公会計制度は、住民に分かりやすい費用対効果の明示へ

 県議会公明党・県民会議は、定例の研修会を5月16日神戸市内で開催しました。
今回は、瓦田太賀四・県立大学院会計研究科教授が「地方自治体の公会計制度に関する動向」について講演しました。

 公会計制度の改革は、現金主義・単式簿記を特徴とする現在の地方自治体の会計制度に対し、発生主義・複式簿記などの企業会計手法を導入する取り組みをいいます。


 瓦田教授は、これまでの会計制度では自治体の総合的な財務状況が分かりにくく、特に行政資源等のストックの把握が重視され予算審議や住民への説明責任の推進を考えるうえで改革が求められてきたことを説明。
そして
①資産や債務の管理
②費用の管理
③財務情報の分かりやすい開示
④行政評価・予算編成・決算分析との関係付け
⑤議会における予算や決算審議での利用といった目的で改革が行われてきた経緯を示しました。

 次に、総務省主導で行われてきた改革の動向を振り返り、2006年に総務省から発表された報告書の中で企業会計手法を採用した『基準モデル』と、既存の決算統計情報が活用できる『総務省方式改訂モデル』の2種類の会計制度が提案され、本県を含め8割強の地方自治体が改訂モデルを用いている実情を述べました。但し、基準モデルは、固定資産台帳の整備や発生主義・複式簿記の採用によって個々の取引伝票まで遡った検証ができるが、改訂モデルは個々の複式記帳によらず既存の決算統計情報を活用するため、固定資産の算定評価額が精密とはいえず、継続作成の場合には段階的な固定資産台帳の整備に伴う負荷があることなどを指摘しました。

 また、ニュージーランドなど諸外国での公会計制度の急速な改革や公認会計士等の公共部門への職域進出なども改革の背景となっていることを強調しました。

 最後に瓦田教授は「企業会計は、見る側が会計知識があることを前提に作られており、公会計はすべての人にわかるように情報提供をしていくべきである。新会計制度は、前年度との比較ととともに他の自治体との比較もできるのが評価できる。今後、簡略化したものと詳細なものとの両方の情報提供が理想だ。その意味でインターネットを活用した情報提供は大きな可能性を持つ」と公会計のあり方を述べ「将来的には、住民への説明のための代替機関が求められるかもしれない」と付け加え、議会や住民チェックのしやすさと、よりよい財政運営の実現に向けてのさらなる努力を望みました。

 このあとの懇談では、各県議から質問が出され公会計制度の改革のための自治体職員の育成や、これからの情報開示の方向性などについて意見交換しました。

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兵庫県 谷井勲
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