児童養護施設「希望の家」を視察してきました!
児童養護施設とは、児童福祉法に基づいて、乳児を除く保護者のいない児童、虐待されている児童、その他環境上養護を要する児童(2歳~18歳)を入所させて養護し、あわせて退所した者に対する相談、その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設です。
希望の家の源流は、1942年(昭和17年)葛飾区木根川で戦災遺族のために開設された授産施設、さらに終戦後に、戦災孤児に対し保護・擁護する取り組みを始めたことに遡ります。
本園は2つのユニット(6名×2)、グループホーム30名(6名×5か所)4ヶ所、現在合計42名の定員となってます。
この施設では児童養護施設のほかに、ショートステイ、トワイライトステイ事業も実施しています。
職員構成は園長、副園長(家庭支援相談員兼務)、主任(自立支援コーディネーター兼務)、里親支援専門相談員、治療指導担当職員、個別対応職員、グループホーム支援員、児童指導員、保育士、栄養士、看護師、心理療法担当職員、音楽療法士、ホームスタート担当、ショートステイ・トワイライトステイ担当、児童精神科医師、嘱託医、事務員と51名体制です。
運営費は都からでています。過去5年間では7割近くの児童が大学進学をしているそうです。安心・安全な生活を理念にかかげ、誕生日などには好きな食べ物を支援員が調理して皆で祝うなどあたたかな施設環境を提供しています。
視察時に児童たちが、音楽療法とカウンセリングを目的とする音楽遊びをしていました。
午前中は地域の親子が参加をしているそうです。親子のお互いの意思が肯定的に尊重され、感情がのびのびする体験を通して、親子関係の質がより良く転換すること、それが日常にも活かされることを目指しています。
更に里親支援や家庭訪問型子育て支援も行っています。
里親支援ではチームで里親を支え、学習ボランティアや育児派遣などを行っています。
家庭訪問型子育て支援とは、妊婦さんや未就学児がいるご家庭にボランティアのホームビジターが週に1回訪問し、一緒に話をしながら家事や育児をして過ごす新しい家庭訪問型の子育て支援です。
今回視察をして、職員の不足が課題だと感じました。それには更なる国や都の支援や人材育成が必要です。また施設退所後の自立支援も支援任せではなく、行政で手を差し伸べていくことも検討していかなければならないと感じました。
板橋区においても、令和3年に児童相談所業務と身近な子育て支援サービスを併せ て行う子ども家庭総合支援センターを中心に、子ど もと関わる様々な関係機関が連携する体制を構築し、 『妊娠・出産から一貫した切れ目のない支援』をめざ します。
他区の先進的な取り組みを参考にしていけるよう、視察経験をいかして参ります。
公明新聞に掲載されました!
和歌山県田辺市に視察に行ってきました!
7月26日(金)田辺市役所へ、地域包括ケアシステム・高齢者の引きこもり対策について視察をしてきました。
田辺市は、平成17年5月1日、旧田辺市、旧日高郡龍神村、旧西牟婁郡中辺路町、旧西牟婁郡、旧東牟婁郡本宮町の5市町村が合併して誕生しました。現在の人口は73,734人です。
また、地域環境をいかし高品質な梅を持続的に生産してきた当該地域独特の農業システム「みなべ・田辺の梅システム」が国際連合食糧農業機関の世界農業遺産に認定されており、田辺市は二つの世界遺産を有するまちでもあります。
田辺市の高齢者の現状と推移は65歳以上の高齢者数は減少傾向ですが、高齢者の中の高齢化が進展しています。若年人口、生産年齢人口の減少により高齢化率は上昇しております。
高齢化率は32.5%、介護認定5,803人、サービス利用4,361 高齢者人口23,946人となっております。
認知症人数は2019年は2,777人、 2025年には2,842人に増加し、介護職員人材不足は648人と推測しています。
田辺市は田辺市長寿プラン2018を作成しました。「住み慣れた地域で支えあい、自分らしく安心して暮らし続けられる地域社会の実現」を基本理念に掲げ、2025年に向けて「医療」、「介護」、「予防」、「住まい」、「生活支援」の5つのサービスを一体的に提供できる「地域包括ケアシステム」構築のため、2020年度までにどのような施策をどのように進めていくのかの基本方針を定めました。
その取り組む課題は以下の通りです。
- 高齢者も含む地域住民を主体とした担い手の育成
- フレイル(介護は必要ないが不活発・虚弱な状態)改善のためのメニューつくり
- 認知症初期集中支援チームの充実等、認知症施策の推進
- 一人暮らし高齢者等の生活支援の充実
- 福祉人材の確保
- 医療・介護連携強化への取組
- 居宅介護支援事業所、地域密着型サービス事業所等指定・指導業務の広域化
- 第32回全国健康福祉祭(ねんりんピック)の実施
田辺市地域介護予防活動支援事業では、運営補助金や準備経費支援補助金があります。(事業の対象者は65歳以上の方で対象団体は市内在住の65歳以上で構成された5人以上の団体)
フレイル(介護は必要ないが不活発・虚弱な状態)改善のためのメニューつくりでは基本チェックリストフレイル項目による状態変化出現率比較表を作成し、うつや閉じこもりの該当者は認知症になる率が高くなる傾向から早急に対象者に支援の手を差し伸べています。
田辺市高齢者等見守りサポート事業も行われ、警察・消防・田辺市やすらぎ対策課と見守りサポーター(介護事業所職員、ケアマネージャー、消防団員、民生委員、福祉委員、認知症サポーター、一般市民)が連携をはかり幾重不明者発生の際には力を発揮します。
今後は更に一人暮らし高齢者の生活支援(安心サービス、権利擁護事業)を充実させていくそうです。
在宅医療・介護連携推進事業について田辺市では二次医療圏域内の市長で共同で一般社団法人田辺圏域医療と介護の連携を進める会への委託による田辺圏域在宅医療・介護連携支援センターを設置し事業を実施しています。
田辺市では高い専門性を確保しつつ効率的な事務の実施方法を検討対象事業所数の増加に伴う事務に対応するため、また計画的な実地指導等を行うため、平成30年度か4月から田辺市とみなべ町、白浜町、上富田町、すさみ町と協議した結果、地方自治法に基づき田辺市が他の4町から指定指導事務等の委託を受けて実施しています。
高齢者の引きこもり対策として相談支援体制の充実を図っています。田辺市機関支援センターを軸に各地域型包括の身近な相談窓口で対応しています。9か所の在宅介護支援センターが、在宅の高齢者宅を訪問し、生活状況などの実態把握と相談活動を行っています。
実態把握の活用方法では、通常の相談支援や緊急時の情報として活用する以外に要援護者台帳として整備をしています。
実態把握をおこない、ハイリスク者の把握をし、各関係機関に速やかにつなげます。
課題としては「すべての高齢者の状況把握をするのは難しい」、「職員によってハイリスクと判断する基準がまちまち」、「状況は把握できていても、対応しにくいケースもある」があります。
【田辺地域における医療と介護の連携の取組について】
平成9年度田辺市介護システム研究会を発足し、平成13年ごろ地域総合ケアシステムつくろう会(庁内協議)に発展し、平成22年度に田辺圏域保健医療介護の連携体制の構築をすすめる会が設立されました。その後平成28年に一般社団法人化となりました。
医療と介護の連携マニュアルを作成し、「退院調整ルールの手引き」や「救急の備えマニュアル」などは現在も運用されています。
マニュアルの内容は「医師と介護支援専門員の連絡票」「共通フェースシート」「ケアマネタイム一覧表(医科・歯科)」「事業所情報(居宅・連携室・訪問看護他)」です。
「退院調整ルールの手引き」は病院と在宅の入退院における情報共有や連携方法についてまとめた手引きです。入院時情報提供書(共通フェースシート)、退院時に必要な情報、病院運用ルール(情報提供先・調整・連絡・担当者など)、退院調整に用いる基準などが記載されています。
田辺市では「田辺圏域医療と介護の連携を進める会」に業務を委託し、在宅医療・介護連携推進事業をおこなっています。
平成30日年度の取組は以下の通りです。
(ア)地域の医療・介護の資源の把握(見える化)
(ィ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討
(ゥ)切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進
(エ)医療・介護関係者の情報共有の支援(ICT等)
(ォ)在宅医療・介護連携に関する相談支援
(カ)医療・介護関係者の研修(多職種研修会の開催)
(キ)地域住民の普及啓発
(ク)在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携
(ア)では見える化&CHECKでルールのさらなる普及に向けて取り組んでいます。退院調整漏れ率は微増していますが、連携の質の向上や拡がりの成果も出ています。
(エ)では「くろしおNET」が構築され、円滑な医療・介護の双方向の情報連携を実現しています。
「くろしおNET」とは書面同意に基づき、圏域の病院・診療所・歯科診療所・薬局・訪問看護ステーション・ケアマネージャーなどをネットワークで結び、診療情報・病名・処方薬・直近の介護サービス・緊急連絡先を共有するICTを活用したシステムです。
複数のシステムに分散されていいた患者さんの医療・介護情報が統合されたことで、退院調整もれと多職種間で日常・緊急搬送時に即時に一体的な情報共有ができない課題が解決されました。
現在の参加機関数は病院、医科診療所、歯科診療所、薬局、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護ステーション、介護施設、消防など109施設、と同意参加者数は8,501名(2019年6月20日時点)
今後の課題としては顔と顔のつながる関係と声の届く関係が重要との事です。
今回の視察をとおして、板橋区と田辺市では人口の差があるとはいえ、医療・介護従事者と病院、家族、行政の連携は重要であると感じ、とても参考になりました。板橋区内には大きな病院が多くあります。区内の多職種機関の連携構築に向けて研鑽して参ります。
有料老人ホーム「きのくにの手」へ視察に行ってきました!
7月25日(木)、和歌山県和歌山市加納にある、耳が不自由な人向けの住宅型有料老人ホーム「きのくにの手」へ行ってきました!
聴覚障害者を対象にした高齢者施設は県内で初めての施設です。
運営する県聴覚障害者協会は「手話で自由に会話し、安心して暮らせる場所でありたい」として、市や県の補助金制度がないなか、土地(420坪中190坪)や資金(3億円中約1億434万円)の寄付などにより昨年11月1日にオープンしました!
職員自身も聴覚障がい者です。健常者の入居者もいます。さまざまな課題はありますが、コミュニケーションは取れているそうです。
ホールや喫煙室など、どこにいても手話が見えるような設計となっています。
【吹き抜けのホール】
【喫煙室から事務所がみえるようになっています。】
部屋数は24室、定員は26人、入居費(食費込み)は11万~となっており、生活保護者でも入居可能です。食事提供は委託業者が厨房で調理をします。
室はトイレ付とトイレなしのタイプがあります。
【トイレ付室】
併設施設として、通所介護「加納の手」があり、デイサービスが実施されています。
トイレも左右側から介護支援ができるように、便器設置も壁側にならないような位置に取り付けられ工夫されています。
リフト付きの浴場や、ランドリーも充実してます。
ご家族が宿泊することも可能な和室もあります。
聴覚障がい者は音が聞こえないので、廊下などはどの方向も確認できるミラーが設置されています。
エレベータも閉じる際は光でお知らせします。
施設独自の取組として、室内や廊下などいたるところに写真の機器が設置され、色の点滅により警報の内容をお知らせし入居者に速やかに伝えることができます。
来客時は呼び鈴を光でお知らせする、フラッシュベルにより光が点滅をします。
【フラッシュベル】
耳も目も不自由な方には、緊来客者や緊急時を振動でお知らせする装置を枕の下に置くことにより、睡眠時でも知ることができます。
【振動呼び鈴】
【振動装置】
目も耳も不自由な方のお部屋を見学させていただきました。置いているものがわかるように整理整頓されていました。
指先で形を認識して完成させたパズルを拝見し、驚愕しました。
認知症の方への対策として、室内の洗面所は出しっぱなしに防止の自閉水栓が取り付けられています。
夕食後は将棋などの娯楽を楽しんでいるそうです。
今回視察をして、障がいを抱えている高齢者施設にもかかわらず、行政の補助金がないことに驚きました。
板橋区でも手話言語条例が可決されましたが、今後ケアマネージャーや訪問看護師などや、公共施設や民間施設において手話の人材育成が必要だと感じました。
板橋区としてどのようなことができるのか、研究・検討しながら今回の視察の経験を生かして参ります。