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行政視察報告書
日野市議 峯岸弘行
● 行政視察報告 
〇西原村役場 
町長 日置和彦町長
住所  熊本県阿蘇郡西原村大字小森3259
日時  平成29年10月16日(月)~17日(火)
調査事項 熊本地震熊本地震「震度7」備えと課題
  人口 6755人(地震前は7049人)
  面積 77.22㎢ 区財政 総額 40億1610万円
  議員定数 10名
◎ 熊本地震の概況
4月14日(木)午後9時26分 前震 震度6弱 M6.5
4月16日(土)午前1時25分 本震 震度7 N7.3
■人的被害
死者8名(関連死3名含む)負傷者56名
大切畑地区の被害 34棟中30棟が全壊
集落全体では88%が全壊で半壊も含めると94%の住宅が被災した。住家の下敷きになった9名を消防団員と地域の方々が3時間以内に救出した。
橋梁の被害 村内の6つの橋はすべて被災。大切畑橋は110㎝ずれた。
■避難所の状況 
避難所数(公設)6か所 避難者数 1809人(その他地域ごとの避難箇所や車中泊など4000人をこえる村民が一時避難した。
★避難所となった小中学校では天井等の非構造部材の耐震化工事が終わっていたので避難所として使用できた。災害時にはトイレのバリアフリー化・洋式化が重要と痛感した。
★学校が再開しグランドでの体育の授業も始まったがグランドの一部には避難している方々の車や自衛隊車両に仮設風呂のテントがあった。
★自衛隊で炊き出しした白米を避難者(大人も子供も)でおにぎりを作った。
★仮設住宅
■小森仮設住宅 312戸(木造50戸 プレハブ262戸)287世帯762人
■みなし仮設 172世帯484人が入居 村内に66世帯214人、村外に106世帯270人(現在1246人が仮設住宅での生活を余儀なくされている)
★家屋の被害
全壊 512棟 大規模半壊 201棟 半壊 663棟 一部損壊 1096棟
住家の全壊は1376棟(全体の56%)
■解体件数
申請数 1777棟 解体済み 1695棟 95.4%(公費857棟 自主838棟)
平成30年3月までに解体終了予定。
★公共土木施設の被害状況 
道路 145件 約13.4億円
河川 14件 約0.9億円
橋梁 5件 約0.6億円(合計 164件 約14.9億円)
★農地等の被害状況
農地 田 240か所 約2.9億円
   畑 43か所 約0.4億円
   道路 110か所 約2.4億円
   水路等 59か所 約1.9億円(合計432か所 約7.6億円)
★農業用施設の被害
農業用倉庫等 432件(全体の半分以上が被災)被害総額50億円
4000人の農業ボランティアが支援活動に参加し早期の復旧につながった。
★ライフラインの状況
■上水道 4月16日全戸断水⇒6月17日飲用給水開始
■電気 4月16日 村内全域で停電⇒4月18日 全域復旧
※私が災害ボランティアで訪問時には電気は復旧していたが断水は続いていた。
★災害対策本部の運営
被災後に村職員の3分の1が役所にかけつけた。まずは道路の確認を
役所内は停電したため急きょ屋外に対策本部を設置。明け方には庁舎内に対策本部を移動(庁舎建物の損壊はほとんどなかった)
■顔が見える対策本部の運営
災害対策本部を役場1階に設置。会議室等の密室ではなくオープンスペースで運営することによって全体の動きを把握できた。
例1 苦情を言いに来た村民も村長の顔を見ると声のトーンが落ちた。
例2 不眠不休で働く村職員の日に日に青白くなっていく顔つきをみて「命令だから帰って休め」と声をかけた。
例3 情報の共有化を図るため震災後約2か月間。毎日、災害対策本部会議を開催。併せて職員ミーティングも業務終了後毎晩実施した。
★想定外のできごと
■「震度7」規模の地震が発生したこと
■前震があり、本震があったこと。
■人口7049人のうちの4000人を超える避難者が出たこと。
■本震後の最初の食事で全避難者におにぎりひとつも配布できなかったこと。最初は65歳以上の高齢者と子供だけに配布した。
■村内各所にあった湧水が利用できず飲料水の確保ができなかったこと。
★西原村の発災対応型防災訓練
■平成15年度から隔年で発災対応型防災訓練を実施していたことが役立った。余震が続く中での救出作業は危険を回避するために屋根開け建物の中に入る。地域では誰がどこで寝ているかも把握していた。消防団OBも活躍。9名の住民を救出した。
★今後の課題
■災害などに対する応急対応や復旧工事など交付税措置などはあるものの、災害規模及び自治体の財政規模によっては一時的な負担が大きくなりすぎる。
■災害は原型復旧が基本としながらも創造的復興やさらなる防災対策を考えると原型復旧ありきでは将来性のある復興が難しい。
■緊急的財政措置や創造的な復旧を行うための支援が必要。スピード感をもって質の高い復旧を進めるため人的・財政的支援など可能な限りの事業推進が必要。
★これからの復旧、復興
■必要なものは「ひと(人材)」と「かね(財源)」
復旧復興には早さも質も求められる。復旧には莫大な事務量があり、マンパワーの不足は否めない状態。400億円の被害総額が予想され、その事業費は莫大なもので、特別交付税の財源だけでは当面の事業費の歳出を補うことができず、早期の事業の停滞も考えられるので財政支援が必要。
■大切なことは「記憶の継承」と「感謝の心」
熊本地震の経験は目をつぶることもなく必ず後世に語り継菜無くてはならない。大人だけでなく子どもたちも震度7の地震の恐怖、助け合うことの大切さ、言葉のあたたかさ、手を差し伸べられることへの感謝。これから学校や普段の生活の中できちんと継承していくことが大切。
〇くまもと県民テレビ
報道制作局 大木真美 専任局次長
熊本市中央区大江2-1-10 電話096-362-3231
発災後に全国災害ボランティア議連所属の川上岐阜県議が重機ボランティア活動で取材を受けたことがきっかけで視察を受け入れていただいた。
★全国に向けた情報発信
調査テーマ
「熊本地震 ローカル局として何を伝えたのか?これから何を伝えていくのか?」
■放送の初動
本震(4月16日01時25分)の際に報道局にいたのはデスク2人、記者1人。5分後の01時30分にカットイン(番組中に緊急ニュースを挿入すること)
まずは県民の命を守る放送を。安全確保や避難の注意を呼び掛ける。
時間の経過とともに放送内容を変化。「命を守る」→「健康を守る」→「生活の質を向上させる」(特ダネより命を守ることが第一)
★ライフライン情報の発信
■CGの全画面で「給水情報」「炊き出し情報」「病院情報」「開店している店舗情報」(スーパーや薬局)
⇒「利用可能な銭湯情報」は画面を撮影した画像がSNSでシエアされ、大きな反響を生んだ。・一つの情報をL字と呼ばれる画面の左と下を使った情報発信・データ放送・HP・Facebook・Twitterなど様々な伝達手段で発信した。
★全国に向けた情報発信
■地震直後から全国に向けて情報を発信⇒全国の系列局29局から応援
 発災後1か月後あたりから全国での放送が減少
⇒まだまだ復興への道のりが遠い現状をどう伝えるかが課題に。
■NNNドキュメントで熊本地震ドキュメンタリー全国放送
課題 被災から1年半。家を新築する人と未だに解体も終わっていない人もいる。被災者同士の格差がはっきりしてきた。災害公営住宅用の土地が見つからず、建設の目途がたっていないことが問題に。
★熊本地震の特徴と課題①
■車中泊
避難所へは行かず車の中で避難生活を送る人が数多くいた。幼児や高齢者がいる家族等では避難所では気を遣う。プライバシーも保てることから狭い車で生活する。⇒駐車場の確保が必要。車中泊は人数の把握が難しく支援がと届きにくい。(同じ人間が何度も救援物資を取りに来るケースも)
■SNS活用
足りない物資やSOS、開いている店等の情報をSNSで発信する。⇒中にはデマもあり真偽を確認することが難しい。(例 ある店で商品を無料配布している⇒ウソ)
■大量の支援物資 公的なもの、私的なもの、全国から大量の支援物資が寄せられた。行政にはブッシュ型と呼ばれる依頼せずとも届けられる物資が。しかし、それを仕分けし配布する人手が足りず支援が届かないことに⇒物資を避難所や車中泊、軒先避難等に配布する人員の確保が難しい。
★熊本地震の特徴と課題②
■災害弱者
子ども、高齢者、障がい者等の災害弱者対策が課題に。福祉避難所が施設やスタッフの被災で当初十分機能せず、行き場を失った人たちを指定避難所ではない熊本学園大学が受け入れた。⇒車椅子などでも対応できるバリアフリーの避難所、障害に応じた配慮、トイレ・段差、小さなこどもがいる家族のための間仕切り、認知症患者を抱えた家族への対策などが課題。
■バリアフリー仮設住宅
仮設住宅でも「車椅子が入らない」という問題も。⇒KKTは災害弱者対策の不備の報道に力を入れた。その後、熊本県は全国でも珍しいバリアフリーの仮設住宅の建設。但し、一般の仮設住宅とは別の場所に建設されたために、地域の人と一緒にくらしたいという障がい者の方は入居を拒否したケーズもあった。(障がい者が家族と一緒に入居できる工夫が必要)
★熊本地震の特徴と課題③
■みなし仮設住宅
熊本地震で家をなくしたひとのための仮設住宅で空き家や民間アパートなどを利用した「みなし仮設住宅」の割合は応急仮設住宅の3倍と多い。プレハブ等の応急仮設住宅に比べ居住性が高く被災直後から入居可能というメリットがあるが、元の地域住民が数多くいる仮設団地に比べ1戸1戸点在しているため孤立しやすく支援が届きにくい。
⇒行政は見守り活動などで、みなし仮設住宅の住民を訪問し、住民同士の交流会なども企画しているが数が多いので被災者の実態が見えなくなっている。
■軒先避難
住宅が全壊しても避難所等に移らず敷地内にとどまっている被災者が数多くいる。「家畜がいるから」「農地が近くにあるから」「仮設に何度も外れたから等等理由は様々。特に高齢者は多少不便でも自宅を離れたくない気持ちが強い。⇒敷地にあるビニールハウスや 納屋で暮らしている人がおり、その実態が把握しにくい。長期に及ぶと健康上も問題あり。また、家の修理に補助金をもらい、仮設に入れる要件を失った人もいる。
★熊本地震の特徴と課題④
■地域の分断⇒コミュニティーの喪失・産業の喪失
熊本地震で崩落した阿蘇大橋は南阿蘇村の地域をつなぐ橋だった。学校、病院など生活に欠かせない施設に行くことができない住民が多い。幹線道路と鉄道も復旧にかなり時間がかかった。
⇒被災者は自宅の再建だけでなく地域再生の課題を背負い日常に戻れない暮らしを強いられている。
■マンションの被災
熊本地震はマンションも多く被災した。中には解体が必要なマンションもあり共同所有のマンションの解体の手続きの難しさを示した。
⇒熊本地震で初めて所有者8割が同意で解体できる「被災マンション法」が適用され、公費解体の申請は東日本大震災が5棟だったのに対し18棟。しかし、訴訟を避けたい行政が所有者全員の同意を条件としたため、まだ半分しか解体に着手できていない。
★熊本地震で気づいたこと
■コミュニティー 
行政の支援が届くまでの間は住民同士で生き延びるための「共助」を培うコミュニティーづくりが大事。避難所や仮設住宅では新しいコミュニティーができるし、みなし仮設でも見ず知らずの人が隣人に。その新たなコミュニティーが機能するかどうかが孤立を防ぎ「孤独死」を防ぐポイント。
■訓練
友人をなくした南阿蘇村の学生が生死の分かれ目は「ほんの小さなことだった」と語った。若い学生が「訓練の大切さを感じた」と。自治会や学校など日頃の実践的な防災訓練が大事。子どもたちは停電や断水を通じてそれが多くの人々の力で得られているもので決して当たり前のことではないことを学んだ。
■ボランティア
多彩なボランティアが各地で活動してくれた。お茶をいれるだけのおばあさんのボランティア、炊き出しボランティア、農業支援ボランティア。被災者の多くが今後は自分たちも助ける側にも回ろうと思った。

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