令和元年11月7日(木)・8日(金)、鹿児島県霧島市国分体育館で開催されました。
全国から2,000名を超える地方議員並びに関係者が参加をしました。
一日目は基調講演、主報告、一般報告が行われ、2日目はパネルディスカッションが行われました。
「防災とコミュニティ」と題した冊子をもとに抜粋した内容をまとめましたので式次第にそって掲載しました。
第一日 11月7日(木)
9:30
開会式 全国市長会 会長 相馬市長 立谷 秀清
開催市市長挨拶 鹿児島県霧島市長 中重 真一
来賓祝辞 鹿児島県知事 三反園 訓
9:50基調講演
「鹿児島の歴史から学ぶ防災の知恵」
志學館大学人間関係学部教授 原口 泉
- 南九州のシラス文化と自然災害
南九州の江戸時代の災害の歴史を振り返ってみると、「洪水→台風→虫害→疾病」のリサイクルを繰り返し、さらに火山爆発、地震、津波が被害を増幅させた。
ガマとは鹿児島と沖縄の方言で、「河の縁の洞窟を意味する。」「ガマ文化」は災害常襲地帯の南九州に生まれた独自のシラス文化と言える。
- 門割制度という防災農法
「門割制度」とは、江戸時代の土地制度のことで耕地を割り当て、一定期間ごとに割り変えをする制度である。防災の観点からみると、とても理に適うものである。災害によって作物の収穫ができなかったり、減少したりという被害がでた場合、その被害が地域社会にとって壊滅的な打撃とならないようにするための知恵が門割制度にはあった。
- 人災から歴史資料を守る
歴史資料は災難を免れて残された国民の財宝といってよい。文書、記録書の保存を特定の人にだけ頼ってよいのだろうか。百年後の国民に今の歴史を伝えるために公文書館を設けるのは、私たちの責任であろう。
11:00主報告
「霧島市の防災の取組―火山防災―」
鹿児島県霧島市長 中重 真一
- はじめに
平成17年11月7日、1市6町の合併で誕生した霧島市は、鹿児島県本土のほぼ中央部に位置し、人口は県内2番目となる12万5,487人(令和元年8月現在)、面積は603.16K㎡である。
「霧島ジオパーク」として日本ジオパークに認定された。ジオパークとは、地域の重要な地質遺産を保護し、それらを生態環境や歴史、文化などの要素と結びつけながら持続可能な開発を行う地域を指し、地球科学を教育や防災、観光などの様々な分野に活かすものである
- 鹿児島県の自然災害
鹿児島県の本土の大部分は、主に姶良カルデラ
から火砕流として噴出したシラスや溶結凝灰岩によって広く覆われており、このうち火山灰からなるシラスは、水を含むと崩れやすい特性があり、これまでにも梅雨期や台風時期等の豪雨により、がけ崩れ等の土砂災害が数多く発生している。
また、鹿児島県には11の火山があり、全国有数の火山活動が活発な地域と言える。
- 新燃岳噴火における市の対応
平成23年1月26日15:30分頃、新燃岳で本格的なマグマ噴火が起こり、約300年ぶりとなる大噴火となった。
その後、新燃岳は平成23年9月まで噴火を繰り返したことから、観光客の減少など本市の観光にも大きな打撃を与えた。平成30年3月に連続的な爆発的噴火が起きたことから、市では災害警戒本部体制をとり。いつでも安全対策がとれるよう24時間体制で気象台をはじめとする防塞関係機関との連携を図った。現在、新燃岳の噴火は、平成30年6月28日以降観測されておらず、また噴火警戒レベルは平成31年4月5日から1となっており、平穏な状態が続いている。
- 火山防災の取組
- 住民、登山者への安全対策
本市では、新燃岳火口からの距離表示、避難施設や市行政庁舎、救出救助機関である消防・警察の位置・連絡先を掲載した「新燃岳安全対策マップ」を作成し、地域住民等に配布することにより噴火に対する普段からの備えを呼びかけている。
「霧島山(新燃岳)の噴火活動が活発化した場合の避難計画」を作成して市ホームページで公表している。
避難行動支援についても、名簿を作成し、住所や施設入所状況等の把握に努めている。
- 農業被害対策
噴火時には白菜やキャベツ、ホウレン草などへの火山灰の混入や付着などによる多くの野菜被害が懸念され、降灰の洗浄においても多大な労力と用水の確保及び経費が必要となる。また、噴出した火山灰が河川や水路に流入することにより、泥流や白濁化が発生するほか、大量の火山灰が堆積し水路断面を阻害する。
平成30年4月には霧島市の硫黄山が250年ぶりに噴火し、噴き出た泥流が宮崎県や鹿児島県を流れる河川内に流入して水質が悪化し、流域では当年の稲作を断念せざるをえないほどの被害を与える事態となった。本市においては新燃岳の噴火による河川の濁りはあったものの稲作への大きな影響はなかった。
- 観光業界等の被害対策
平成23年の噴火時には宿泊のキャンセルが相次ぎ、噴火がおさまりつつあっても宿泊客の回復は鈍かった。平成23年1月から3月までの観光に関する経済損失額は、19億5,000万円と試算している。平成29年及び翌年の噴火時は警戒すべき範囲と主な観光地との距離関係などの情報の発信に配慮した。このことにより、平成23年のような宿泊の大量キャンセルには至らなかった。
- 自治体間、関係機関等との連携・協力
霧島山を取り巻く5市2町で構成する「環霧島会議」では災害に関する相互応援協定を締結するとともに、警戒範囲を示す図面や火口ごとの災害予測図、噴火で起きる現象、噴火時の心得などを掲載した「霧島山火山防災マップ」を作成し、地域住民に配布するなど県境を超えた広域連携による防災対策を推進している。
また、鹿児島県・宮崎両県の関係自治体や気象台などの関係機関のほか、火山専門家で構成する「霧島山火山防災協議会」では、火山活動状況似関する情報共有や関係自治体の地域防災計画の見直しなどに関する協議を行っている。
- おわりに
今年6月末から7月にかけて九州南部を襲った大雨では、本市においても「レベル4避難指示」を全域に発令する事態となった。
12:30歓迎アトラクション
「鈴かけ馬踊り」
13:10一般報告
「災害とコミュニティ:地域から地域防災力強化への答えを出すために」
尚絅学院大学人文社会学群長 田中 重好
- 注目されるコミュニティ防災、「共助・自助」
1955年の阪神・淡路大震災以降「公助・共助・自助」という言葉が一般的になり、同時に「行政の限界」という認識もなされるようになった。
その後、新しいアイディアを盛り込んだ「災害図上訓練」「防災まちあるき」「防災マップ」「災害時危険個所のチェック」「地区別防災カルテ」など、自主的な防災への取組が進められてきた。
コミュニティを防災に生かすという政策は国内外で進められてきている。だがこうした動き研究上も。実践上も、充分倫理的に整理されているとはいいがたい現状にある。
- コミュニティをどう捉えるか
- コミュニティは社会関係、社会集団、地域的アイデンティティの3つの要素からなる境界をもった住民の塊である。ここでは、学校、企業もコミュニティの一構成要素だ。
- コミュニティは様々な地域の総称である。
- コミュニティは重層的な構造を持っている。
- 個々のコミュニティは個性的で得あり、そのため、コミュニティは多様だ。
- テーマごとにコミュニティを考えることができる。
- コミュニティは行政から「つくることができない」もの、自生的な存在だ。
- 災害時のコミュニティの実態
東日本大震災の中で、コミュニティがどんな役割をを果たしたのか、避難行動と復興について確認。
- コミュニティと避難行動
東日本大震災での津波からの避難においては、コミュニティは重要な働きをした。最近の集中豪雨や台風の際にも、レベル4やレベル5の警報を発令しても、その対象者の一割も非難しないことは、よく新聞などでも報道される。現在、「気象庁の警報発令→警報伝達→避難」という安全確保のシナリオでは不十分である。ビッグデータからは、発災後に、海に向かって多くの人が動いたことが推察される。避難行動は個人ごとの行動ではなく、集合的、あるいは組織的行動である。避難行動は三つの環境、すなわち、物理的な環境、情報環境、組織環境の三つ環境の中で行われる。
(2)コミュニティと復興への取組み
実際には、雲仙普賢岳災害での集落移転や再建、あるいは阪神・淡路大震災での真野のまちづくりなど、コミュニティは「見えない」力を発揮してきた。
- 現在の防災・復興対策におけるコミュニティに関する課題・問題点
現在の日本の防災対策の基本は、1961年に成立した災害対策基本法によって確立した。この防災対策の基本的な考え方は二つの柱からなり、第一の柱は中央集権的な行政中心主義であり、第二の柱は「科学的な知見」に基づいて防災計画を策定しそれを実施するというものである。
コミュニティや住民は、行政が「守るべき対象」「政策の客体」に位置付けられ続けてきた。また、行政中心の中央集権的システムの下では、地域や地域住民自体が「自分たちの防災対策を自分たちで責任をもって感がえる」主体という自覚を持たないまま、中央依存的な防災対策となりがちであった。行政中心から社会的なセクターの重視へ、中央政権から地方分権的な政策の推進へ変化しているとまとめることができる。
- 自治体でどうコミュニティ対策をしていったらいいのか
- コミュニティの側から
自己進化(エンパワーメント)型のコミュニティ防災力の向上戦略を紹介。この戦略は、コミュニティが自分の地域の災害リスクと防災力を自己診断し、その結果に基づいて、不足している対応力を補うための活動を行う。さらに、こうした防災力診断を定期的に」実施することによって、自分の地域の防災力が順調に向上しているかどうかを確認する。
- 自治体の側から
地域防災力強化の政策において、欠けているのは、なによりも、防災を担当している行政職員自身が、自分の市域のコミュニティの状況を正しく認識していないこと。行政が「協働の事業」を進め、行政はあくまでも地域のバックアップの役割にとどまりながら、なおかつ、地域の防災力向上の実質を上げなけれならないのである。
重要な問題はコミュニティの「基礎体力」とか、「生活コミュニティ」と呼んできた部分をどう向上させるかである。→第一にコミュニティんお基礎体力は防災対策に限らない。第二に市域の中でも「自分たちの地域は。他の地域より地域防災力を高めることが切実だ」とする地域から、こうしたコミュニティ政策を導入することが大切だ。」第三にコミュニティごとの特徴を自治体が正しく把握して、コミュニティ政策を推進することが重要だ。
- 結論として
どうしたら地域防災力が向上していくのかの解答は、従来のように政府に頼るのではなく、「それぞれの自治体が答えを出してゆかなければならない」課題である・
14:40一般報告
「平成30年7月豪雨災害における広島市の対応と取組について」
広島県広島市長 松井 一貫
- はじめに
義援金、寄付金にたいする御礼
- 災害の概要
7/6安芸区役所に設置された雨量計では、18時から19時までの1時間に72ミリを観測。
広島市東部を中心に、土石流やがけ崩れ、河川の氾濫が相次ぎ、死者26人(うち災害関連死3人含む)、行方不明者2人など、大きな被害が発生しました。今回の災害では、最大で145施設の避難場所を開設しました。避難所の最大避難者数は8,423人にも達しました。(7月7日6時)
- 災害応急対策
- 組織の集約・整備
平成26年8月の豪雨災害以降、危機管理部門を消防局から独立させるとともに、複数局に分散していた危機管理機能を集約した危機管理室を新設しました。
- 体制の見直し
これまでの“災害警戒本部”、“災害対策本部”に加え、災害リスクに応じて、“注意体制”、“警戒体制”を新設し、ソフト面の整備を行いました。ハード面としては情報収集分析をするための防災情報共有システムを構築しました。
- 救助活動の様子
現地指揮本部において、消防、自衛隊、警察の各機関が活動分担について協議し、各機関が分担して活動を行いました。今回の災害では広島市だけではなく、本市が消防事務を受託する安芸郡海田町、熊野町、坂町においても、甚大な被害が広範囲に発生したうえ、大量の土砂や土木、冠水、道路寸断等により、極めて厳しい環境下での救助・捜索活動となりました。
- 状況の把握
被災状況は、土石流の発生により、家屋を破壊し、宅地、あるいは農地などに大量の土砂やガレキが堆積してしまいました。また、土石流が流れ込んだ河川では濁流に侵食されて橋が落ち、河川に沿って。走る道路は地盤が洗われて陥没し、河川の傍の住宅は床下が洗われて傾くなどの被害が生じました
山裾が何箇所もえぐれており、被害の大きさを悟りました。本市の場合、危機管理室が調整役となることで現場との間で現状認識を共有することができ、自らが五感で感じたことをもとに、素早い判断や指示につなげることができたと感じています。
- 生活再建に向けた取り組み
- 現場優先という意識
行政は、「例外はなるべくやらない」、つまり「一般化した対応でやろう」という癖がありますが、現場優先という意識のもと、「例外」を恐れずに進める必要があります。そのためには、首長が現場で起こっていることにアンテナを張り、職員に現場優先でやろうと姿勢を示す必要があります。
- 生活再建に向けた日用品の提供
本市においては被災者の視点に立った独自の支援として、テレビ、冷蔵庫、洗濯機等の身の回りの生活用品も給付することとしました。
- 民有地に流入した土砂の撤去
今回のような大規模土砂災害では、はるか山奥から流れてきた土砂や、その土砂によって押し流された家屋のガレキ等が混在し、民有地内は自己負担という原則論が適用できないことが明らかでした。
このため、民有地の土砂を市で撤去することを決定し、11日には下水道局に専門チームを設置しました。
- 罹災証明発行のための認定調査
今回の災害では、職員を初期段階から認定調査に専任させることにより、発災4日後には、被害認定調査を始めることができました。
- 周辺町への災害対応職員の応援派遣
近隣市町が一体となって復興していけるように指示しています。
- 本格復旧に係る基本方針
改良復旧に主眼をおき、住民が安心してその地域に住み続けられるよう取り組むこととしています。現在、主な復旧工事について、災害発生後3年までに完了させることを目標に鋭意取り組んでいます。
- 平成30年7月豪雨災害を受けて
本市が取り組んできた自主防災組織の充実に資する地域の防災リーダーの養成を引き続き行うことに加え、地域コミュニティにおいて、実効性があり、かつ、住民の参加を期待できるような避難訓練の実施に向けた取組を支援するとともに、住民が災害の危険性を我がこととして認識できるような取組を支援することで、地域の防災力の強化を図っていくこととしています。
- 皆様にお伝えしたいこと
【平常時】自分の市町大丈夫であろうと予断を持たず、災害への備えをとっておくこと。
【災害発生の可能性が高まった時】“狼少年“論を恐れることなく、人命を大切にすることに最善を尽くすのみという覚悟を持つこと
【復旧・復興期以降】地域に住んでいる住民が、これからも愛着を持って住み続けられるような“まち”にしていくという視点を持つこと。
15:50一般報告
「火山災害と防災」
防災科学技術研究所火山研究推進センター長 中田 節也
- おとなしい日本の火山活動
日本と同じような火山国であるインドネシアやチリに比べて、日本では、大きな噴火が最近になって少ないことが分かる。すなわち、巨大噴火は富士山や樽前山の噴火以来300年近く起きておらず、大噴火といえば北海道の駒ケ岳の噴火以来役100年間起きていない。日本の今はたまたま静穏であるが、大きな噴火が将来必ずやってくる。
- 火山監視・観測と予測
日本では世界でも有数の火山監視・観測体制を誇っている。多くの火山噴火は前兆現象を伴うので観測網でその異常を比較的捉えやすい。しかし、水蒸気噴火のような小規模な噴火はその前兆シグナル(地震、地殻変動など)が小さく、噴火の直前にしか現れない。火山噴火の予報に関して、日本における責任機関は気象庁であることが2007年に法律で定められた。
- 日本における火山防災の特徴
日本だけ火山研究と噴火警報の発信を担当する部局が明確に分かれている。日本では気象庁と大学や国立研究機関との間に垣根がある。諸外国では研究機関と火山防災担当機関が一体化しており、観測による速やかな活動評価と情報発信の決断力に関して日本と大きな違いがあるように感じる。日本においては、複数の機関で実施している観測データを一元化するとともに、観測から予想される現象や災害をいち早く把握・予測し、分かりやすい情報を防災担当機関や関係者に提供し、防災対策に速やかに活かす仕組みが重要になると考えられる。行政、研究者、地域住民が協働して、より永続的で効果ある火山防災のための取り組みに展開していく必要がある。
- 防災対策としてジオパークの活用
日本のジオパークは活動的な火山の近傍で展開されていることが多い。ジオパークはその地域の住民から行政、さらには研究者を含む全員が作り上げる社会活動であるうので、今の防災対策でありがちな、住民が取り残されてしまうような先走りの計画など、異なる立場間にありうる垣根は取り払って日常的な対話が生まれている。
- おわりに
現在の火山防災体制がまだまだ不十分であることを理解し、来るべき大きな噴火の対策を国任せにするのではなく、私たちが協働して行う必要があるだろう。ジオパークにおける防災活動のポイントは、日頃我々が恩恵を被っている火山という自然を認識しながら、発生頻度の低いながらも必ずやってくる火山災害について理解をすることである。ジオパークのような仕組みを活用することによって、長続きする火山防災への取り組みが可能になるだろう。
第2日 11月8日(金)
9:30パネルディスカッション
組事例:
【テーマ】防災とコミュニティ
【コーディネーター】
追手門学院大学地域創造学部地域創造学科長 田中 正人
【パネリスト】
専修大学人間学部教授 大矢根 淳
コミュニティ・レジリエンス醸成のカギをさぐって|結果防災(活動・組織)の掘り起こしー
- 原義と実践を振り返りつつ共助を考える
阪神・淡路大震災(1995)に際して、数多くのボランティアが駆けつけてきたことで、自助・共助の役割が極めて大きく評価されることとなった。そして東日本大震災(2011)に際しては「絆」が叫ばれた。
- 「防災は行政任せ」のもう一つの側面
「共助」とはいわず「近助」と書き慣わすところが現れだした。
- 結果(生活)防災の工夫~「土手の花見」から「防災マップ」づくりへ
冬に土中の氷結で緩んだ堤防を踏み固め、梅雨の増水に備える防災上の工夫といわれる。最近では住宅地や商店街の一角にフラワーポットが置かれているところも多い。メンテナンス費用のかさむ防犯カメラより効果があるのではないかともいわれている。
- 悩ましい問題~個人情報保護法の再読(手許・足許の再確認)‼
個人情報保護法では「災害時に同法は適用外」と明記されている。
香川大学地域強靭化緊急センター特命准教授 磯打 千雅子
目標と限界を共有する戦略的な連携計画―地域継続計画DCP―
- はじめに
形式上の公平性を重んじた従来通りの画一的な“防災”対策では用をなさない。組織のみならず防災対策施設の機能継続目的としたBCP(事業継続計画)、さらには、地域住民の生命や財産、地域の経済、文化や環境を守るためのDCP(値域継続計画)の策定・実践により、地域一帯を強靭で粘り強い社会構造へ転換することが急務である。
- 多様な主体との連携の形―地域継続計画DCP-
災害発生フェーズにおける緊急対応時には、複数の地域組織が戦略的に連携して地域継続対応を優先する必要がある。
- BCP・DCPの効果と地区防災計画制度
これまでBCPは法的規制がないことにより各組織のいわば内発性に頼り策定・運用が図られてきたが、反面、策定後の維持管理やPCDAに対する公的なサポートが行われにくい環境にあった。
地区防災計画制度はDCPの目的達成をより強固なものにする可能性を有しており、今後DCPの見える成果の一つとして個別対策の実現に向けた地区防災計画の策定が大いに期待されるところである。
- 取組事例:土器川における流域DCPとその波及効果
流域と氾濫域にある3市3町の沿川の連合自治会長等役員と行政職員による意見集約ワークショップを開催。得られた意見は、「私たちの大規模水害対策」として「目標:①犠牲者ゼロ、被害最小化、②避難を実行、③実効性を確保」と「戦略:①情報、②地域連携、③施設整備」を明確にした。
地域で独自に洪水対策を考える住民主体の協議会を設置。香川河川国道事務所の協力のもと河川事業の現場視察の開催や、町内会単位での洪水避難グループワークの開催、子ども会と連携したまちあるきと防災マップ作成の取組など、様々な活動に発展した。
国土交通省による事業終了後は、「住みたくなるまち土器 自主防災会」が担い手となり、得られた成果を地区防災計画へ発展させる活動を始めている。
土器側流域のように直近の被災経験の乏しい地域では、活動の成果である「計画」の妥当性や納得性が担い手間で共感し難い。ここに行政や専門家の助言、科学的根拠に基づくシミュレーション等の支援がなされることで、住民自らの手による取組に波及していった。
5、おわりに
昨今の災害による被害は突発的で甚大となる傾向があり、伴走者であるはずの地方自治体そのものが機能不全に陥る可能性がある。地域継続の担い手を中心とした伴走機能の継続が必要であり、DCPを通じて走者目線で機能継続対策を検討する必要性があると考えている。
霧島市国分野口地区自治公民館長 持留 憲治
地域コミュニティの強化を目指して
- はじめに
桜島に面しているため、大正噴火クラスの大規模噴火や今後発生が予想されている南海トラフ巨大地震などの災害に関する危険性の方が高いと考えられます。
令和元年7月時点での人口は、3,007名で世帯数は1,471世帯となっております。公民館は、6自治会で構成されており自治会への加入率は約35%となっています。人口は増加傾向にあります。転入者の多くは若い世代ですが、アパートやマンションに入居する世帯が多く、公民館員の増加に反映していない状況です。
- 防災事業の目的と必要性
事業継続の鍵は、強いリーダーシップとその実務を担う防災担当の知識と経験が必要であり、継続的な人材育成が極めて重要な課題で、担い手不足である地域では人材育成の仕組みが重要になってきています。
- 防災事業の年間計画
自主防災会議を開催し、防災事業方針及び自主防災訓練内容の周知と各班の役割確認などを行います。11月に自主防災訓練実施計画に基づき訓練を行い、実施後には問題点や反省点などを整理し次年度計画に反映させるなどP(計画)、D(実行)、C(評価)、A(改善)サイクルを確実に行い継続的な改善を実施しています。
- 防災訓練及び住民アンケート結果の紹介
野口地区自治公民館はこれまで平成20年から11回の防災訓練を実施してきました。参加者全員が野口生活改善センターへ集合し、諸訓練(初期消火訓練、心肺蘇生法)・AED使用訓練、応急手当訓練など)や炊き出し訓練、講演会などを実施しています。これまでの訓練では地域性を考慮して土のう作り、杭作り、土のう積訓練などを消防団の協力のと実施しました。その結果、野口地区の建物は、昭和56年6月1日志向の新耐震基準を満たすものが78%となっております。火災報知器及び煙感知器の設置は84%と高いですが、地震が発生した際に必要となる準備に関しては不十分な状態にあります。
- 行政及び企業との連携の現状
学校や企業とは避難場所の提供などに留まっており、野口地区全体としての防災活動を考慮し、より広範囲な連携・協同を図る必要があります。
- 今後の取組
自主性の高い防災組織の構築を進めていく必要性を感じています。防災に対する住民意識を更に向上させることに加え、公民館を取り巻く地域コミュニティの連携強化を目指した取組も重要であると考えています。
要配慮者と日頃から向き合い、向こう三軒両隣の助け合い単位活動を通じて災害発生時にも迅速で漏れのない行動ができる、ふれあいの地域をつくっていきたいと考えています。
静岡県三島市長 豊岡 武士
安全・安心なまち三島を目指してー地域防災とコミュニティ
- はじめに
三島市の人口は約11万人、年間の平均気温が15.9℃
防災対策としては、昭和54年に大規模地震対策特別措置法に基づく東海地震に係る地震防災対策強化地域に指定されたことから、地震防災対策を市政の重要課題と捉え、また、平成26年には南海トラフ地震防災対策推進地域に指定
- 本市の被害想定
推定震度6強→相模トラフ地震69.4% 6弱→南海トラフ地震88.9%・相模トラフ地震22.5% 5弱→南海トラフ地震11.1%・相模トラフ地震8.1%
建物被害(全焼・全壊)→南海トラフ地震約400棟・相模トラフ地震約2,700棟
人的被害(死者数)→相模トラフ地震約20人
- 地域コミュニティ組織の現状
平成31年4月1日現在、本市には144の自治会・町内会組織がある。
市内の14小学校区において地域コミュニティ協議会・連絡会が組織され、防災対策・高齢化・防犯・交通安全等地域が抱える課題を話し合い、課題解決に向けた方策を地域住民が主体となって検討しています。
- 避難所運営に関する取り組み
- 避難所運営会議
市内の小学校14校、中学校7校、県立高等学校2校を指定避難所に指定しています。
- 避難所運営基本マニュアル
災害発生時に避難所を開設した場合に避難所運営が円滑に進められるよう、自主防災会、学校、市職員で共有する避難所運営方法を定めたものです。
- 避難所開設アクションシート
避難所開設に携わる者が同時に開設手順を共有できるよう、避難所開設に向けた行動に優先順位を付け、A0判の一覧表にした。
- 避難所開設訓練
毎年、各避難所において、地域・学校・行政が一体となった避難所開設訓練を実施しています。
令和元年度は、自主防災会から約2,200人に参加していただき、全23の指定避難所において一斉に避難所開設訓練を実施しました。
- 地区防災計画の策定状況
平成26年に創設された「地区防災計画制度」の本市における策定状況は、平成31年3月に開催した本市防災会議での審議、承認を経て地域防災計画に位置付けています。
- 防災の担い手の確保・育成の取り組み
- 地域の防災力の向上
平成26年度より「防災力アップ」「人材育成講座」と題した地域や各家庭で生かすことのできる実技を中心とした講座を開催しています。
- 小中学生の育成
教育委員会と連携し、小中学生が地域の防災訓練に積極的に参加するよう呼びかけてます。マンションでは小中学生によるジュニアレスキュー隊を結成しました。
- その他
民生委員と自主防災会が連携した要配慮者支援策や災害ボランティアの育成・訓練等にも努めています。
- おわりに
「自分の命は自分で守る」「自らの地域は皆で守る」という自助・共助・そして公助がバランスよく機能することが重要です。
和歌山県海南市長 神出 正巳取
防災活動を通じた地域との連携―更なる信頼関係の構築に向けてー
- 海南市の紹介
海南市は和歌山県の北部に位置し、面積は101㎢、山と海に囲まれた風光明媚なまちで、約5万人の市民が暮らしています。
近年では、沿岸部を中心に日本製鉄をはじめとする重化学工業地帯が形成され、産業の中核を成しています。
- 災害への備え
本市では、南海トラフ巨大地震が発生した場合、沿岸部を中心に甚大な被害が予測されています。また、大雨や台風についても、近年、局地化・大型化する被害が一層懸念されています。
〇南海トラフ地震に備えて
津波による経済的な被害額は約5,000億円と言われています。
津波避難場所や避難路の整備に加えて、木造住宅の無料耐震診断や耐震改修工事に対する補助、高齢者世帯への家具転倒防止金具の無料取り付けのほか、津波浸水区域や避難場所などを示した津波ハザードマップを全戸に配布するなど、様々な対策事業を実施しています。平成29年11月には、本庁舎を津波浸水区域から約3㎞離れた高台に移転し、非常用電源の整備や災害対策本部機能の強化など、防災機能の充実を図りました。
〇大雨・台風に備えて
土砂災害警戒区域等に対しては、急傾斜工事や砂防ダム等の対策工事を実施するほか、河川では堤防整備や浚渫工事等により浸水対策を進めています。
- 地域と連携した防災活動の実施
本市では、災害時に中心的な役割を担う自主防災会が、沿岸部を中心に自治会(全世帯の76%が加入)の約9割にあたる221の地区で構成されており、自主防災会などを中心に地域と連携した様々な防災活動を実施しています。
〇災害対策事業
本市においても自主防災会等の皆さまを対象に、専門家や実際に被災した経験のある方を講師にお招きし、防災研修会を毎年2回開催しています。また、自主防災会が実施する訓練や研修会、資機材の整備等を支援するとともに、災害による被害の軽減に向けた様々な取り組みを行っています。
危険なブロック塀の撤去促進事業では、自主防災会等に危険なブロック塀に関する情報を集約していただき、その情報を基に市が所有者に対して撤去を促すなど、地域と連携しながら事業を進めています。
〇市民一斉訓練
それまで各地で行っていた避難訓練を「市民一斉訓練」として統一し、行政、自主防災会等が連携しなが ら、沿岸部では津波からの避難訓練、内陸部では地震の揺れに対する安否確認訓練を毎年実施しています。行政と自主防災会等が一体となって行う防災訓練として、例年2万人以上の市民の皆さまにご参加いただいています。
〇重点地区訓練
年間2地区から3地区を重点地区に指定したうえで、一人ひとりが「自助」「共助」の重要性を認識する機会となるよう平成22年度から実施しています。訓練終了後には、各地区で取り組んだ行動内容等を発表する報告会を開催し、行政、地域、学校等で情報の共有を図るとともに、それぞれの立場から意見交換等を行っています。
〇ミニ説明会
説明会では、災害に対して地区にどのようなリスクがあるのか、過去にどのような災害が発生したのか、行政はどのような対策を実施しているのか、そして、大規模災害における行政の限界や、地域で取り組んでいただきたい要支援者対策等、防災活動全般についてご説明します。
- まとめ
行政が地域と連携して実施する防災活動は、地域の「自助」「共助」の意識を高めるだけでなく、地域と行政との間に密接な信頼関係を築くことにも繋がります。
11:50閉会式
次期開催市市長挨拶 青森県八戸市長 小林 眞
閉会挨拶 後藤・安田記念東京都市研究所理事長 小早川 光郎





