視察報告:2日目 「大仙市空き家等の適正管理に関する条例」
視察2日目は雪深い秋田県大仙市です。昨年1月に施行された「大仙市空き家等の適正管理に関する条例」の制定理由・経緯について調査してまいりました。
豪雪対策で忙しい中でしたが、議会事務局をはじめ担当部署の総合防災課の方々には快く視察を受け入れてくださり感謝しています。
【背景・目的】 近年、急増する空き家の老朽化は都市部・地方都市を問わず全国で大きな社会問題となっています。墨田区においても木造住宅が密集している地域を中心に数年前から防災・防犯の上から大きな問題であると認識していました。これまで会派として課題解決のため、平成22年の第3回定例会で空き家の危険性を指摘し抜本対策の必要性を問題提起。また、昨年の第1回定例会の代表質問で条例の制定を区長に求め、区長から検討する旨の答弁を引き出しました。この間、区議会としても課題意識が共有化され、昨年より条例制定を検討する委員会が設置され、今年の6月の第2回定例会に提出される予定となりました。
こうした背景のもと、墨田区が制定する予定の条例では、行政代執行の条文を入れる予定であることから、唯一、代執行の実績がある大仙市の事例を研究させていただき、要件や手続きなどについて学んでまいりました。
【内容】
①条例制定の背景・経緯について
②本条例の位置づけ
(民事による解決、法令に基づく解決が不可能なものを対象に条例で位置づけ)
③市、市民、地域活動団体、所有者等の役割
④条例の効果
⑤空き家等に関する危険排除フロー図
【参考資料】
①町内会長等へのアンケートおよび集計
②条例制定までのスケジュール
③空き家管理システム
④空き家の危険度判定調査票及び建物の不良半程度の運用についてと不良度判定報告書
⑤行政代執行処理手順およびスケジュール
⑥最近の新聞記事等
⑦昨年1年間の処理項目別実績表
【主な質疑】
Q1、所有者が判明しない空き家についてはどうするのか?
A1、所有者が行方不明、所有者が判明しない物件については、地域住民に大きな影響が懸念される場合のみ囲い込みなど緊急対応をするが、引き続き所有者を徹底調査する。(昨年の事例では、未登記の物件で周辺住民に過去にどんな方が住んでいたか聞き込みをして結果として所有者が判明した例がある)
Q2、昨年の実績で補助金(最大50万円)を活用した解体が11件、自主解体が67件。補助金を活用しない理由は?
A2、補助金の交付には所得・資産に制限があり、対象者のほうが少ない。補助金はあくまで低所得者対策として有効ではあるものの、条例そのもの自体の効果が大きいと認識している。秋田県内の同種の条例を施行している他の自治体の実績をみても条例施行後空き家の除却が大きく進んでいる。
Q3、立ち入り調査の規定があるが(立ち入り調査の条文がない自治体もけっこうあります)、その要件は?
A3、条例の施行に必要な限度において立ち入り調査ができる、いわゆる「できる規定」としている。担当職員が身分証を携帯し所有者または所有者に代わるものの立会いのもと実施している。危険度の判定には必要と考える。
Q4、行政代執行の判断は市長協議となっているが、識者や弁護士などが入っているのか?
A4、入っていない。市長を中心に担当の部課長で協議して判断している(平成17年の合併で特定行政庁になったことで10人規模の建築主事がいて、立ち入り調査や危険度判定なども含め外部に委託せず有資格の職員で対応しているそうです)。実態調査、立ち入り調査を経て危険度判定を行い危険度が高いと判定されたものについてその後の措置を検討。勧告や措置命令、場合によっては公表などの手続きを経て戒告、区長協議を行い代執行という丁寧な手順を踏んでいる。(現在までの実績1件、今後の予定2件)
Q5、空き家台帳を作成する上で固定資産台帳からの情報が必須と思うがどうしているのか?
A5、市の固定資産台帳から目的外使用で情報を入手している。東京都の場合固定資産台帳は都が管理しているので、すでに条例を制定している足立区は「空き家で危険な物件」については固定資産情報を提供するよう東京都に申請していると聞いている。
Q6、空き家管理システムは独自に開発したのか?開発経費は?またその効果は?
A6、税務課の路線価システムを活用して空き家管理システムができないか市内業者に提案し、発注した。開発費は260万円。このシステムのおかげで1400件強の空き家の管理がスムーズかつ効果的にすすんだ(2か月で完了)。地図情報に加え写真情報もあり効果的だと考えている。
Q7、建物に抵当権が設定されている場合、除却がスムーズにいったのか?
A7、今までの事例で土地と建物の所有者が別という例はない。そのため、建物を除却した場合のほうが土地の有効活用が可能になることから、建物の抵当権設定権者からのクレームはない。
【所感】
空き家が街をむしばんでいる深刻な実態を考えると「空き家等の適正管理に関する条例は」対策として最も有効であると考えます。本来は所有者の責任で自主的に解体することが前提であるとして、所有者への動機づけに重きを置く条例が多いのですが、最終的に行政代執行を盛り込む必要性はあるでしょう。墨田区の検討会でもそこまで踏み込んで検討されているそうですが、その前提として内部に入っての立ち入り調査に基づく危険度判定は当然必要であると考えます。こうしたことも今後の検討会で議論されることを望みます。
また、墨田区における空き家の課題は、大仙市など地方都市と異なり、
①土地・建物の所有者が異なるなど権利関係が複雑
②土地をめぐる優遇税制の弊害(土地にかかる固定資産税が200平方メートル未満の場合、住宅を建てると6分の1に軽減される→解体して更地にすると土地の固定資産税が6倍になる)。大仙市でも同様の優遇税制はありますが、増額が都市部と比べ小さいので影響はあまりない
③建築基準法の道路条件を満たしていない道に接している空き家が多い(路地が多いということです)→解体しても新たな建物を建てることができないので売却も難しい
④所有者に低所得者が多く資金を捻出できない
などの特性があります。先行して都内で条例を制定した足立区でも上記のような課題があり、思ったほど空き家の除却が進んでいないそうです。
大仙市の補助金は国の過疎地対策としての補助金を活用しているので墨田区は利用できませんし、固定資産税の優遇税制は区としてどうしようもありません。とりわけ優遇税制に関しては、危険な空き家を税金で温存していることと同じですからこれほど矛盾していることはありません。
こうした点もふまえ、ネットワーク政党の強みも活かし、必要であれば国や都に働きかけていこうと思います。
全国の先行事例をみますと、大きく分けて、防災・防犯の観点から、あるいは空き家を活用したまちづくりの観点から、景観の維持保全という観点から空き家等の対策に係る条例を制定していますが、墨田区においては、喫緊の課題として防災・防犯の観点からということになります。そのうえで中長期的にはまちづくりという視点での空き家の活用も視野に入れた取り組みが求められることになると思われます。また、空き家だけではなく空き地も含め空き家等としている自治体もあります。こうした点も含め、墨田区に最も効果的な条例となるようしっかりと取り組んでまいります。
