■委員会視察です!(その2)慈恵病院・こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)@熊本県熊本市
2)慈恵病院の「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」@熊本県熊本市
委員会視察の二日目は熊本県熊本市にある慈恵病院の「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」。さまざまな理由で幼い我が子を手放さなければならない現実。また一方で、意図しない妊娠などから多くの課題を抱え相談先もない状況の中、匿名で子どもを預かる施設として設立された民間の病院です。
かつてNHKクローズアップ現代でも取り上げられていましたので、こちらのサイトをご覧ください。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3988/
現代における課題に全力で取り組んでおられる民間病院の院長先生より、これまでのご経験と取り組み、様々な思いを伺ってまいりました。
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■慈恵病院の概況
【発祥の経緯】
・1897年:一般患者のための施療院を設立
・1952年:聖母琵琶崎慈恵病院を設立
・1978年:医療法人聖粒会 慈恵病院を設立
現在に至る
診療科目:産婦人科、小児科、外科、内科、麻酔科
病床数:一般病床・98床(うち、産婦人科60床、一般38床)
分娩件数:平成28年 1701件
★1899年の当時、この地域の寺院に置き去りにされていた乳児をかくまい、乳児院を設立し育てていたという歴史的背景があり「遺棄されて命を落とす新生児や人工妊娠中絶で失われていく命を救いたい」との病院側の思いから、匿名で子供を預かる施設として計画され、平成19年より「こうのとりのゆりかご」を病院の建物内に設置し運用されています。
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ゆりかごに赤ちゃんが置かれると、ナースセンターと新生児室のブザーが鳴るようになっており、モニターで確認。そのまま慈恵病院のスタッフがゆりかごに駆けつけて置かれている赤ちゃんを保護。同時に医師へ連絡をし、医師による健康チェックを行うとともに、昼間は産婦人科部長、夜間であれば当直部長に連絡をしてから、最終的に看護部長に報告が入り、理事長・事務部長へ報告。また、その情報を熊本市の児童相談所と警察署の刑事課へ、看護部長から通報する仕組みとなっています。
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■赤ちゃんのその後について

乳児院
・いったん預けられた赤ちゃんは、乳児院に入所し、ここで3歳まで過ごすことに
児童養護施設
・3歳をすぎると児童養護施設へ転居し、18歳までここで生活
※なお、この転居に伴う離別がその後の子どもたちにとって大きな影響を与えている、と説明。子どもにとって「愛情をかけてもらえる」ということが最も大切であり、出来るだけ早く家庭に入れるべきという考え
里親
・育てられない親の代わりに一時的に家庭内で子どもを預かって養育する制度で、里親と子どもに法的な親子関係はなく、実の親が親権を持つ
・里親には、里親手当てや養育費が自治体から支給
特別養子縁組
・民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度であり、養親が子の親権を持つ
・養子縁組が成立した家庭には、自治体などからの金銭的な支援はなし
・養子縁組は2種類あり、普通養子縁組は跡取りなど成人にも広く使われる制度。特別養子縁組は特に保護を必要としている子どもが、実子に近い安定した家庭を得るための制度
※なお、2017年4月に改正児童福祉法が施行され、生みの親が養育できない子どもは、養子縁組や里親・ファミリーホームなど家庭と同様の養育環境で、継続的に養育されることが原則となりました
★ドイツで行われている母子を守る取り組み★
■葛藤妊娠相談
出産が困難な事情があれば、妊娠葛藤相談所で相談し、どうしても出産することができない事情がある場合は、相談所の証明書を受け取り中絶手術を受ける
■赤ちゃんポスト
匿名で赤ちゃんを受け入れる仕組み
2004年5月には、ドイツで70箇所の赤ちゃんポストが敷設。その後2014年には100箇所まで拡大
■匿名出産
自宅での出産は母子ともに危険であるため、匿名でも施設で出産することを推奨。匿名出産から8週間の猶予があり、マザーチャイルドハウスという施設にいったん預けられる。この間に自分で育てるか、養子にするかを考えることに
■内密出産
匿名出産と仕組みはほぼ同じ。16歳になったとき、子どもからの要求があれば実の母親のことを教える。しかしながら実の母親が拒否をすれば子どもには伝えない
★院長先生が先進国であるドイツで視察・調査した内容をレポート頂きました
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☆熊本に赤ちゃんポストが必要か☆
★院長先生がドイツで視察・調査をされ、当時も遺棄されて命を落とす新生児や人工妊娠中絶で失われていく命を救いたいとの思いから、匿名で子供を預かる施設として計画され、開設までの様々な課題があったとのこと。
主に以下の内容であったことをご説明いただきました。
【こうのとりのゆりかごを開設するにあたっての課題】
課題1】法的問題(遺棄幇助罪)
課題2】生まれてくる赤ちゃんの出自の問題
課題3】病院建物内での運営上の経済的問題
課題4】捨て子の助長?
課題5】様々な対応について(人的問題)
課題6】病院内の設備新設の必要
・その他、院長先生がこの病院に赴任されてから30数年のあいだ、遺棄児は1人だったこと。
↓ ↓
2007年(平成19年)5月10日:こうのとりのゆりかご開設
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↓ 詳しくはこちらのサイトへ
http://jikei-hp.or.jp/cradle-of-the-stork1/
■こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)の問題点
1)預けられた子どもは、自分の親を知ることが出来ない
自分の親を知ることが出来ず悩む
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子どもの幸せのために、家庭での養護である「特別養子縁組」
・出産前に相談があり、どうしても育てられない事情がある場合、一貫して愛情のある家庭で育てる特別養子縁組を紹介しているとのこと
↓
出産後3ヶ月以内に家庭で育てると親子の絆が強くでき、出自で悩むことは少ないそうで、愛情障害、子どもの親試し行動もまず無いとのこと
告知:「産んでくれたお母さんは別の人で、本当のお母さんは私です」と早い時期に告知
→ 家庭による養育で脳の発達もより進んでいく
2)預けられた子どもは、まず施設で育てられる
・0歳から3歳未満:乳児院
・3歳から18歳未満:児童養護施設
・18歳以上:自立
→18歳になると、施設を出て自立しなければならない。施設を出たあと、経済的な収入が少なく、支援も得られず、生活が困窮し、犯罪に走ることも。
★家庭での養育の意義
1)愛情深く育てられた子どもは、親の出自で悩む程度が軽くすむ。また、社会生活の上でも
前向きに生きられる
2)愛着形成は生まれてすぐに出来てくる。そのため母と子の愛着形成は乳幼児からが理想である
3)子どもは家庭で育ってこそ、将来自分の家庭を作ることができる
4)家庭で育つことによって、社会とのふれあいの機会が多くなる
自宅での出産は母子ともに危険であるため、匿名でも施設で出産することを推奨。匿名出産から8週間の猶予があり、マザーチャイルドハウスという施設にいったん預けられる。この間に自分で育てるか、養子にするかを考えることに
3)公的な経済負担が大きい
0歳~18歳までの一貫養育公的経費の比較
1)幼児院・児童養護施設(公立):11,520万円
2)幼児院・児童養護施設(民間):7,680万円
3)里親養育(平成20年から):1,820万円
4)里親養育(平成21年から):2,575万円
5)特別養子縁組:概ね0円
※出典:全国里親協議会「子ども時代の全てを施設で育つ子どもをなくすための里親意見書」
4)育児放棄を助長する?
開設から平成28年度までにこうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)に預けられた件数のグラフ。預け入れられた子どもの養育状況は、預け入れ後の時間の経過とともに乳児院・児童養護施設への養育委託から、里親への養育委託、特別養子縁組の成立の割合が高くなってきており、より家庭的養育へと移行している。
★平成29年5月熊本市の公表より作成
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★慈恵病院 SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口の取り組み★

※このページで報告している内容は、視察会場で蓮田太二院長先生からご説明いただいた内容と、当日ご案内のプレゼン資料をもとに作成しております。
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【今回学んだこと】
病院の長い歴史におけるこれまでの成り立ちと、止むに止まれぬ思いから運営を決断し、熊本市の協力を得ながら現在まで続けてこられたこの取り組み。話を伺うほどに解決すべき課題は多く存在していることを認識しました。ちょうど我々が視察で訪れた際に、慈恵病院からドイツで行われている「内密出産」の仕組みと素案を、熊本市に提案している報道を現地のTVで拝見しました。国内での事例はなく、国際的な視察を重ね、先進国であるドイツの取り組みを参考に提案していく、現時点ではこのような地道な課題解決に向けての働きかけが、最も近道なのではと感じました。公的機関における相談・支援体制を確立するための法整備が待たれます。
また、『我が子』という意識がないまま安易に預け入れられる可能性もあり、保護責任者遺棄罪(本来、保護する責任のある者が遺棄、またはその生存に必要な保護をしなかった罪)に問われるかという部分、法的な解釈においても整備が必要とのこと。開設から10年、未だいち民間病院で全国から多くの相談を受けている実態は、多くの問題を投げかけております。
上記でも紹介しましたが、日本は国際的に比較しても、預かることとなった場合の施設依存度が非常に高いことが伺えます。0歳~3歳未満の場合は乳児院、3歳~18歳未満の場合は児童養護施設となり、88%が施設で育てられるとのこと。慈恵病院ではようやく最近になって、預け入れられた子どもの養育状況は、預け入れ後の時間の経過とともに乳児院・児童養護施設への養育委託から、里親や、特別養子縁組の割合が高まってきているとのことで、より家庭的養育へと移行しつつある状況でありました。
諸外国からの日本の施設依存は問題ありという意見に対して、院長先生もその点を変えていきたいと強くお感じになっているとのこと。このような民間の有識者の方々が、現状の課題解決に向け温かみを注いでくださると、深く脱帽する思いでした。
慈恵病院では平成19年4月1日から平成29年3月31日までの特別養子縁組は、累計294人が成立しているとのこと。また、平成18年11月9日から平成29年3月31日までの養子希望相談件数は、延べ1515件。ここでお世話になった多くの赤ちゃん・子ども達が、一人ももらさず幸福になるように。課題解決に向け、公的機関での相談・支援体制や法整備が進むことを念願してやみません。


