今後の子育て支援施策について意見交換

 県議会公明党・県民会議は、8月21日、定例の研修会を神戸市内で行いました。伊藤篤甲南女子大学人間科学部教授が「子育て支援施策の今後の方向性について」をテーマに講演。伊藤氏は、国が打ち出している「子育て安心プラン」をもとに様々な角度からこれからの子育て支援施策について言及しました。また、終了後意見交換しました。


 子育て安心プランでは、
▼待機児童の解消(待機児童解消に必要な受け皿約22万人分の予算を平成30年度~31年度末まで確保。平成32年度末までに全国の待機児童の解消を目指す)
▼5年間でМ字カーブを解消(М字カーブ解消のため、平成30年度から34年度末の5年間で女性就業率80%を目標とする。
そのため約32万人分の受け皿を整備)などを掲げています。

 伊藤氏ははじめに、47都道府県と県内各市町の待機児童の数のデータを提示しながら「全国で待機児童0の自治体が5つあり、宮城、神奈川大阪などは約1100人で兵庫は約1600人、東京は約8900人となっている。全国すべての自治体で待機児童問題が起こっているわけではない。データから見て待機児童問題は大都市圏の問題として考える必要がある」とし、県内については「県内の市町を見てみると特定の市町で問題となっている。太子町は47人だが、居住費が安く、子育て世代の家族が多く住み、子育てが終わると姫路市内に移動する傾向がみられる」など地域差や様々な事情などにも起因することを説明しました。

 また、政令市・中核市で待機児童が多いことを述べ、「待機児童問題が発生する要因の一つは人口動態、社会増減率にもあるのではないか」との考えを示し、それに関連して、子育て世代の人口移動(社会増)の要因について
①子育てのサービスが整っている
②男女ともに仕事の選択肢が多い
―の2点をあげ、「女性の雇用機会も都市部のほうが多い。育児にかかる経済負担が解消できる地域へ子育て家庭は移動している」と話しました。

 次に安心プランのねらいの一つである女性の就業率のМ字カーブの解消に関して解説。「単に女性の就労率をたかめることがМ字カーブの解消とは直結しない。企業側が出産の有無にかかわらず女性雇用を継続する姿勢と制度を整えることが必要。М字カーブが緩やかな山形・福祉・鳥取は正規雇用率が高く、М字カーブが深い神奈川・奈良は正規雇用率が低い。女性の就労率を高めることは、待機児童を増やすことにつながるという矛盾した構造をどうとらえるか。結論は出ないが考えていかなければならない。正規雇用率が低いと出生率も低い。これは外国も同じことがいえる」と持論を示しました。

 このほかにも、児童への給付などの少子化対策や格差是正などにもふれ、特に幼児教育・保育の無償化については「幼児教育・保育を義務教育化するのがいい。施設の種類や類型などで無償化・有償化の線引きをせずに、教育の時間を定めて、その部分を無償化する。それ以外の時間(保育時間)は応能負担とする。そうすれば長時間保育の助長を抑制できる」とひとつの考え方を提案しました。

 最後に「スウェーデンでは、0歳児は預かってもらえないので近隣の親同士で協力し合って面倒を見ている。仕事も保育時間に合わせてローテーションを組み、子どもの保育に積極的にかかわっている」と保育の在り方の方向性を示唆。さらに「幼児期に親と接する機会が多い子どもとそうでない子どもは、成長するにつれて学力などに差はみられないが、親と過ごす時間が多かった子どもには、物事を最後までやり遂げる力や仲間と協力し合う協調性などの非認知能力が育まれるといわれている」と幼児教育の重要性も強調しました。

 懇談では、喫緊の課題となっている保育士の人材確保や幼児教育・保育料無償化の地域間格差の解決策などに関して意見交換しました。

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