この年末、歴史的な快挙が訪れる。安倍晋三首相は27日、米ハワイを訪問して、オバマ米大統領と現職最後の首脳会談を行い、ともに真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊する。
私は事前に安倍首相から「アリゾナ記念館を訪ねます」と聞いたとき、「素晴らしいことです」と直ちに返した。
日本軍に撃沈された戦艦アリゾナの上に建てられた記念館は、犠牲者を慰霊する象徴である。日米の現職首相と大統領による訪問が、戦後71年目にしてようやく実現する。両国のわだかまりが溶けていく機会になればいい。
今回の訪問の意義を、前向きに捉える必要がある。
安倍首相が語るように、1つは、犠牲者の慰霊であり、不戦の決意を未来に示すことである。過去の謝罪ではない。
2つ目は、日米の和解の価値を世界に発信することである。太平洋で激しく戦った両国の和解だからこそ、歴史的にも重要だ。
3つ目は、日米同盟の世界における役割を確認することである。
オバマ氏が被爆地・広島を訪問した後の党首会談で、私は「真珠湾を訪れなくていいですか」と安倍首相に聞いた。安倍首相は「核のない世界をともに目指すという意義が薄れてはなりません。犠牲者の慰霊の交換と受け止められることは避けるべきです」と語った。
同じ年に起こったオバマ氏の広島訪問と、安倍首相の真珠湾訪問は、長く歴史にとどめられるだろう。
質問で重ねて事実誤認
先週7日、久々の党首討論が行われた。民進党の蓮舫代表は初挑戦であり、野党第1党の女性代表としても注目された。
ダークな男性陣のなかで、蓮舫氏の白いスーツは一段と引き立ち、キリッとした表情と歯切れのいい言葉遣いは、さっそうした雰囲気を吹き込んだ。
しかし、気負いが勝ちすぎて、やや空回りの観があった。
例えば、蓮舫氏は「有効求人倍率の改善は、東京一極集中で出てきているから地方に仕事がない」と攻めたが、安倍首相に「有効求人倍率が各県で回復しているのは東京一極集中のせいではない。沖縄県をはじめ各県で一倍になったことを喜ぶべき」と返された。
また、蓮舫氏は、私のことについて「キューバのカジノ視察をした」と語ったが、キューバはカジノを禁止している。私はパナマのカジノを視察して感想を述べたのだ。事実誤認が重なっては、興ざめだ。
さらに、「息をするようにウソをつく」と安倍首相にかみついたのも品がない。すぐに、前大阪市長の橋下徹氏から「人格攻撃はよくない。蓮舫さんは二重国籍問題ではバリバリの嘘つきだ」と批判された。
野党第1党の党首として、外交など大局的な政策論争をもっと聞きたかった。