◆常任委員会視察【北海道千歳市 千歳市防災学習交流センター そなえーる】
二日目の10月6日は北海道千歳市の「千歳市防災学習交流施設 そなえーる」を視察しました。
千歳市には、自衛隊駐屯地が北と東に一箇所ずつあり、航空自衛隊千歳基地も存在しており、三方を自衛隊に囲われているまちとしての成り立ちがあります。また、市街地の緑周部には装軌車両や戦車が頻繁に通行する10kmの公道、通称「C経路」が通り、そこを通行して北海道大演習場に往来をしています。
こうしたまちの成立経緯と、近年において多発する自然災害に十分備えておく必要があるということ、さらにC経路の通行騒音問題がかねてよりあったことを鑑み、防災対策の推進や自主防災組織の充実などもあわせ、住民懇話会の議論をふまえ、防災学習交流施設の整備が決定されたとのことでした。
ここで、視察前の何も勉強をしていない段階で持っていた素朴な疑問点として
・道レベルの充実した施設を導入した経緯は?
・維持管理予算は今後、どうしていく予定か?
ということでした。
事前勉強を進めていくとともに、訪問して実際にお話しをうかがってみてその疑問点は晴れました。それは、
- 自衛隊駐屯地二箇所、航空自衛隊千歳基地の存在などからもあるように、国防の視点からも地域住民、ひいては日本国民の命を守っていく、という強い防災意識でまちづくりが進んできたこと
- この地域の人々が置かれている、厳しい自然環境・生活環境からも「防災対策」はまちを上げて取り組むべき一丁目一番地の課題であること
- 総事業費約21億円は、国からの予算を75%あてがって本施設建設が行われてきたこと
主にこうしたことから、疑問点は氷解致しました。
そこで、千歳市で近年発災した災害を以下の通り記載します。
千歳市における主な災害
平成16年9月7日 台風18号強風
最大瞬間風速32.4m
住宅被害 半壊1件 屋根破損51件 建物39件 公共施設30件
倒木 市街地508件 4200本
農業用防災林10ha 推定3万本
支笏湖方面国有林7700ha
道路閉鎖 道道支笏湖公園線、国道453号・276号
200台以上の車両が倒木で閉じ込められ、支笏湖地区が孤立
平成20年2月24日 暴風雪
急速に発達した低気圧は台風並みの勢力となり、
最大風速20mと降雪40cmの大雪により、猛吹雪のホワイトアウトが予測され、1mを超える多くの吹き溜まりで多数の車両が立ち往生。
立往生車両約200台
被災者 約300人(軽傷者3人)
災害派遣要請
第11普通科連隊を含む第7師団
陸上自衛隊員164人
車両19台
大型雪上車14台
ヘリコプター2機
平成26年9月11日 大雨特別警報
9月11日午前4時過ぎに1時間当たり100mmの豪雨となり、数十年に一度の大雨が発生したことから、北海道で初の「大雨特別警報」が発表され、一部地域では避難勧告を発令。
土砂崩れ発生 国道453、道道730号
避難者数 143人
平成30年9月6日 胆振東部地震
前日に大型台風が通過した、その未明に発生
規模 マグニチュード6.7
最大震度 震度7
人的被害は全道で死者43人、負傷者782人
住宅被害 全壊468棟、半壊1660棟、一部破壊13849棟
被害状況としては土砂崩れ、大規模停電全道によるブラックアウトが起こる
液状化現象は15の市町で発生
鉄道、航空機等がストップし、発電所でも火災が発生した
なお、平成28年2月23日には、新千歳空港で航空機内から出火の通報があり緊急脱出が発生。
千歳市として備えておくべき災害
これまでの災害の歴史や経験、置かれている環境、まちの成り立ちを踏まえ、千歳市が想定している災害は以下のとおりでした。
【北海道周辺のプレートや断層が動くことによる地震、あるいは常時観測火山である樽前山の噴火災害などが予想されるほか、近年は暴風雨被害や冷害など北海道の気象特性による自然災害が多くなっています。また、航空機事故や鉄道事故などの災害にも備えておく必要があります。】
他に補足として、支笏湖などのカルデラ湖が近隣にあるということは、活火山の存在がある。火山灰土壌であるということは、雨降りには土砂が一斉に流れていきやすい地層でもある。豪雪地帯(道内ではそうでもないとのこと)であり、雪おろしを毎年一定の時期に恒例として行う必要がある上、ホワイトアウトの発生も想定しなければならない。
これらだけでも、常に自然からの猛威を意識した防災対策が必須な地域であり、防災における地域特性と備えは現場で視察をして初めて知ることが多く、深い学びとなりました。
【今回視察を通じて感じたこと】
防災学習施設としては北海道設備レベルのものが備えられており、ご紹介下さった施設長も市単独で防災訓練ができる施設があるのは道内でもここだけと仰っておりました。入館料も頂いておらず、一部の部屋で使用料をいただいているということでした。地震体験コーナーや、煙避難体験コーナーなど、高度な仕組みや仕掛けを使う設備では、その維持費については課題であると感じました。ちょうど設立10年を越えてきた頃で、一部で修繕工事が必要になってくると施設長は仰っておりました。
ただ一方で、地震体験コーナーでは震度1から7までの揺れを体験でき、実際に起こった東日本大震災や、胆振東部地震と同じ揺れが体験(再現)できる貴重な施設でもあり、市単独でよくぞここまで、という深い思いに至りました。
千歳市はあらかじめ想定しておかなければならない災害への対策や備えは多く、住民意識の向上に行政としても力を入れる必要があるため、欠かせない設備であるとも感じました。
今後もこの施設が、道全体、または全国から視察に多くの方が訪れるような、施設と位置づけられることを強く念願致します。そしてここで学んだことが地域の、全国の防災対策にも波及していくことを強く念願します。