいな提灯の思い出が語られたことから、子どもが提灯を持っている絵を描いたが、その横に「今の自分を書いてほしい」と言われ、自分の子どものころを見守る今の自分という構図の絵が出来上がりました。
別の入居者と紙粘土で工作をしました。
何が思い出に残っているものはと聞くと、若いころは人参農家であったため、人参を思い出し作りました。
一緒に作った介護者の人参には葉っぱがなかったので、「人参には緑色の葉っぱがついているもの」と言って葉っぱ付きの人参を作った。
その後、それを袋に入れて大事に持ち歩いていたそうです。
このような活動をしていく中で、少子高齢化、人口減少社会で地域包括ケアを進める上でアートに何ができるのかを考えアートリップを始めた。
アートを見ながら高齢者が旅をするという事でアートリップです。
実際に美術館へ行き絵の前で感じたことなどをお話していただく実践を国立西洋美術館で毎月開催している。
また、介護現場に作品を持ち込んで行う訪問事業も行っている。
ご主人が認知症というご夫婦がアートリップに参加して得た効果では、被介護者と介護者が同じ空間でアートを通じて同時に喜びを得ることができたり、介護者がいつも鋭く観察する目で被介護者を見ていたことに気が付き、これまでよりお互いに会話を楽しめるようになったという声が寄せられている。
また、若いころに絵を描くのが好きだった方は、そのことを思い出して絵を描くようになった。
大事なのは質問して聞き出すのではなく、話をしたくなるような場を作ることである。
アートと認知症、うつ病予防効果の医学的検証では2013年11月から2014年1月までの3か月間に65歳から88歳までの高齢者76人を対象に行った結果、うつの改善、短期単語記憶力の改善、歩行スピードの改善、心理状態の改善、脳の後帯状皮質の領域の活性化が認められている。
施設において壁画の制作に取り組んだ。絵を描いてもらっても、最初は委縮し小さい絵であったが、だんだん自信がついてきて大きな絵を描けるようになる。それぞれの思い出の絵を大勢で一枚の壁画として仕上げていく中で、表情も変わっていく。終了後のアンケートでは「新しいことに挑戦できた」「物事に集中する時間が作れた」「散歩しながらいろいろ発見できるようになった」との声が寄せられ、実際にその後自治会の役員になった方もいて、多くがコミュニケーション能力を高めることができた。
これからは医療介護現場におけるアートの価値の伝達やコーディネートする人材育成が必要になる。
というお話でした。
式次第を見てアート(芸術)と回想法がどうにも結びかずにいましたが、お話を聞いてスッキリしました。
創作活動だけではなく、芸術作品を活用した回想法に強く共感いたしました。
ここまで講演を聞いて一つのキーワードに気が付くと思います。
そうです。「コミュニケーション」です。
認知症予防にはこの「コミュニケーション」が非常に大事であることがわかります。
コミュニケーションをとることが苦手な人も、コーディネーターとの信頼関係でどんどん自信を取り戻していく様子が講演からもわかりました。
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