12/18 一般社団法人 日中山河経済文化促進会 12月例会に参加して
AI時代の若年層はどう生きる?教育政策と労働市場の最前線
12月の例会では、椙山女学園大学 学長・黒田由彦氏をお招きし、「現代日本の教育政策と大卒労働市場 〜AI時代の若年層のライフスタイルと意識〜」と題した特別講演を開催いたしました。
人口減少、AIの台頭、そして変化する若者の価値観。大学教育の現場から見える「日本の未来」と、これから求められる人材像についての刺激的なお話の一部をレポートします。
1. 「右肩下がり」の時代を生きるZ・α世代のリアリティ
現在、大学に通う若者たちは、2005年頃から始まった本格的な人口減少社会しか知りません。日本が経済的に衰退し、中国にGDPで抜かれる姿を目の当たりにしてきた世代です。
18歳人口の急減: 年間1つの県(鳥取県など)が消滅する規模で人口が減っており、もはや「18歳」だけをターゲットにした大学経営は成り立ちません。
価値観の断絶: 高度経済成長期を経験した世代とは、人生設計の前提が根本から異なります。若者はよりシビアに、現実的に自分の将来を見つめています。
2. 「大学卒業」の価値が変わる —— DX・AI時代の衝撃
AI(ChatGPTやGeminiなど)の進化により、ホワイトカラーの仕事の在り方が激変しています。
知識の陳腐化: 一度覚えた知識はすぐに古くなります。大学を卒業したという「学歴」だけでは通用しない時代です。
「処理能力」から「創造的解決」へ: 定型業務はAIが担うため、人間に求められるのは「問題を発見する力」や「非定型な創造的解決力」にシフトしています。
タイパ(タイムパフォーマンス)重視: 今の学生は無駄を嫌い、転職への抵抗感も低いです。「自分をどうバージョンアップし続けられるか」を重視してキャリアを選んでいます。
3. 文部科学省が進める「大学の大淘汰時代」
現在、日本の大学(約800校)は岐路に立たされています。文部科学省も、これまでの「数」を増やす政策から、**「質の高い大学を選別し、残す」**政策へと舵を切っています。
理系人材の育成: 諸外国に比べ、日本の理系入学者(17%)は極めて低いです。特に女性の理系・デジタル人材の育成が急務とされています。
リカレント教育(学び直し): 卒業して終わりではなく、社会に出てからも大学に戻って学び続ける「ワンストップサービス」としての大学機能が求められています。
4. 椙山女学園大学の挑戦 —— 「学び続ける力」を授ける
黒田学長が率いる椙山女学園大学では、こうした時代の変化を先取りした改革を進めています。
新校舎とコワーキングスペース: 星が丘キャンパスに建設中の新校舎には、学生だけでなく社会人も利用できるリカレント教育やコワーキングのスペースを設置。
サブスク型教育への意識転換: 4年間で知識を詰め込むのではなく、一生涯「学び続ける力(自らをバージョンアップさせる力)」を養う場所への変革。
女性のライフコースに寄り添う: 結婚・出産・育児によるキャリア中断のリスクを考慮し、再就職時に「高く売れるスキル」と「ネットワーク」を維持できる仕組みを提供します。
まとめ:企業が「原石」を見極めるために
これからの採用や人材育成においては、「どの大学を出たか」よりも「学び続けているか」「変化に対応できる柔軟性があるか」が重要になります。
若者たちが持つ「ゆるい人間関係のネットワーク」や「自分なりの物差し」を理解し、彼らの自己投資を後押しできる組織こそが、優秀な人材を惹きつけることができるでしょう。
21世紀シルクロードの核心へ:新疆ウルムチの知られざる変貌
12月例会の第2部では、中国研究の第一人者である名古屋外語大学名誉教授・川村範行氏にご登壇いただきました。 2025年に計7回の訪中を重ね、最新の現地情勢を調査された川村先生。今年、自治区成立70周年を迎えた「新疆(しんきょう)」が、かつてのシルクロードの要衝から、いかにして「現代世界の結節点」へと変貌を遂げたのか。その熱気あふれる報告をまとめました。
1. 「地の利」を活かしたユーラシアの中央拠点
新疆ウイグル自治区は、中国の面積の約6分の1を占める広大な地域です。驚くべきはその隣接国数。8カ国(ロシア、インド、パキスタン等)と国境を接しており、中国の国境線の約4分の1をこの一帯が担っています。
21世紀シルクロードの核心区: 中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」において、新疆はアジアと欧州、中近東を結ぶ「陸と空の港」として位置づけられています。
エネルギーの宝庫: 石油、天然ガス、石炭、そしてレアメタル。中国全土のエネルギー資源の約3〜4割がここに集中しており、ビジネスの可能性は無限大です。
2. 激変するインフラ:「陸」と「空」のシルクロード
川村先生が現地で目にしたのは、かつての砂漠のイメージを覆す近代的な物流ネットワークでした。
陸のシルクロード(中欧班列): 中国から欧州へ向かう貨物列車の約9割がウルムチを経由します。巨大なコントロールセンターが、24時間体制でユーラシア物流を支えています。
空のシルクロード: 自治区内だけで28もの空港が存在。ウルムチからはパリや中近東への直行便が飛び交い、今や世界200以上の国・地域と結ばれています。
観光の変貌: 「中国のグランドキャニオン」と称される天山山脈の絶景や、活気あふれる国際バザール。ウイグル族と漢族が共存し、夜な夜な大規模な野外劇が上演されるなど、文化観光も高度に近代化されています。
3. 多民族社会の現状と「民族の団結」
創設70周年を迎えた現地では、習近平国家主席も式典に参加するなど、国家を挙げた祝賀ムードに包まれていました。
安定の追求: 街角には「民族の団結」を掲げる看板が目立ち、表面上はかつてのテロや混乱を乗り越えた「落ち着き」を見せていると川村先生は指摘します。
多様な文化の共存: ウイグル族を中心に50以上の民族、多様な宗教・言語が交差する風景は、北京や東京から見る「中国」とは全く異なる多面的な魅力に満ちていました。
4. 日本企業にとってのチャンスと課題
川村先生は、新疆の発展が日本企業にとっても無視できないチャンスになると提言されました。
新市場としての可能性: 中央アジアやパキスタン、南西アジア市場への「ゲートウェイ」として、新疆・ウルムチを軸にした貿易の可能性は拡大しています。
直行便への期待: 「日本人はシルクロードへの憧れが強い。名古屋からの直行便が実現すれば、経済・文化交流はさらに加速するはず」と、現地政府関係者へも働きかけを行われました。

