上田 金融円滑化法は、経済がある程度安定した段階で緊急措置をやめて正常な状態に戻すというのが、本来の趣旨だ。現在の経済は徐々に好転しつつある。しかし、急激に終了すれば、中小企業の資金調達に大きな混乱が生じる恐れがあり、経済回復の足を引っ張ることになる。
―中小企業の経営者から不安の声を聞く。
上田 公明党は寄せられた不安の声を重く受け止めて、3月7日、政府に対して法終了後も中小企業、小規模事業者への金融支援に万全の配慮を行うよう申し入れた。具体的には、
(1)今後も金融円滑化法と同等の金融支援を行い、その方針を「検査マニュアル・監督指針」で明確化し担保する
(2)貸し付け条件の変更などの申し込み状況・実施状況を把握し公表する
(3)中小企業の再生支援の充実―などを要望した。
公明党の要望を受け入れた政府は、金融支援に万全を期するための総合的な支援体制を用意した。
―資金繰りなどの金融支援は、どうなるのか。
上田 中小企業や小規模事業者には、貸し付け条件の変更に応じてもらえなくなるのではないかなど、強い不安があるが、当面はこれまでと全く変わらない。中小企業や小規模事業者からの要望については、金融庁が「従来と同じような対応に努めるように」と金融機関に要請しており、周知徹底済みだ。金融庁が金融機関に対して、貸し出し条件変更への対応状況について報告を求め、「貸し渋り」が起きないよう監視していく。
一方、金融機関側にも不安材料がある。法律がなくなったことによって、貸し出し債権に対する評価が変わり、業務の健全性や資産内容などを調べる国の検査が厳しくなるのではないかとの危惧もあった。これは金融機関の融資を萎縮させる原因になりかねない。そこで、「検査マニュアル・監督指針」を改正し、金融機関側の不安にも十分配慮した。
―中小企業の経営力強化は、どうなるのか。
上田 金融支援に最善を尽くしても企業経営が改善しなければ、金融機関からの融資が、いずれ不良債権になりかねない。今回の支援策は、企業の延命が目的ではなく、経営再生のために活用してもらうことが狙いだ。そのため、「経営革新等支援機関(認定支援機関)」などによる経営改善計画の策定支援を充実するほか、政府系金融機関による「セーフティネット貸付」や借換保証制度も拡充することとしている。そして、何より重要なのは、政府が全力を挙げて景気をよくしていくことだ。金融支援だけでなく、経済全体を好転させることが中小企業の活性化に必要不可欠だ。
複数の機関が再生を手助け
そこで、政府は“経営改善支援の応援団”として、税理士など約6700の専門家を認定支援機関に認定。経営改善計画の策定・実行の支援や、経営分析などを強力に手助けする。
また、応援団として、各都道府県の中小企業再生支援協議会と、地域経済活性化支援機構が、資金繰り支援など直接の事業再生や地域経済活性化に取り組む。さらに、同支援機構などが出資する「事業再生ファンド(基金)」による中小企業への出資・融資も促す。
これら積極的な支援策を打ち出しても使い勝手が良くなければ意味がない。政府は、分かりやすいパンフレットの提供などで企業の理解を促していく。
「経営の悩み」を気軽に電話相談
また、経営改善や資金繰りを相談したい経営者のために「中小企業電話相談ナビダイヤル」を設けている。いずれの窓口も、どんな小さな相談でも気軽に利用できるほか、最終的な解決に導くための専門機関の紹介も行っている。