ゲームが舞台「ネットいじめ」について 5507
昨朝、地元の小学校へ。学校における課題は様々ありますが、年々陰湿の度を増しているのが「いじめ」問題。ネットの底に入り、ネットパトロールでも見えなくなっています。
先日、日経新聞に「ネットいじめ、対策急げ 高校生8%経験、ゲームが主舞台」と題し仏教大学の原清治教授が寄稿されていました。かなりの積み上げをされた調査結果です。
「新型コロナウイルス禍の中で「ネットいじめ」が増えた。高校生のネットいじめの大規模調査を続けている原清治・仏教大学教授は、個々の学校の実態を踏まえた啓発活動が重要だと指摘する。
子どもの「ネットいじめ」が深刻な状況にある。文部科学省の2020年度の問題行動・不登校調査によると、小中高校のいじめ全体の認知件数は51万7163件で前年度比15.6%減る一方、ネットいじめは1万8870件で同5.3%増え、過去最多となった。
今回の調査では自殺した児童生徒数も415人で過去最多となっている(前年度は317人)。多くの子どもが「生きづらさ」を感じており、ネットいじめもその構成要素の一つであろう。
「見えにくい」とされるネットいじめを大規模調査により可視化することで、生きづらさを緩和できないか。そんな問題意識から、私たちは15年と20年の2回にわたり京都府と滋賀県の公私立高校の生徒を対象に調査を行った。対象は15年が約6万6千人、20年が約6万3千人である。
この5年間で高校生のネットいじめの実態はどう変化したのだろうか。
まず、ネットいじめの発生率(高校入学後にネット上で嫌なことをされたことがある生徒の割合)は、15年の5.2%が20年には8.7%に上昇した。増加は予想していたものの、ここまで増えたのは衝撃的だった。
注目すべきはその内容である。複数回答で最も多かったのは「オンラインゲーム」で40.7%。以下「ツイッター」22.8%、「LINE」20.8%、「メール」19.9%、「ブログ」17.9%と続く。前回15年はツイッターが最多(51.8%)で次がLINE(39.7%)だった。
15年調査では「ゲーム」の選択肢は設けていない。ゲームを経路にしたいじめが想定されなかったためだが、現在では参加者が対話できるチャット機能のあるオンラインゲームがネットいじめの主舞台となっている。
「下手くそ」「バカ」といったチャットでの罵倒や誹謗(ひぼう)中傷を高校生はいじめ(嫌なこと)と捉えている。大人の感覚ではそれは一過性であり、やりすごせばいい、と思うだろう。
だが、高校生の生活空間の中でゲームは相当な割合を占める。アイテムを脅し取るような行為もあり、そこで子どもたちはリアル(現実)のいじめと同様のダメージを受ける。ゲームだからといって看過はできない。
ネットいじめの相手を「特定できた」割合(「ほぼ」と「だいたい」の合計)は59.5%で15年の86.1%から大きく低下。一方、「全く特定できなかった」は前回の7.9%が31.7%に急増した。加害者の匿名性が強まったのも現在のネットいじめの特徴である。
これも、発生場所がツイッターなどのSNS(交流サイト)からゲームに移ったことの影響だろう。対策が急がれる。
学力とネットいじめの関係にも変化が表れた。15年調査では偏差値段階ごとに学校を分類した場合、学力低位、学力中位(偏差値51~55)、学力高位(同66以上)の3つの学校群で発生率が高い傾向がみられ、グラフがWの波形を示した。
20年調査ではWが崩れ中位群の発生率が抑制される一方、偏差値61~65の最上位に次ぐ層で発生率が高くなっている。これはどういうことか。
前回の調査後、私たちは中位群の高校で重点的にいじめ防止の啓発活動に当たった。その効果も一因と考えられるが、それだけではないだろう。
ここからは私見になる。学力で最上位に次ぐ学校群に分類される高校で、生徒に「もう少し元気がほしい」と感じることがある。この層の高校では、学校で「居場所がない」と答える生徒が多いとの調査結果もある。
塾などが最上位層の高校への進学をはやす・あおる傾向が強まり、それが内面化されたことで、不安やゆとりのなさが他の学力層の生徒の心に生まれているのではないか。大学受験への焦りもあるかもしれない。この点はなお分析中である。
2回の調査結果に共通する知見は、ネットいじめとリアル空間のいじめの間の強い相関関係だ。リアルないじめの発生が多ければネットいじめも多い。2つのいじめは「地続き」であり、リアルいじめをしっかり分析していくとネットいじめの発生も可視化できる。
実際、金品をたかる、強くたたくといった重度なリアルいじめと、からかいなどの軽度なリアルいじめの発生しやすさを学校群ごとに出して合計し、平均値を求めると、ネットいじめの発生率と符合する。すなわち、ネットいじめは重度・軽度のリアルいじめを併せ持つ構造となっている。
学力中位の学校群でみられたように啓発活動には効果がある。ただし、啓発はどの学校も同じようにするのではなく、その学校が置かれた社会的文脈に即してカスタマイズする必要がある。
私は啓発に入った高校で生徒に話す際、客観的なデータを基にその学校の長所と短所を伝える。例えば「居場所があると感じている生徒が多い・少ない」「部活加入率が高い・低い」などだ。その上でいじめ防止を呼びかけるようにしている。
これは意外に効果がある。生徒が自分たちの長所と短所を知らないまま「いじめは許されない」といった「べき論」を説いても、「自分ごと」として響かないのだ。
いじめは風船のようなもので、抑止が緩むと再び浮上(増加)してしまう。学校や学級の実態を踏まえた啓発を、継続的に進める必要がある。」
見つけることの難しい「いじめ」。何事もそうですが、指摘の通り「予防」こそが最重要だと思います。










