Jiam 令和8年度第2回市町村長・議会議員特別セミナーオンライン拝聴して
【第1講義】「農と食と健康を守るためのサプライチェーンの再構築」
泉大津市・南出賢一市長
本日、JIAM研修にて、大阪府泉大津市・南出賢一市長の講義を拝聴しました。人口約7.3万人、面積約14平方キロというコンパクトな都市でありながら、官民連携・市民競争を掲げ、全国が注目する先進的な食と健康の政策を展開されています。以下、その要点と学びを共有します。
■ まちづくりの哲学
泉大津市は「毛布の街」として知られる一方、近年は”未病予防”のまちとしてブランディングが進み、若年層の転入超過率が全国トップクラスに。市の三本柱(①安全安心の暮らし、②幸福度向上、③未来の指針となる道しるべ)に基づき、目先の話題性だけでなく土台からの政策設計を徹底されています。
■ ダイレクトサプライチェーンの構築
米不足が社会問題化する2年以上前から、市は独自に「安全安心な食料の安定的確保に関する構想」(令和5年3月発表)を策定。全国14自治体と連携協定を結び、有機・特別栽培米を中間流通を挟まず直接買い上げる仕組みを整備しました。これにより農家の所得は2〜3割向上し、市側も市場価格の乱高下に左右されない安定調達を実現しています。米不足時には連携自治体からの融通や、自治会単位の共同調達で送料コストを抑える工夫も行われました。
■ 給食改革と「金芽米」
学校給食は全て、ぬかを一枚だけ残す精米加工法「金芽米」を使用(6割有機・4割特別栽培)。従来の学校給食会に頼る調達方式については、トレーサビリティの欠如を理由に明確に見直しを決断されており、「気を使う必要はない、やる気の問題」と述べられていた点が印象的でした。塩・砂糖も精製度の低いものを選び、マーガリン等のトランス脂肪酸を含む食材は原則不使用とするなど、食材選定の基準が徹底されています。
■ 医食同源のエビデンス
妊娠届出から出産まで毎月10kgの金芽米を配布する「マタニティ応援プロジェクト」では、妊婦の体調不良軽減、低出生体重児の大幅減少(7〜8%→3.3%)など、大学と連携した調査データが示され、政策の効果を数字で裏付けている点が非常に説得力がありました。
■ 今後のビジョン
①学校給食を全国で月1回米飯に切り替えるだけで年間約40億円規模の需要創出、②医食同源米(金芽米)による医療費削減効果の可視化、③「古米」の概念をなくす熟成保管技術の普及、という3本柱で「米サミット」(15自治体)を立ち上げ、全国展開を目指しておられます。
■ 所感
政策の一つ一つに「なぜやるのか」を突き詰めた哲学があり、それを職員や関係者と繰り返し”共に学ぶ”ことで浸透させてこられた点に、市政運営の本質を見た思いです。熱意と対話を軸に、困難を一つずつ打開してこられた南出市長の姿勢から、多くを学ばせていただきました。今後の政策立案・議会質問においても参考にさせていただきたいと思います。
【第2講義】「生成AIは議会をどう変えるか」
Maniken(地域経営のためのあたらしいマニフェスト研究所)の研究員
山内健輔さん
1. 生成AI活用の現状
全国の議会で生成AI活用が急増中(議会だより作成・住民問い合わせ対応・委員会調査などで1年で3〜4倍に増加)。一方で、各議会が定めた利用ルールはまだ少なく、あっても「注意喚起」レベルにとどまり、「どう使えば効果的か」という前向きな指針は少ない。
2. 住民との関係が変わる
若い世代ほど、検索エンジンではなくAIに直接質問して情報を得る傾向が強い(10代の約67%)。
議会の議論がネット上にきちんと記録・公開されていないと、AIがそもそも参照できず、住民がAIに聞いても「議会が何をしているか」出てこなくなる。
逆に情報を充実させれば「情報公開→住民の関心→さらなる情報公開」という好循環が生まれる。
対策として、会議録をテキストデータで公開する、町田市議会の「議案カルテ」(議案ごとに審議経過を横断的にまとめるページ)のような分かりやすい発信の工夫が有効。
3. 住民の声の聞き方が変わる
従来のアンケートやパブリックコメントには「参加できる人が限られる」「意見を整理するのが大変」「聞きっぱなしで終わる」といった限界がある。
そこで注目されているのがブロードリスニングという手法。AIが大量の意見を自動でテーマ別に分類・要約し、少数意見も含めて可視化することで、多様な声を政策に反映しやすくする仕組み(すでにいくつかの自治体で導入例あり)。誹謗中傷はAIが検知して投稿をブロックする機能もある。
4. 議員自身の政策立案での活用法
複数資料の横断検索(RAG):総合計画・財政計画など複数の行政文書をAIに読み込ませ、テーマ別に横断的に調べられるようにする。
分析フレームワークの活用:SWOT分析など既存の手法をAIと組み合わせて活用。
ほかに「言葉の壁を越える」「ペルソナを使った議論」なども紹介(講義はここで時間切れとなり途中まで)。
まとめ
AIによって「効率化」できる部分(要約・文字起こしなど)だけでなく、AIが得意な「多様な意見を集めて論点を整理する」力を、住民参加や政策立案の質そのものを高めるために使えるかがポイント、という内容でした。

